プレイヤーにあわせて成長のモチベーションを高める指導を考えるAIを開発。スクエニは開発した「メタAI」技術が、現実空間で社会貢献できるよう進化を目指す。
オムロン株式会社（以下、オムロン）と、株式会社スクウェア・エニックス（以下、スクエニ）は、オムロンの卓球ロボット「フォルフェウス」を通じて、人のモチベーションを高めるAIについて共同研究を開始したことを発表した。
本共同研究では、人の様々なバイタルデータから、人のモチベーションを高めるようなフィードバックを行なうAIアルゴリズムを開発し、機械が人に飛躍的成長を促す技術の確立を目指すというもの。
オムロンは「機械にできることは機械に任せ、人間はより創造的な分野で活動を楽しむべきである」という創業者の立石一真氏の哲学のもと、オムロンのコア技術「センシング＆コントロール＋Think」を通じ、機械が人の能力や創造性を引き出す「人と機械の融和」した未来を目指している。
それにより、「センシング＆コントロール＋Think」による「人と機械の融和」をわかりやすく紹介するため、卓球ロボット「フォルフェウス」を2013年に開発。最新第5世代の「フォルフェウス」では、最先端のAIやロボティクス技術を搭載。プロ選手とのラリーも可能な高い卓球スキルと、対戦相手を深く理解して一人ひとりに最適な返球やアドバイスを行なうことで、人の成長を促すコーチングができるまでに進化した。
第5世代 卓球ロボット「フォルフェウス」
今回の共同研究では、オムロンが強みとする「人の感情と能力を読み取るセンシング技術」と、スクエニがゲーム開発で培った「プレイヤーごとにゲーム展開を変化させ、人の感情を揺さぶるAI技術（メタAI※）」を組みあわせることで、プレイヤーにあわせて成長へのモチベーションを高める指導方法を考えるAIを開発。これを「フォルフェウス」に搭載し、人と卓球を通じてコミュニケーションすることで、機械が人のパフォーマンスを引き出し、人と機械の関係性の実現が加速される。
スクエニではテクノロジー推進部を中心に、AI技術のひとつである「メタAI」がゲームのプレイヤーの感情などを理解し、それぞれのプレイヤーに適したコンテンツを提供することを目指している。
今後のデジタルゲームについては、モニターや画面の中だけではなく、スマートシティなどの現実空間をベースとした領域へ拡張されることも想定。その際にスクエニが、ゲームコンテンツを通じ開発してきた「メタAI」技術が、現実空間において社会貢献できるよう進化するため、オムロンの卓球ロボット「フォルフェウス」の共同研究に参画した。
オムロンは、本共同研究により実現した技術を、オムロンの注力ドメインであるFA（ファクトリーオートメーション）やヘルスケア、ソーシャルソリューションに展開する。例を挙げると、FAにおいては作業者の習熟度にあわせた機械の適切な支援によるモチベーション向上などへの活用が期待されている。今回の共同研究を通じて、各ドメインにおける「人と機械の融和」に向けた社会的課題の解決を加速していくと発表した。
共同研究による技術を搭載した卓球ロボット「フォルフェウス」は、2020年1月7日から10日までアメリカのネバダ州ラスベガス市で開催される「CES（コンシューマー・エレクトロニクス・ショー）2020」に出展。本共同研究には、株式会社ロフトワークが運営するFabCafeがプロジェクト運営に協力していることも明らかになった。
※メタAI：ゲーム内で使用されるAIのひとつ。俯瞰的な視点からプレイヤーを含むゲーム内の状況を把握し、キャラクターなどのAIや天候や地形などの要素に指示を出しゲーム全体をコントロールすることができるAIのこと。
共同研究の概要
期間：2019年12月～2020年3月
目的：卓球ロボットにおけるモチベーションコントロールAIのアルゴリズム開発
役割
オムロン
・コンセプト開発、卓球ロボットへのアーキテクチャ開発、効果検証、アルゴリズム
・改善手法検討
スクウェア・エニックス
・コンセプト開発、モチベーションコントロールAIのアーキテクチャ設計、評価指標
・設定、開発アドバイス・サポート、アルゴリズム改善手法検討