香港で7月末に開催された「ACGHK2014」。今年で16回目の開催となるこのイベントは、アニメ、マンガ、ゲームなどを取りあつかうフェスで、去年は70万人以上もの来場者が訪れたというモンスターイベントだ。70万人といわれてもあまりピンとこないかもしれないが、香港の人口が現在700万人くらいなので、すべてが地元の人ならば10人にひとりが会場に来ているという計算になる。そう考えると、規模の大きさと注目度が自然と高くなるのもわかっていただけるだろう。
▲熱気と人であふれそうな会場内。通路もご覧の通り!
▲ほとんどの物販ブースの前には長蛇の列があった。
▲プロ格闘ゲーマーとして活躍する梅原大吾氏。「しょこたん」こと中川翔子さんや藍井エイルさんのライブも開催され香港のファンを沸かせていた。
会場の外には、ピーク時には入場まで4~5時間待ちという長蛇の列ができ、夕方以降になっても短くなる気配はない。印象的だったのは日本と違い、家族と一緒に訪れる小学生以下の子供の姿が目立ったことだ。会場を訪れた子供たちとその家族には専用のファミリーゲートがあり、ほとんど並ばずに入れるようになっていた。子供たちに優しいこのシステムは見習うべきところがありそうだ。
そろそろ本題に入ろう。TAPPLI編集部として気になることといえば、やはりモバイルゲームだ。せっかくの機会なので、このイベントに出展している開発会社や販売会社のブースに突撃し、香港のモバイルゲーム業界や日本への進出に対する意欲などを聞いてみた。
・晶崎科技股?有会社(Game Dreamer)
晶崎科技股?有会社はモバイルゲームの販促・販売を担当しており、?港在線(LineKong)が開発を手がけた「神之刃(かみのやいば)」と「戀舞(LOVE DANCE)」の2タイトルを出展していた。
「神之刃」はテンポの良さが気持ちいい3Dカードアクションゲームで、画面内を暴れまわるように動くカードバトルは爽快感バツグン。「戀舞」は画面いっぱいに出るリングをタイミング良くタッチしていく音ゲーで、ノリの良い曲と派手な画面演出が人の目を集めていた。
マーケティングを担当していAlexさんは、香港の人口の少なさを問題にあげ、これから大きな成長をするためには、モバイルゲームの需要が急増している東南アジアや日本への進出は進めていくべきことだという。特に日本に対しては、ゲームをみるユーザの目も肥えていて、会社にとっての大きなチャレンジになるはずとその心意気も垣間みえた。すでに協力会社の候補として数社と話を進めているとのことなので、近いうちに日本でこれらのタイトルがみられるかもしれない。
▲曲のノリとエフェクトが心地よい音ゲー「LOVE DANCE」の試遊が人気だった
▲月間の売り上げが6億円を突破したという人気急上昇中の「神の刃」
・MADHEAD
今回のACGHK2014で一番人を集めていたブースといえばここMADHEAD社。現在、世界のいくつかの国で爆発的な人気を誇っている「神魔之塔(TOWER OF SAVIORS)」を開発・販売している会社だ。当日は会場の一角に巨大なブースを構えていたが、新たなアップデートの発表や来場者が参加する対戦イベントで常時人だかりができていた。
プロデューサーのSuenさんに「神魔之塔」の人気の秘密を聞いてみたところ、ユーザーとのコミュニケーションをインターネットに頼らず、自分たちから現場におもむいて密にとったことが成功の大きな要因だと語っていた。インターネットが情報収集やコミュニケーションツールとして大きな役割を担うようになってきた現代で、あえて店舗レベルのイベントを細かく積み重ね続けたことで着実にファンを増やし、メーカーとユーザーの間だけではなく、ユーザーとユーザーの間にも新たな絆が生まれ、それが巨大なコミュニティに育ったということだ。
日本進出の意欲をたずねてみたが、日本は目の肥えたユーザーも多く、もっと力を溜めてから挑戦したいとのことだ。現在はスマートフォン市場が急成長中の東南アジアに力を入れている真っ最中で、その波に乗り更なる成長を狙っているそうだ。
▲ユーザー参加型の対戦大会で盛り上がっていた神魔の塔ブース。
▲多忙ななかアンケートにご協力いただいたプロデューサーのSuenさん
・Redspots Creative
Redspots Creativeは、日本でもおなじみの「トランスフォーマー」をAR技術でスマホやタブレットに出現させるアプリを出展していた。香港では、子供たちを中心にトランスフォーマーが大人気で、バーコードをのぞくと出現するトランスフォーマーに通りかかった子供たちは大興奮。バトルゲームがはじまると目を輝かせながら画面に見入っていた。
ディレクターのCheungさんに話を聞いたところ、立ち絵しかない状態からすべての3Dの絵を描きあげたらしく、臨場感や迫力を出すことにかなり苦労したが、製作者たちの努力が実り、最終的に納得のいくものが完成したと誇らしげに語ってくれた。今後は、この技術を映画などのパンフレットやムック本に取り入れたり、ライトアップされたビルや電光掲示板の光で表示させるようにしたいそうだ。香港のネオンをスマホ越しにのぞくと巨大ロボットが出現する日も近いのかもしれない。
Cheungさんには日本への進出についてもうかがってみた。興味津々で前向きな姿勢をみせたが、今はまず地元香港で大成功をおさめ、力をつけたいということだった。とても情熱的な方だったので、そのうち日本で再会する日を楽しみにしたい。
▲バーコードをかざすとトランスフォーマーが出現! 派手なエフェクトのバトルも楽しい。
▲気さくで陽気なCheungさん。日本進出に対する熱い想いを語ってくれた。
香港の開発者たちの認識として共通していたのは、日本で成功するためにはゲームの内容はもちろんのこと、レベルの高いグラフィックからセリフひとつを翻訳した際のニュアンスまで、非常に細かいところまで高い完成度が必須!と、かなり高いハードルがあるイメージがあるようだ。それもそのはず。ACGHK2014に出展していて人気のあるブースのほとんどが日本生まれのコンテンツで、限定グッズを販売していたブースには、それらを求めるファンがいち早く集まり、瞬く間に列が長く伸びていた。その人気の高さを目の当たりにしているだけに、開発者の人たちも慎重になってしまうのかもしれない。だが、出展されていたゲームをみている限り、どれもクオリティが高く、日本版が発売されればファンを集めそうだと感じられるものも多かったので、近い未来、彼らの作るゲームが日本版でプレイできるようになることを期待したい。