ゲーム制作専門学校がゲームをリリース!? 東京デザイナー学院のユニークな授業に潜入インタビュー!

 ゲームが好きならば「ゲームを作りたい」 「ゲームクリエイターになりたい」と夢をみたことが一度はあるのではないだろうか? しかし「ゲームを作りたい」ということは「ゲームを仕事にしたい」ということで、仕事になると、ただ作るだけではいけないことに気づくはずだ。今回は、その現実をカリキュラムに取り入れて、作ったゲームを実際にリリース(販売)する授業「TDG Game Project」というユニークな取り組みを行っている学校があると聞き、さっそく東京デザイナー学院にお邪魔して、授業に参加している先生方や学生たちにお話を伺ってみた。

Game Project 公式サイトhttp://www.xxxgameproject.com/

場所: 東京デザイナー学院 公式サイト ⇒ http://www.tdg.ac.jp/

TDG Game Project集合

◆「TDG Game Project」にとってゲームはビジネスである

三鴨先生

東京デザイナー学院 ゲームクリエイター科 講師 三鴨ユキ(以下、三鴨先生)

――まず三鴨先生の簡単な経歴を教えてください。

三鴨先生 大学卒業してゲーム業界を目指しまして、小さな開発会社で12年ほどゲームプランナー・ディレクター・プロデューサーとして働きました。そこを退職したときに、タイミング良く専門学校の講師の話をいただきまして、“ゲーム制作”をテーマにした授業をお願いできないかというところでこの授業をはじめました。

――それが「TDG Game Project」ですね

三鴨先生 はい。そのときは講師一本でやらせていただいたんですが、去年ご縁のあった開発会社に入社しまして、平日はプロデューサーとして活動して、土曜日に東京デザイナー学院の講師をしています。

――平日はゲーム会社のプロデューサーで土曜日は講師とすごいパワーですね

三鴨先生なんで平日ゲーム作ってるのに休みの日もゲーム作ってるんですかね。自分でもよくやるなと思います(笑)。

――講師として「TDG Game Project」を立ち上げたとおっしゃいましたが「TDG Game Project」のカリキュラムについて教えていただけますか

三鴨先生 ゲーム開発の現場から講師になって最初に授業を受け持ったときに、実際の現場と学校に意識のギャップがあることに気づきました。その正体はなんだろうと考えたところ「私たちにとってゲームはビジネスである」という部分が抜けているなと感じたんです。
 専門学校という職業訓練校のような立ち位置のはずなのに、実際にゲーム会社が必要としている人材や感覚を育成する部分が弱いと思いました。それを教えるためにはどうすればいいかを考えたときに、ゲームを作るだけではなく完成させて販売するところまでをカリキュラムに取り入れた授業をやりたいと提案しました。

――確かに、ゲームを作りたいとは思っていても売りたいと思って入学してくる学生はいなそうですね……

三鴨先生 新入生は漠然とゲームを作りたいと思って入ってくる子が多いですが、ゲーム会社に入りたいとなると、それはもうビジネスなんです。そこで売れるゲームを学生たちに教えようと、授業中に「ユーザーの視点を意識して」といった言葉で伝えるんですが、上手くつたわらないので、経験させてしまったほうが早いなと。
 で、それならばいっそマネタイズまでもまかせてみようと。あとは、実社会に出るとチームで動くことも多いので、チーム内の仕事仲間との接し方も大切になります。そういったことも経験させます。そこまでいけば、かなりビジネスとしての経験に近くなるので、「TDG Game Project」は社会に入ってから必要となるビジネス感覚を身につけさせる近道のひとつだと感じています。

――最初、ゲームを作るために入った学生たちにマネタイズといってもとまどいませんか

三鴨先生 最初は本当に何もわからない状態ですね。毎回一番最初の授業で、ゲームを作るだけじゃなくて、マネタイズも考えてリリースまでしてもらいますという話をするんですが、学生たちは「ぽか~ん」といった感じです(笑)。
 それでも、実際に作業を進めていくうちに、感覚的にわかってきて、自分たちの制作したゲームを東京ゲームショウに出展して、ユーザーさんの自分たちのゲームに対する反応をリアルに体験すると、ゲームの内容だけじゃなく、ゲームを知ってもらう、買ってもらうためにはどうすればいいかといったゲームの販売に関することも意識するようになります。それらの経験からゲームのビジネスってこういうことなんだ。ということを徐々に理解してもらえるようになっています。

三鴨先生2

◆東京ゲームショウ2014に制作中のゲームを出展。来場者の反応に?

