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【Ingress珍ポータル】とみさわ昭仁の珍ポータル紀行 第4回 古書会館の帰りに高円寺でアニマル珍ポをさがしましょう

 日本中のブックオフを回っていると言っても、そこにあるのは白っぽい本(近年刊行された本で、最初の購入者が古本屋に売ったばかりの比較的新しい本)が中心で、古書的に値打ちのあるもの(茶色い本なんて呼ばれたりする)は、まず出てこない。

 もちろん、そこからいかにして珍奇な本を見つけ出してくるかが、わたくし=マニタ書房の腕の見せ所なのだけれど(※編注:とみさわさんは古書店マニタ書房も経営しています)、まあ効率は悪いですわな。そこで、定期的に都内の古書会館で開催されている古書市に顔を出すようにしている。

 古書会館というのは何か? えー、野菜や魚に市場があるように、古本の世界にも市場があるのです。都内には東京古書会館(神保町)、北部古書会館(板橋)、西部古書会館(高円寺)、南部古書会館(五反田)の4か所があって、それぞれで業者のための古書取引が行われている。また、週末には一般客も入場可能な古書市が開催されている。

 ぼくは古物商の免許は持っているけど、古書組合には加盟していないので、市場の方には参加できない。だから、そんな自分でも参加できる週末の古書市のほうに足を運んでは、茶色い本を探しているというわけ。

◆ご老人たちに混じって人喰い本を探す

 今年1月のある週末。いつものように古書市が目当てで高円寺まで行ってきた。駅前の道を北へずんずん歩き、オリンピック高円寺店の角を右へ曲がると、すぐに古書会館がある。

 古書会館の前には、すでに老人たちがたかっていた。そうなのだ。古書市、なかでもデパートの催事場ではなく、こうした古書会館で行われる古書市に集まるお客様は、平均年齢がいちじるしく高い。血糖値も高い。ぼくもいいかげん年寄りの部類に入るが、それでも古書の世界では40、50なんて小僧である。


▲古書会館の前庭に並んだ本はだいたい100円均一。この中にも掘り出し物がある。

 前庭の本をざっと見て、これは、というものがなかったらすぐに室内に入る。荷物を預けて、端から棚を見ていく。先輩方の背中の隙間から、本棚に並んだ背表紙を見ていき、少しでも心に引っかかるタイトルのものがあったら、スッと手を伸ばして引き抜き、中身を確かめる。

 それで「これは欲しい本だ!」と思っても慌ててはいけない。破れ、汚れ、書き込みなどの本の状態を見て、それに見合った値付けかどうかを確認する。問題なければ確保だ。これをひたすら棚の前で繰り返して行く。まったく地味な作業だよ。カビ臭いしね。


▲この日は3冊購入したが、1冊なかなか茶色い本を手に入れた。

 マニタ書房には、猛獣や食人族に人が喰われる事件を追った本ばかり集めた「人喰い」というコーナーがある。店でいちばん力を入れているコーナーだといっても過言ではない。なので、東部ニューギニア戦での悲惨な状況を紹介したこのドキュメンタリーは、とてもありがたい収穫となった。

◆ラーメンの前に珍ポを探す

 ひと通り古本と格闘して、腹が減ってきた。どこで食事をしようかな……などと迷うことはない。ぼくが高円寺に来たら、必ず食べるラーメンがあるのだ。

 でも、そこへ向かう前に毎度のごとくiPhoneを取り出し、『Ingress』を立ち上げる。スキャナーをオンにして、珍ポータルを探しながら移動するのだ。


▲「高円寺パンダ」

 いきなりパンダを発見。とりあえずポータルの画面部分をアップにしてスクリーンショットを撮っておく。このように、出先でiPhone片手にスキャンして歩き回っている段階では、このパンダがどういう由来に基づくものかまではわからないが、帰宅してからパソコンで調べるとだいたいわかる(わからない場合もある)。こいつは北口の中通り商栄会にある泰生堂薬局のマスコットのようだ。


▲「エリア51のカエル」

 続いてカエル発見。というかケロロ軍曹じゃんか。ポータル名はシャレでネバダ州のグルーム・レイク空軍基地の名称にしたのかと思ったら、そういう店名らしい。深夜はオタクバーとして営業するそうで、なるほど下の看板に描かれているのは『アイマス』の菊地真でございますね(ググった)。

 ここまでにパンダとカエルを見つけたところで、「今回は動物の珍ポータルを探してみよう!」と思いついた。ただ漫然と珍なるポータルを探すより、何かテーマを設けておいた方が絶対に楽しいからだ。


▲「タイガー餃子会館」

 画面をくるくる回して、XMが漏れ出している箇所をひとつひとつチェックしていく。すると、トラの看板が目に飛び込んできた。これも北口の店。見ての通り、餃子屋さんの屋号であるタイガーを看板にしたものだ。3匹目の動物を捕獲!


▲「ペンギンの像」

 4匹目はペンギン。つや有り部分とつや消し部分の使い分けで2色を表現するのは、墓石などをあつかう石材店がお得意とする技法。このポータルが設置されているのは背景から察するに不動産屋のようだが、帰宅後、あれこれ検索しても場所は特定できなかった。


▲「巨大犬模型」

 巨大犬模型とはまた見たまんまなポータル名である。こういうなんのヒネリもない名前で申請されるポータルは案外多い。ここに知恵を絞った方が『Ingress』というゲームは何倍もおもしろくなると思うのだが、そうでもないエージェントが多いということか。


▲「タガメのオブジェクト」

 石の表面にタガメが掘られている。解説文には「桃園川緑道にある水棲昆虫のオブジェクトのひとつ」とあるので、この緑道を実際に歩いてみると、他にも同種のオブジェクトがいくつかあるのかもしれない。『Ingress』で見つけたものを、『Ingress』から離れて追いかけてみるのは、なかなか愉快な行為だ。


▲「あひるの像」

 こちらも同じく桃園川緑道にあるポータル。ここいら一帯の石像はみんな同じ石工の手で研磨されたのか、アヒルの親子、つやっつやである。

◆アニマル珍ポハンターのシメは漁師の愛した麺で

 というわけで、スキャナーの画面をくるくる回しながら高円寺の北口から南口へとやって来た。目指すは高円寺で唯一、勝浦タンタンメンを食わせてくれる店「じもん」だ。

 いや、高円寺どころか都内全域でも勝浦タンタンメンをやっているのはほかに荻窪の「ピンギリ」ぐらいしかない。しかも、あちらは営業時間が昼の12時から14時までのたった2時間という入店困難店で、わりと気軽に食べに来れるのはこちらの「じもん」だけなのだ。

 勝浦タンタンメンの説明もしておきましょうか? これは千葉県の勝浦市から生まれたB級グルメで、元は海からあがった漁師さんや海女さんが冷えた身体を温めるために考案したもの。たっぷりの玉ねぎとひき肉から独特の旨味が引き出されており、スープの表面を覆い尽くしたラー油がそれを引き締める。


▲「勝浦タンタンメン 生ニラ追加、ひき肉2倍、辛さ2辛」

 このように、スープの上に生ニラをのせるのが高円寺の「じもん」流。昨今はニラの価格が高騰しているので、トッピングの量が減ることもあるが、それでもうまいことには変わりない。

 ひとしきり麺を食べ終わり、残ったスープに半ライスをぶち込んでおじやにすると、これまた最高。本(ホン)と珍(チン)と麺(メン)。今日もまたいい旅ができた!

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