『パチスロ鉄拳3rd』アプリ開発者インタビュー! ~リアルを超えたシミュレーターへの挑戦!~

 カエルのキャラクターで有名な山佐株式会社。パチスロをプレイする人ならば知らない人はいないだろう。その山佐株式会社がパチスロ鉄拳シリーズの3作目となる『パチスロ鉄拳3rd』を2014年の夏にリリース。その後、パチスロシミュレーターとしてアプリの販売を開始した。現実世界のパチスロの実機をアプリで再現するという、ゲーム開発とはまた少し違った世界で活躍する方々に、その情熱とこだわりを聞いてみた。

インタビュー集合写真

山佐株式会社
 宮本徳人 CS開発部 副部長
 眞山高広 CS開発部 開発課
 和田吉史 CS開発部 企画運営課
 (敬称略)

◆スマートフォンの急速進化でリアル化も急加速!

実機リール写真
▲全国のホールで絶賛稼働中の『パチスロ鉄拳3rd』。アプリはApp StoreやGoogle Playで好評配信中。

――まずは、パチスロのシミュレーターのアプリ化がはじまったきっかけを教えていただけますか。
宮本 パチスロをアプリ化するようになった経緯は、弊社はパチスロ筐体をホールさんに販売をする会社で、実際にホールさんで遊んでいただいているお客様と触れ合う機会がなくてPC向けにファンサイトを作ったんですね。そこで色々なコンテンツの提供をしていたのですが、docomoさんのi-modeの販売を開始した段階で、携帯で公式サイトをはじめることになり、そこからiアプリを作ったのがはじまりでした。
 それが現在スマートフォンになって進化したという感じですね。

――『パチスロ鉄拳3rd』は7月の上旬から全国のホールで実機が稼動していますが、お客さんの評判などは聞いてましたか?。

和田 『パチスロ鉄拳3rd』の場合は、実機稼動から約三週間後にアプリをリリースしたので、実機の評判を直接聞く機会はありませんでしたが、アプリに関してはリリース直後からApp StoreやGoogle Playにお客さんからのレビューが上がってきました。僕らはそれこそが生の声だと思って素直に受け止めることにしています。
 特に今回の『パチスロ鉄拳3rd』アプリの場合は、すでにキャラクターの個性や世界観が確立されているので、タイトル画面やメニュー画面でも、そのイメージを壊さないようにと注意しながら構成しました。開発時に特に攻めている部分でもあるので「映像がきれい」といったレビューでいただけるとやっぱり嬉しいですね。力を入れた甲斐がありました。

プレイ画面01
▲ゲームの鉄拳ファンからみてもキャラクターに違和感なし。知っているキャラクターたちが絡む新映像は純粋に楽しめる。

――パチスロのアプリだと、その画面の質感というのは実機を再現するということにもつながると思うんですが、やっぱり大変なことも多いですか?

眞山 実機の映像処理性能が格段に上がっているというのもあるのですが、近年ではスマートフォンも驚異的なスピードで性能が上がっています。弊社は液晶タイプのパチスロ機として初期に『タイムクロス』を販売したのですが、それから15年弱で今回の『パチスロ鉄拳3rd』の映像クオリティになりました。
 携帯アプリに関してもデータ容量だけでみると、昔は数10~数100キロバイトでしたが、現在のスマートフォンになって数ギガバイトまで使用できるようになってます。そういった実機もスマートフォンも目まぐるしい技術進化が続く中で、ユーザーさんのニーズにも答えられる再現度を担保してアプリ化していく事が大変だと思います。

――ハードの進歩にあわせて、次から次へと新しい技術を身につけないといけないんですね

眞山  モバイル機器への落とし込みなどが技術的にも進んできている事。ユーザーさんの目が肥えてきている事。クオリティの為にはクロスプラットフォームなど開発コストも考えどころですので、時代にあった開発手法が求められていると思います。
 現在はネイティブゲームアプリが盛んですので、パチスロアプリに限らず、ゲーム会社さんのアプリも参考にさせていただいております。

宮本 できることが増えてきてるっていうのはありますが、その全部をアプリで再現するというのに苦労してますね。特に最近のパチスロは、液晶の演出も増えてますしね。『パチスロ鉄拳3rd』の場合、細かい違いを含めると全部で数万種類の演出が入っています。