――今年も多くの学生が「TDG Game Project」に参加していると思いますが、今年の学生で印象に残っていることはありますか

三鴨先生 実は今年はこれまでと違ってゲーム製作が難航しているんです。 過去に制作したゲームは、東京ゲームショウの段階ではプレイできるところまで持っていけて比較的スムーズだったんですが、今年は作りかけのような状態になってしまったんです。それでミーティングを開いて東京ゲームショウ2014に出展するのかどうかを検討して、作りかけの状態であえて出展することに決めたんですね。 それでたくさんの一般の方々にゲームを見てもらえたのですが、会場でゲームの案内をしていた学生から「私、悔しいです」といわれたんですね。理由を聞いたら「せっかくユーザーとなる方たちにブースに足を運んでもらったのに、こんな作りかけの状態のものしか見せられなくて申し訳ない」と話してくれたんです。私はそれを聞いてこれはすごいことだと思いました。こんな状態で出してしまって申し訳ないとか、自分の力不足で申し訳ないとか、そういう感覚を持ったというのはすごいことだと思いました。 作りかけの状態で出すというのは、もちろん予定外のことなんですが、その失敗経験で悔しいという気持ちが生まれれば、その後にもっと頑張ろうとかもっといいものを……と、スキルアップやチームの成長といったことにつながります。 この失敗が次につながる瞬間を見ることができたのが印象的でした。 先ほども話にでましたが、授業で「ユーザーの視点で」「ユーザーの身になって」と伝えても、いわれただけじゃなかなか身につかないんです。やっぱり直接ユーザーと触れることで、徐々に身についていって、その視点から自分たちが作っているものを見た時に、フラットな立ち位置でクオリティや商品のレベルを感じられるようになっていけるんだと思います。

――「TDG Game Project」の今後や可能性についてお聞かせいただけますか

三鴨先生 プロジェクトとしてはまだまだ未完成だと感じています。過去の作品の『まぜぐるみ』がこのプロジェクトにおいて唯一販売までたどり着いた成功例になっていますが、収益という点では全然足りていなくて、ビジネスで見ると失敗になると思っています。今後は、マネタイズに関するコンテンツの充実も含めてクオリティを上げていきたいと思っています。

――それはヒット作を目指してということですか?

三鴨先生ヒット作を意識しているわけではありませんが、もっと自分よがりではなく、一般の方に遊んでいただけるようなゲームを意識してゲーム制作をすることで、収益化につながるものも出来ると思っています。
 特に現在はスマートフォンのゲームなどはどなたでもリリースできる環境があるので、可能性という意味では全然ありだと思います。むしろ、逆にゲーム会社に入ってしまうと、商業を意識するあまりに冒険ができなくなって、アイデアや発想において自由ではなくなってしまう部分もあるじゃないですか。それがこの授業ならば、自由に作らせるようにしているので、学生ならではの発想からおもしろいものが出来るかもしれない、収益まではつながらなくても、こういうゲームもありなんじゃない? といった問いかけや提案が出来るものが生まれるんじゃないかと期待しています。 実際は、売れたらラッキーですが(笑)。現実的には、このプロジェクトの経験者がゲーム会社に入って、ゲーム業界を担っていけるような人物に育っていくための手助けが今まで以上に出来るようになればと考えています。

――プロジェクト出身者が活躍していくことで、今後この活動が広がっていくかもしれませんね

三鴨先生そうですね。今後の展開としては、このプロジェクトに賛同・共感いただけるクリエイターの方たちがいたら、ぜひ一緒に活動していただいて、これからのゲーム業界に貢献したいですね。まだまだゲーム業界は可能性がありますし、違った切り口なども生まれてくると思っています。もっと業界が盛り上がるために頑張りたいですね。

