スマートフォンゲームでは、ときどき珍しいテーマやシステムのゲームが驚かせてくれます。最近は多少の慣れもありましたが、このゲームを見つけたときは思わず「ニッチすぎんだろ!」とツッコミを入れてしまいました。
まぁそのあと、いそいそとダウンロードを開始したんですけどね。「マタギ」をテーマにしながら、シミュレーションRPGという『マタギの鍋』。色々とおもしろ過ぎます。
◆流行り病の娘のために……マタギの団長が厳しい大自然に挑む!
さてゲーム内容に触れる前に「マタギとはなんぞや?」という人のために、説明しておきます。調べたところ、マタギというのは東北地方や北海道で古い方法を用いて集団で狩猟を行なう者を指すんだそうです。筆者は吉村昭先生の名作ドキュメンタリー小説『羆嵐』(新潮文庫)のイメージがあったので熊を狩る猟師のことを指すと思っていたんですが、獲物は熊のほかにカモシカやらウサギやらニホンザルやら、結構幅広いみたいですね。
『マタギの鍋』のストーリーは、流行り病に倒れた娘においしい鍋料理を食べさせるため、大自然の奥地に棲む幻獣を狩りにいくというもの。主人公はマタギ団の団長で、さまざまな狩りを経て、幻獣を追い求めていくのです。
◆戦闘のシステムも個性的、まるでパズルゲーム!
本作はターンベースのシミュレーションRPGです。プレイヤー側が猟師に何か行動させ終えたら、次は敵である動物のターンとなります。目的はそのステージに登場する動物を狩ること。と、ここまでの説明ではテーマは珍しいものの、わりと内容は普通な感じがしますよね? しかし本作では、プレイヤーが1ターンで下せる命令は、全体で1方向にしか作用しないという特徴があります。
たとえば動かしたい猟師を選択して「左に移動」といった命令を下すと、猟師たちは全員左に動きます。「こちらの猟師は右に、こっちの猟師は上に……」みたいな感じでばらばらの方向に行動させることができないんですね。それぞれの猟師で移動と攻撃とに分けて命じることはできますが、これも右に攻撃させつつほかの猟師は左に移動、なんてマネはできません。
また、猟師の移動も特殊といえば特殊。この猟師たち、一度移動の命令を下すと、基本的には障害物かステージの端に突き当たるまで、ずっと動いてしまいます。途中で任意で止まるといった概念がありません。
攻撃も少し変わっております。猟師たちが戦闘で使う武器は大まかに分けて「石」、「弓矢」、「銃」のいずれか。それぞれに特徴はあるのですが、共通しているのはどれも遠距離武器だというところです。すなわちこのゲーム、敵に隣接してしまうと猟師たちに攻撃の手段がありません。
では敵に隣接する意味がないかというと、さにあらず。実は普通に攻撃しても、敵になかなか攻撃が当たらないのですが、猟師を敵に隣接させると押さえつけて動きを封じることができ、その合間にほかの猟師で攻撃させるというのが基本の戦法となるのです。
当然ながら、敵の獣たちは隣接すると猟師を攻撃してきます。なので、押さえつけたあとは素早くほかの猟師で攻撃を仕掛けて、あまりダメージを食らわないうちに敵を仕留める必要があります。猟師たちの武器は縦方向か横方向かのみに攻撃可能で、斜めの方向に向かって攻撃できません。そのことを踏まえつつ、うまく猟師たちを配置し、敵を捉え、一刻も早く倒すという、なかなか悩みがいのあるゲームとなっています。この辺り、プレイした感触としては、パズルゲームに似たところもあるように感じます。
◆鍋を囲んで次の狩場へ……猟師たちの戦いは続く!
ほかにも戦闘で倒された猟師は生き返らない、猟師に成長要素がないのも異色。猟師たちは基本的に、敵から手に入れる装備品やアイテムによってしか、強くする術がありません。
本作は全体的に背景設定からシステム、敵の強さまで、ストイックさを感じさせます。しかしここまで不思議な雰囲気を醸し出しているゲームはなかなか見当たりません。その味わいはまるで、癖の強いマトンのよう。個性的なゲームを探しているかたは、ぜひプレイしてみてください。