――そこまで多いと、もう全部は覚えられませんね……。液晶画面に表示されるの演出は元の映像をどこまで再現できるようになるかということになると思うのですが、映像以外の箇所、例えばリールの回り方、レバーやストップボタンを押したときの挙動もかなりリアルになりましたね。

眞山 そうですね。例えばリールについては、アプリではいきなり最高速度で回るのではなく、レバーから回りだすまでも計算して再現しています。可能な限り実機を打っている感覚が伝わるようにこだわって再現したので、ぜひプレイして感じてみて欲しいです。

巌竜
▲キングステージでみられる巌竜の演出。鉄拳の世界観のコミカルな部分もうまくハマっている。

◆筐体の下化粧パネルや液晶レイアウト、1パチスロファンの目線からのこだわり

眞山 個人的には実機の下化粧パネルが好きで、スロット台のコンセプトを印象づけるデザイン性が優れている部分だと思っています。それが見えるレイアウトにすると、ユーザーさんのレビューなどでは「液晶が小さい」、「リールが小さい」といった意見が寄せられて、プレイする人によって様々な好みがあるとわかったんです。
 それでユーザビリティを考えて、筐体レイアウトでのリール、液晶サイズ、ランプなどを強調した3種類のレイアウトを用意しました。さらに、もうひとつ「カスタム」というのを追加しまして、実機がみえる範囲をユーザーさんが自由に変更した上で保存できるようにしました。

――確かにパチスロだと液晶だけじゃなくて、筐体周りに付いているランプの色や光り方も演出のひとつになるのでみえたほうがいいですよね。

眞山 そうですね。筐体の真ん中の「TEKKEN」というロゴの挙動や、筐体枠のランプも頑張って実機を再現しているので、そういうところも見て欲しいです。

――ユーザーの声を積極的に取り入れた結果こうなったということですね。

和田 そうですね。私たちはみなさんが思っている以上に(GooglePlayやApp Storeの)レビューを確認していると思います。最初にもいいましたが、ユーザーさんのレビューは生の声だと感じているので、すべての要望にこたえたいとは思っています。ただ、技術的にもどうしても「こちらを立てればあちらが立たず」というような形になる事が多くて、少しずつしか改善できていないのが現状です。それでも、頂いたご意見を今後のバージョンアップや次作品で活かそうと目を通しています。時には、レビューはお手柔らかにお願いします!という気持ちにもなりますが。

宮本 あまりみるとおなか痛くなっちゃうからね(笑)。

 一同(笑)

―― 話は変わりますが、先ほどのレイアウトのカスタマイズ機能のほかにアプリだけの機能というのは何があるんですか?

眞山 『パチスロ鉄拳3rd』のアプリでいいますと、厳選した100種類の演出を集められる「演出コレクションモード」を搭載しました。これはアプリのプレイ時に出現したレアな演出が記録されるもので、あとでユーザーさんが好きなときに再生できるようにしてあります。あとで再生するときに液晶画面の映像だけが流れるのも味気なく思いまして、「あの演出熱かったよなぁ」と実際に打ってる感覚も再現したくて、再生プレイができるようにしました。
 ちなみに私もそうなのですが、さくさくとプレイするユーザーさんには、ベットで演出をキャンセルする場合が多々あると思います。そういった連続でプレイしたときの確定画面への繋ぎというか、切りかわり方を再現してあります。このあえて演出をみないで「お願いします感」も好きなんです(笑)。
 また、鉄拳BONUS終了や鉄拳RUSH終了時に出現する結果表示画面も再生できるようになってます。かなりレアなパターンもあるのでまとめて見られる機能は喜んでいただけるかと思ってます。細かいところですが、エンドファンファーレとともにカットインっぽく登場する動きから記録してますので、鉄拳のキャラクターが好きな人にも喜んでいただけると思います。

宮本 ふーん、知らなかったな(笑)。

――いま1パチスロファンとしての眞山さんの苦労がひとつ報われましたね(笑)。

宮本氏

◆こってりとしたボリュームのある無料アップデートもこだわりです

――先ほどの演出コレクションモードも8月のアップデートで実装されたようですが、この他のアップデートで入った新機能や、これから実装予定の機能を教えてください。

和田 Ver1.1.0のアップデートでは、ボーナスゲーム抽選のカギとなるレア役を強制的に揃えられる機能も入れました。演出コレクションモードを入れたからには、演出や映像を集めるためのヒントや手助けになる仕掛けを入れることも重要かと思って入れたものです。あと、Android版ではもうアップデートが始まっていますが、Ver1.2.0では、現在一日一回“鉄拳チャンス(ボーナスゲーム抽選確率の高いステージ)”からはじめられる「デイリー鉄拳チャンス」の回数制限をなくし、鉄拳チャンスの設定を選択できる「チャンスモード」を追加しました。いきなりボーナスゲームからはじめたり、大当りの神鉄拳チャンスからはじめたり自由度が大幅に増します。iOS版は9月末~10月頭には配信が始まる予定です。