会議
▲基本的には学生たちの相談の場に三鴨先生が口を出すことはほとんどない。チームを率いるリーダーへのアドバイスで自分たちの力で解決させるようにするという。

◆ツラいこと9割! それでもやっぱりゲームを作ってください

――このプロジェクトで講師をしていて学生から逆に教えてもらえることというのはありますか

三鴨先生 学生たちはすごい純真だなと感じています。われわれがなくしてしまったものを持ってるといいますか(笑)、人擦れしていないといいますか。そのためデリケートな一面もあるんですが感性がピュアなんです。人としての喜び、悲しみや怒りといった感情をまだストレートに持っていて、それがたまに出てきてチーム内でぶつかるんですよね。それがなんかキラキラしていてまぶしいときがありますね(笑)。 私は、そのピュアな感情というのがクリエイターとしてもすごい大切だと思っているので、ものすごい刺激を受けます。普段の仕事ではお金の話とか大人の話とかそういったなかで暮らしてますからね(笑)。学生たちと触れ合うことで、気持ちをリセットしたりパワーをもらってます。だから、激務とはいわれていますが、全然つらくないです(笑)。

――むしろ癒されてますか?

三鴨先生はい(笑)。

――最後にその学生さんたちにメッセージをお願いします

三鴨先生 私の授業は非常にハードだと思います。学生たちはゲーム開発におけるすべての工程のここで経験するんですが、学生にしては初めてのことだらけで本当にハードなんです。だからといって、逃げようとしても逃がしませんが……(笑)。
 それを「やりすぎかな?」と感じる自分もいて、常々葛藤があるんです。ある日ふと、学生の一人に「この授業を受けてどう?」と聞いたんです、その学生は「はじまるまではこんな目にあうと思っていなかった。今のところ9割ツラいことだけです」といわれまして……、まあ、そうだよね(笑)と。
 ゲーム開発を何年もやってる、私でもツラい瞬間があります。が、リリースを迎えたときの開放感や達成感が大好きで、他では得がたい喜びなんです。だからあえて、「ツラいことだらけですが、これからもやっぱりゲームを作ってください」といっておきます(笑)。

三鴨先生
▲学生たちは声を揃えて「最初は恐そうに見えたけど、三鴨さんは本当にやさしいんです」と評判でした。学生たちに三鴨さんと呼ばれているところからも互いの距離が伺えました。

◆アイデアにあふれた操作が楽しい!『リュースのぼうけん』開発者チームインタビュー

『リュースの冒険』システム紹介動画 (BGM・SE制作:東京ビジュアルアーツ)

▲プレイステーションモバイルでリリース予定の『リュースのぼうけん』。小人の軍団を駆使して先へ進む横スクロール方のパズルアクションゲームだ。

リュースメンバー

『リュースのぼうけん』開発参加メンバー

(左から)
背景・UIデザイン担当 芝田くん
エフェクト担当 于くん
グラフィック担当 鶴田くん
プログラマー・進捗管理 金澤くん
プランナー・リーダー 中澤くん
キャラクター・UI担当 後藤さん

『リュースのぼうけん』オフィシャルサイト
http://ruecenobouken2014.wix.com/littlehuman

――「TDG GameProject」に参加したきっかけを教えてください

中澤くん 参加のきっかけは学校でゲームジャムが開催されまして、そのときに三鴨先生から土曜日に「TDG GameProject」という授業があると聞いて、リリースまで体験できるならば参加してみようかなと。

――みなさんゲームジャムに参加された方ですか?

全員: そうですね。

――最初の授業でリリースまでの全部の作業をやれといわれたと思いますが、そのときの心境を教えてもらえますか

金澤くん ゲームジャムは短い日数で行うものですが、このプロジェクトは期間が長いので、大変なのは当たり前として、モチベーションが持つかとかそういう意味での不安はありましたが、自分の作ったものが販売される、販売できる、ということへの興味が大きくておもしろそうだと感じました。

――実際に参加してどうですか? 大変なことはありますか?

金澤くん 実際に参加してですか? うーん、やっぱ大変なことだらけですね(笑)。僕はプログラマーなのでプログラムを組むんですが、組み終わったところでプランナーさんに見せると「ちょっと違うな……」となります、そこで仕様が変更されたりすると、作り直さないといけないので、現場ってこういうことかと、なかなかできないリアルな体験をたくさんしてます。

――プランナーさんとの衝突は避けられないですね(笑)。いつもぶつかってるんですか?

中澤くんまあ、ボチボチ(笑)

于くん 僕は日本語がまだヘタなんで、そういうときはもっと大変です(笑)。でも、楽しんでやってます。このプロジェクトはいいチャンレンジになっていると思います。

――グラフィックを担当している方たちはどうですか?

