2019年のアニメ業界は「鬼滅の刃」や「天気の子」などのヒットに恵まれた年と判断。アニメの本数が高水準で推移していることから制作ラインの確保が重要課題に。
株式会社帝国データバンク(以下、帝国データバンク)は、2019年(1~12月期決算)におけるアニメ制作業界の動向をまとめた調査結果を公開した。それによると、アニメ制作業界の市場規模は2427億4900万円だったとのこと。
2019年のアニメ業界は、多くのヒット作に恵まれた1年で、テレビアニメでは「鬼滅の刃」が幅広い層や世代で爆発的かつ長期的な人気を獲得し、劇場版アニメに関しても、新海誠監督の最新作「天気の子」が興行収入140億円を突破するヒットを記録するなど、明るい話題が相次いだ。
一方で、2019年7月には株式会社京都アニメーション(以下、京都アニメーション)の放火事件が発生、同社36人のスタッフが命を落とす痛ましい惨事となった。京都アニメーションでは「涼宮ハルヒの憂鬱」をはじめ、2000年代後半以降の日本アニメ文化をけん引した企業で、人材喪失、制作資料など物的損失により、日本のアニメ文化は大きな痛手を被ったと考えられた。しかしながら、京都アニメーションは制作活動を再開し、2020年9月に公開した新作映画「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」が好調な滑り出しをみせるなど、復興への道を歩んでいるとのこと。
2019年までのアニメ業界をめぐる動向に関しては、制作会社による買収(M&A)や提携、共同出資によるアニメ制作会社の設立などが目立ったそうだ。
アニメの制作本数が高水準で推移し、制作ラインの確保が重要課題になったことに加え、人員の確保や作業効率化などを目的に、制作会社を中心とした合従連衡が進んでいるほか、不動産会社のいちご株式会社がアニメ制作会社を立ち上げ、元請として作品制作を進めるなど、異業種がアニメ市場に参入することもあった。
また、海外企業による日本アニメの接近姿勢もあり、アメリカのNetflixは、日本市場に新作アニメを相次いで投入するなど、国内アニメファンの獲得に注力し、中国のテンセント傘下の上海絵界文化伝播、彩色鉛筆動漫などの中国企業は日本品質を目指した内製化を求めて、日本アニメ市場に参入したことも近年の特徴とのこと。
帝国データバンクのページでは、これらの他にも、専門スタジオや倒産・休廃業・解散の動向、2020年の見通しなどを紹介している。