演出コレクションモード
▲なかなかみられない演出を記録しておける「演出コレクションモード」。ファンには嬉しい機能だ。

――かなりボリュームがあるアップデートになりそうですね。

和田 はい。最近うち(山佐株式会社)ではユーザーさんに長くじっくりアプリを楽しんでもらうために、段階的に大規模なバージョンアップを行っています。実機の実践に役立つシミュレーション機能と、コレクション要素をメインとしたボリューム満点の内容になっています。しかも今のところ、新機能追加も含めたバージョンアップが無料というのも、ユーザーさんに好評をいただいています。

――登場キャラクターが豊富な鉄拳シリーズですが、お気に入りのキャラクターはいますか?

和田 私は飛鳥がお気に入りですね。

眞山 アリサじゃないんだ?

和田 アリサはちょっと違うんだよね。ゲームをプレイしたときにハメ技で負けたトラウマがあってさ(笑)。

眞山 私は『鉄拳3』と『鉄拳タッグトーナメント』の時にメインで選んでいたキャラクターが、実はシャオユウと仁とキングで……。偶然ですが『パチスロ鉄拳3rd』のメインに登場するキャラクターと同じだったので、制作にも力を入れました。特にボーナスゲーム中のムービーと音楽が気に入ってしまったので、かっこよくみせたいという気持ちが強く、さらに力を入れて製作しました。

ボーナスゲーム
▲鉄拳BONUSのキングステージ。重厚なBGMをバックに、ジェイシーの秘密が垣間見える。映画化を希望したいほどのクオリティだ。

神鉄拳ボーナス
▲今回のアップデートで「神鉄拳チャンス」からもプレイ可能。実際にプレイするチャンスは少ないだけに嬉しい追加機能だ。

――アプリをプレイした方たちがホールに実機を打ちに行くというお話は聞きますか?

宮本 それに関しては、アプリの効果測定なども含めてアンケートを実施したことがあります。実機をプレイされている方々と比べると、アプリをやったことのある方はまだまだ少ないようですが、その少ない方たちのなかでもアプリで「あ、これ出てるんだ」と認知していただいて、ホールさんへ行くようになったという方は増えてるみたいです。

――やっぱり増えてるんですね。

宮本 はい。今はスマートフォンの数が急増しているのもあって、アプリを遊んでくれる方もどんどん増えているようです。

――なるほど、それはこれからの作り甲斐にもつながりますね。では、最後になりますが、TAPPLIでこのインタビューを読んでいる方たちにメッセージがあればお願いします。

和田 ゲームの鉄拳で昔遊んでいて、それをホールやアプリでみたときに「あれ鉄拳じゃん?パチスロで出てるんだ」と遊んでもらえると嬉しいですね。パチスロの前作をプレイしていただいた方も同様です。そういう方たちのためにも、実機パチスロの再現にこだわるだけじゃなくて、シミュレータープラスアルファの楽しい要素を盛り込んでいきたいと思います。

眞山 今回のアプリ制作では最終的に満足いくものができたと思っています。私自身のパチスロにかける情熱があり、楽しさをもっと広く知ってもらいたい一心です。パチスロファンとアプリユーザーの橋渡しになれれば良いと思っています。

宮本 基本的にはアプリも実機も楽しんで欲しいので、ホールさんの営業時間にはホールさんで遊んでいただいて、家に帰ったらアプリをプレイしてください。それを一番お願いしたいですね。

 一同(笑)

宮本和田眞山 今後ともパチスロ鉄拳3rd並びに山佐株式会社をどうぞよろしくお願いします。

――ありがとうございました。

神鉄拳プレイ中
▲アプリ『パチスロ鉄拳3rd』をプレイして、エンジェルとデビルカズヤの因縁の結末も見届けて欲しい。

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