芝田くん 私たちもプランナーが相手になりますが、グラフィックを担当しているデザイナーと絵を見る目線が違うんです。気になるところが違うというんですかね。その差を埋めるのに苦労してますね。でも、この大変なところが、楽しいところでもあります。

鶴田くん 僕は予定の調整で失敗をしたのと、当時未経験だったモーションから線画に落としこむというのに苦労しました。動きとかパーツの絵が……といった話の前にキャラクターの向きという基本的なところからの挑戦でした。正直、今も調整できているのかどうか不安でいっぱいです。

後藤さん 私はUIとかキャラクターの塗りを担当していますが、未経験なことばかりなので……。UIのデザインを学ぼうと色々なゲームをプレイしていますが、なかなかうまくいきません。

――リーダーの中澤さんはどうですか?

中澤くん みんなそれぞれの考え方がある上に、担当業務によって見かたが違うので、その調整が一番大変だと感じます。でも、そういったみんなの意見を聞いているうちに、ゲームを作るということは、自分が見て想像していた以上に考えなければならないことがあるということもわかりました。 そういったことを含めて、仕様書を完成まで持っていったのは今回が初めてなので、企画書から仕様書に落としていくときに様々な見かたを考える必要があることが学べました。この経験が出来たことが一番の勉強になったと思っています。
 メンバーには色々な迷惑をかけましたが……。

会議
▲ストイックな姿勢が印象的だったリーダーの中澤くん。

――リーダーですからね(笑)。みなさんは今『リュースのぼうけん』を制作していて、東京ゲームショウ2014にも出展されましたが、会場には全員行かれましたか?

中澤くんはい、いきました。

――そこで一般のユーザーの方に実際に触ってもらってどんな意見がありましたか?

中澤くん 実際にプレイしに来てくれるユーザーさんがいただけで嬉しく思いました。当日はアンケートもお願いしていたんですが、実際にプレイした上にアンケートにまで答えてくれたのが本当にありがたいと思いました。

鶴田くん 学校で作っているだけだと、第三者に触ってもらえる機会というのがないので、プレイしてもらえただけじゃなく、評価や細かいところにまで意見がもらえるのが良かったです。いただいた意見は「販売するのにこれでいいのか?」といった厳しい意見が多かったですが、内部からは出てこない率直な意見が聞けたのが本当に嬉かったですね。
 いただいた意見じゃ持ち帰って、色々考えなきゃいけないことに出来たのがチームにとって、ものすごいプラスになりましたね。

金澤くん 触ってもらえる場面を見られる機会ということの貴重さもわかりました。 プレイした感想だけじゃなくて、ステージ道中やクリアした瞬間とかプレイ中の反応をリアルタイムで見られたのは非常に良かったと思います。

――確かに。その反応を拾って「もう少し難しく……」ってことも考えられますね

金澤くん そうですね。

――その制作中の『リュースのぼうけん』のアピールポイントを教えていただけますか

于くん タッチも駆使して操作しているだけで楽しめるゲームなので、ぜひ遊んでみて欲しいです。

金澤くん タッチで操作できる小人の動きがややこしくて苦労していますが、リリース時には快適になっているはずなので、動かしているだけでも楽しんでもらえると思っています。

芝田くん UIも大幅に改善しました。といっても、これは東京ゲームショウ2014に見ていただいた方に特にいいたいことですが、遊びやすさを考えながらみんなで改善したので、ぜひプレイしてみて欲しいです。

後藤さん キャラクターも東京ゲームショウ2014のときよりも増えています。「スゥ」というキャラクターは私も気に入っているので、ぜひみてみてください。

――かなり改善に力を入れているんですね。リーダーからもお願いします

中澤くん みんなそれぞれ見て欲しい部分があると思いますが、僕は全部がオススメだと思っています。チームの人数の増減はありましたが、それぞれが未経験な分野でも勉強しながら続けて、長い期間同じチームで頑張って作っています。その仲間たちでいいと思えるものを考えて、学生が作ったとは思えないクオリティにまで仕上げますので、ぜひぜひ期待してください。

リュースのぼうけん
▲授業中(制作作業中)の集中力は大人以上。端からみているだけでも学生たちのゲームに対する真剣な気持ちが伝わってきた。

――心強い言葉ありがとうございました。期待しています! 12月にゲームが完成ですよね? その残り少ない期間にかける意気込みを教えてもらえますか

中澤くん 完成させてリリースまでこぎつけたいというのはもちろんですが、リリースしてたくさんのユーザーの方に広がっていってもらえたらいいなと思っています。

鶴田くん まず触ってもらうことが大切なので……。なんとかそういう機会を作って、それで返ってきた反応をいかしてもっともっといいものにしたいです。

芝田くん 今回のプロジェクトではなく、次のプロジェクトになってしまいますが、僕が3D専攻しているんですので役立てる日がくればいいと思っています。『リュースのぼうけん』では3Dの出番がないので。

――ラストスパート頑張ってください

◆親しみと美麗さが共存するグラフィックを楽しみながらプレイしたい『Mag Mell』開発者チームインタビュー

MagMell
▲『Mag Mell』はやわらかなグラフィックが親しみやすい育成型RPG。1年生を中心としたチームで鋭意制作中!

会議

『Mag Mell』開発参加メンバー

(左から)
プランナー・リーダー 高橋くん
モンスター・UIデザイン 榎本さん
広報 小川さん
モンスター・マップデザイン 田村さん
プログラマー 山内くん
シナリオ・その他 赤池さん(写真無し)

『Mag Mell』オフィシャルサイト
http://toyskitchen.wix.com/magmellofficial

――最初にTDG GameProjectに参加したきっかけを教えてください

田村さん 学校で開催されたゲームジャムを見学したときに2日間でゲームを作ったと聞いて感動して、私もゲームを作る企画があるなら参加したいと思って入りました。

高橋くん 私も学科でそういうプロジェクトがあると説明を聞いてピンとしたので参加しました。

山内くん 私は途中参加組で、プロジェクトの存在を知って、見に来たら人手が足りないから入ってといわれて参加しました。

――このプロジェクトに参加して印象に残っていることがあったら教えてもらえますか

赤池さん 思った以上にプランナーが考えていることは、プログラマーにもグラフィッカーにも通じないことを痛感しました。チーム内の連絡はぐだぐだになっていって、三鴨先生から聞いていた話だけのことが、現実でリアルに体験したことです。

田村さん 私もゲームを作るのはつくづく難しいなと感じています。

小川さん 苦しかったことはみんなと同じですが、東京ゲームショウ2014でスタッフとして活動できたことに、素直に感動しました。

榎本さん 普段かかないものを素材として描かされることが多かったので、いい経験になったと思います。

山内くん 良くも悪くもプログラマーとして自分の力不足を感じたことです。

高橋くん 東京ゲームショウに出展したときに、ブースで立っているだけなんですけど、すごい緊張していたのが印象に残っています。

MagmellMTG
▲ほとんどが1年生という『Mag Mell』チーム。女の子が多かったのにも驚いた。

――東京ゲームショウに出展したときにユーザーさんの反応はどんな感じのものが多かったですか

高橋くん グラフィック担当の方に頑張っていただいたので、絵がきれいだと褒めてくれる方が多かったです。

――『Mag Mell』を作ろうと決まったきっかけについてお伺いしてもいいですか

小川さん 一番最初にこのプロジェクト参加者全員で集まったときにどんなゲームを作ろういう話をしたんですが、軍団系のゲームと育成RPGの2本に絞られて、それぞれが作りたいものに分かれたんです。それで育成RPGに集まったメンバーが今のメンバーです。

――軍団系のゲームというのは『リュースのぼうけん』ですか?

小川さん そうです。チームが決まったあとはみんなで話しあって絵柄や内容を決めていきました。

――『Mag Mell』制作にあたって、こだわっている部分をそれぞれ教えてもらえますか?

榎本さん デザインは頑張って描いているんでみて欲しいですね。

小川さん 私は広報としてサイトを更新しています。webサイトでの更新情報を見てもらえるようにしたいです。

田村さん 今はマップを担当していて、はじめてドットで描いています。これから頑張るので見て欲しいです。

山内くん まだ作り途中で全然追いついていないんですが、完成したらすごいおもしろいゲームになるので、期待してください。

MagmellMTG
▲開発中の『Mag Mell』の画像をフェイスブックページより拝借。取材時からは想像できないほどの完成度。これは期待!

――完成予定日まで間もないですが、このチームでやっていきたいことはありますか?

高橋くん とりあえず完成とリリースを目指して全力でいきたいです(笑)。

山内くん 自分の技術を頑張って上げていきたいと思います。

榎本さん まだ研究中ですが、かっこいいUIを作りたいです。

小川さん 最近大きな方向転換があったので、それにあわせてwebサイトを作り直そうと思っています。

田村さん このチームは1年生が多くて、最初は夢を見ていたんですが、それが叩き壊されて……(笑)。それでも出来る限り頑張って完成させたいと思います。

――ちなみに『Mag Mell』も12月完成ですよね?

高橋くん はい。ですが……スケジュールは先生方をはじめ色々相談が……。

赤池さん まだまだ未完成ですが、操作がシンプルでグラフィックを楽しみながらプレイできるゲームを目指しているので、発売を楽しみにしていてください。

――ありがとうございました。12月の完成目指して頑張ってください

高橋くん
▲『Mag Mell』グループリーダーの高橋くん。取材中もチームメンバーと仕様をつめるためのミーティングを続けていた。お忙しいなかオジャマしてごめんなさい!

◆ゲーム業界でプランナーとして活躍中の「TDG Game Project」出身者から後輩へ

 東京デザイナー学院を2013年4月に卒業して、現在は株式会社Aimingでプランナーとして活躍している齊藤さん。「TDG Game Project」の活動でパズルゲーム『妖精たちのまぜぐるみ工場(以下、まぜぐるみ)』の制作を担当し、プレイステーションモバイルでダウンロード販売されるまでやり遂げた。
 今回の取材を知り、わざわざ学校まで駆けつけていただいたので、ゲーム会社で働いている立場から「TDG Game Project」に関するお話を伺ってみた。

齊藤さん

株式会社 Aiming プランナー 齊藤公彦さん

『妖精たちのまぜぐるみ工場』公式ブログ
http://mazegurumi.blog.fc2.com/

――学生時代はどのような学生でしたか?

齊藤さん コンペなどには積極的に参加していたと思うんですけど、後半はゲーム製作のほうに夢中になりすぎて疲れてしまって、お世辞にも優等生だったとはいえませんでした。どうやったらゲームがおもしろくなるのかをずっと考えながら生活していたら真夜中になってしまって、次の日寝坊して……。ダメですよね(笑)。

――授業よりはゲーム作りが楽しかったんですね

齊藤さん はい。作るのが大好きでした。プレイも好きでしたが。

――そのころ夢中になったゲームというとどんなタイトルですか

齊藤さん 当時はオンラインゲームにハマっていて、ファイナルファンタジーの11と14をプレイしてました。MMORPGばかりですね。オンラインで人とコミュニケーションをとるのがおもしろかったんです。
 ゲーム制作の授業で『まぜぐるみ』を作ろうと決まってからは、パズルゲームはどんなのがあるのかな? と『パズル&ドラゴンズ』などのスマートフォンのゲームもプレイしました。

――『まぜぐるみ』制作時の担当業務を教えてもらえますか

齊藤さん 出来ていたかどうかは別としてディレクターに近かったと思います。主にスケジュールの管理を行っていました。仕様も僕のほうで考えたんですが、もうひとりのプランナーがメインで仕様を固めていましたね。プログラマーや、UI、キャラクターも別の方が担当していたので、実は僕は作業にはあまりかかわってなかったんですよ(笑)

――いやいや、進行管理はものすごく大切な役割ですよ

齊藤さん 大切ですね。でも、その頃は慣れていなかったのもあってグダグダでした(笑)。

――初めてでは仕方ないですよ(笑)。その活動は現在も役立っていますか?

齊藤さん そうですね。Aimingにはプランナーで入ったんですが、当時の経験の影響からか、職場ではディレクターのような役割も担当してます。「TDG GameProject」で経験があったから、なんとかまわせている状態ですね。

――仕様などもご自分で書かれるんですよね?

齊藤さん はい。書きますが、プログラマーさんや各部署に作業の進捗を確認して締め日やスケジュールを決めて、その後の手配をしています。仕様だけを書いてるわけではなく、クエストばかりを作ってるわけでもなく、人手が足りないところへいって色んな経験をつませていただいています。プログラムや絵は無理ですが(笑)。
 それで各部署で「これそろそろあがりそうなんで、必要なデータ揃えておきますね」とやってるうちに、スケジュールを間接的に管理する役割に落ち着いてました。

――部署間の調整役ですね

齊藤さん よく言われますが、日本人はシャイな部分があるといわれますが、僕はそういうのがあまりないみたいです。突然、ベテランのプログラマーさんに「これいつできますか?」とすっと催促できちゃうんですよね(笑)。いいづらいとも思いますが、その気持ちを越えて伝えてしまいます。
 それは『まぜぐるみ』を作っていた頃からそうだったかもしれません。誰にでも遠慮せずに「早くやれ」とか、絵を描いてもらっている方にも「コーヒー買ってくるから、死ぬ気で描いて」とか(笑)。

齊藤さん
▲ふんわりとした雰囲気を持ちながら、ベテランプログラマーにもビシビシ迫るという齊藤さん。『まぜぐるみ』の紹介記事をみながら当時の思い出を語ってくれた。

――齊藤さんの外見からは全然想像つきませんよ(笑)。普段の生活からそういう性格なんですか?

齊藤さん いや、そんなことはないんです(笑)。その時はすでに2ヶ月くらい遅れがあったので、取り戻してもらうためにコーヒーも奢って必死でした(笑)。

――2ヶ月遅れから実際に発売までこぎつけたのはすごいです

齊藤さん 発売されたのは卒業後ですが(笑)。東京ゲームショウ2012への出展時が、予定の8割くらいで、実際に販売を開始したときはもう卒業後の9月です。

――まあ、許容範囲……です?(笑)

齊藤さん ギリギリ学生時代の栄光ってことですかね?

――学生時代にゲーム製作をしていて他に印象に残っていることはありますか

齊藤さん ポジティブな件ではないですが、ゲーム製作をやっているうちにチーム内でモチベーションが下がってきてしまったメンバーがいて、なんとかやる気を出してもらおうと、僕が怒ったことがあったんですが、それがきっかけで結局こなくなってしまったことがありました。今でもそれが良かったのか悪かったのかわかりませんが、貴重な経験として大事にしていきたいと思っています。

――青春だなぁ……。『まぜぐるみ』作っていて一番苦労した部分はなんですか?

齊藤さん 発売された『まぜぐるみ』は、4つの動物ブロックをタップして消すというシンプルなパズルゲームになっていますが、企画段階ではもっと玄人向けのゲームだったんです。それを女性にも楽しんでもらえるように難易度を下げようという話になりまして、それをどこまで下げていいか、いわゆるレベルデザインで苦労しまして、勉強になりましたね。 あとはどんなゲームを作るかという企画のときに、女性向け、動物、パズルというキーワードが出てきたときに、絵を担当していたメンバーが色んな動物の特長を取り入れた謎の動物を描いて「かわいい」といったんですね。それで、これいけるんじゃないか? と思ったのが発端でした。そのときのことはよく覚えてます。

――実際にライトな層をターゲットにしたゲームを作りたいという気持ちは最初からあったんですか?

齊藤さん 自分がゲーマーだからだと思いますが、当初は玄人向けのゲームを作りたかったんです。それが企画を進めていくうちに「これって遊んでくれる人いないんじゃないの?」という気持ちが強くなってきて、急遽プログラマーを呼んで「仕様を変えたい!」と相談しました。

――発売されたバージョンでは、難易度はかなり低めですね

齊藤さん 難易度のバランスはちょっと足らなかったとは思ってます。プレイ中の点数によって少しずつ難しくなっているんですが、もう少し難易度が上がるスピードを早くしたほうが良かったと思います。今でも、カンスト(最高到達点数)を目指すと結構厳しいんですけど、そこまで飽きないでやれるかといわれると難しいですね……。当時はそこまで考えられませんでした。 もし、改良できるとすれば、ステージの概念とか連鎖のシステムとか、完成しきれていない点がいっぱいあるので、そこまで出来たら収益化までつなげられるかも、と思います。

齊藤さん
▲後輩の質問に答える齊藤さん。経験と自信にあふれた説得力のある解説に、横で聞いていた私も勉強させていただきました。

――これからのゲームはどういう風になっていくと思いますか

齊藤さん モバイルゲームが中心の時代ですが、もう少ししたらソーシャルゲームの流れが去るんじゃないかと思います。スマートフォンの性能はこれからもどんどん上がっていくので、徐々にPCのような本格的なMMOやアクションゲームが主流になっていくんじゃないかとは考えています。

――最後に『TDG GameProject』に参加している後輩たちへのアドバイスをお願いします

齊藤さん 卒業してもリリースまではこぎつけて欲しいですね。まぜぐるみをリリースしたときには売れても50人くらいかな?と思っていたんですが、なんだかんだで毎日1~2本は売れていたりするので、世界の広さや人の趣向の広さが感じられます。その感覚が今の仕事に生きているので、ぜひやりとげて欲しいですね。あとは、まぜぐるみは値段が高すぎた気がするので(笑)、そういうところの感覚みたいなものも経験していって欲しいと思います。

――ありがとうございました

◆東京デザイナー学院はチャレンジ精神のある人材育成を目指しています

 開発環境が身近になり、個人製作者や小規模開発のゲームが急激に増えている現代で、ゲーム業界はどのような人材を求めていて、東京デザイナー学院はどのような人材を輩出していくのか? ゲームクリエイター科の金龍洙学科長(以下、金氏)に、東京デザイナー学院の目指すゲーム制作者について伺った。

授業風景

――東京デザイナー学院は現在のゲーム業界に対して、どのような人材の育成を目指していますか

金氏 一言でいえば、チャレンジ精神のある人材の育成です。新しいものが続々と誕生する業界の中で、常に自身の武器となるものを身につける必要があります。それは新しいソフトウェアやアプリケーションの技術を習得するだけでなく、ゲームだけに留まらない幅広い趣味や娯楽や、新しいものをいち早く取り組む姿勢を持つことで、多くの引き出しを持つような学生の育成を理想としています。

――それに対して特に注力しているカリキュラムはありますか?

金氏 「クリエイターズコンペ」と「制作管理」を軸としています。
「クリエイターズコンペ」は個人で2Dイラスト、もしくはゲーム企画を制作し、発表時には実際に企業の方を招いて行います。作品と共に学生自身も企業の方に直接アピールが出来ますし、優秀賞を目指して、学生同士で競争を行うことで普段の授業とは違った効果を得られています。
 一方「制作管理」はグループでのゲーム制作の授業です。この授業で各パートに分かれ、実際のゲーム開発と同じ工程で制作を行います。個の力だけでなくメンバーとの協力も必要であるため、技術だけでなくコミュニケーションをとることの大切さを学ぶことができます。なお、制作したゲームは東京ゲームショウなどのイベントに展示もします。

――ゲームの販売まで行う「TDG GameProject」という授業では、マネタイズまでを含めた実践的な実習になっていますが、それについてどう思いますか?

金氏 学内外に評価される重要なプロジェクトです。学生には夢や目標を持たせ、制作意欲の向上に繋がり、学生募集の面でも実際にリリースまで結びつけた作品「妖精たちのまぜぐるみ工場」など、在学中からの実践的カリキュラムとして魅力的であると考えています。

――社会に出た東京デザイナー学院の卒業生たちの活躍は聞こえてきますか

金氏 企業様には良い評価を頂いております。在学中やインターンシップの段階ではまだ学生ということもあり、至らない点や問題が発生することもありますが、しっかりと対処をし、その都度話し合いをしていくことで、社会人としての自覚を持てるような指導をしています。

――東京デザイナー学院のこれからについて教えてください

金氏 学生と企業、双方が満足できるようにより一層の努力を続け、ひいては次代のゲーム業界へ貢献できるよう尽力していきます。

――ありがとうございました

 今回の取材は、東京ゲームショウ2014で得たユーザーの反応をもとに、仕切りなおしともいえる改修作業の真っ最中に行われた。そんな時間のないなかで、学生たちは自分たちのゲームのために、これまで経験したことのない新たな作業にも積極的に取り組んでいて、学校の理念にもある不屈の“チャレンジ精神”が垣間見ることができた。
 正直無茶と思えた挑戦だったが「TDG Game Project」のフェイスブックページでは『リュースのぼうけん』と『Mag Mell』が、着実に完成していく様子が確認でき、改めて学生たちのゲームに対する真剣な気持ちと情熱を思い知った気がした。
 TAPPLIでは、今回のインタビューだけでなく『リュースのぼうけん』や『Mag Mell』が完成した際にまたみなさんにご紹介するつもりだ。学生たちの想いの集大成となるゲームを期待して待っていて欲しい。

 最後に、今回の取材にご協力いただいた学生さん、先生方、齊藤さん、そして部外者の私たちの取材を快諾していただいた東京デザイナー学院の関係者の方々に改めて感謝いたします。本当にありがとうございました!