ゲームのTVCMの演出方法の定番と言えば、パロディ、替え歌(CMソング)、動物などが挙げられますが、意外と多いのがお年寄りが登場するTVCM。ゲームとお年寄りのギャップがあったり、孫とのコミュニケーションを描いたり、実は凄腕のゲーマーだったり……などなど、お年寄り(おじいちゃん・おばあちゃん)が、どこか微笑ましく描かれていますよね。TAPPLIの読者なら、いくつか思いあたるTVCMがあるのではないでしょうか。
さて、今回紹介する『サマナーズウォー』は世界累計1300万ダウンロードを達成したスマートフォン向けRPGで、キャラクターの育成を重視し、ガチャや合成による成長システムから脱却しているのが特徴。このゲームのTVCMにもお年寄りが登場しているのですが、色々な意味でゲームアプリのTVCMを脱却しているのかもしれません。なぜならバリエーションが13種類もあるのに一貫したトーンを保っていて、その伝えたいメッセージはシンプルなのに中毒性があるのです。
それではさっそく、全13種類のバリエーションを筆者の独断で分類し、それぞれの特長を紹介してみましょう。
●伝承シリーズ
まず紹介したいのが名付けて「伝承シリーズ」。昔から伝わる手遊びや音頭の歌詞に『サマナーズウォー』のタイトルが用いられているのですが、そのテンポやループ性のためとにかく中毒性が高いです。さらに「手遊び篇」では『サマナーズウォー』というタイトルについて言い間違えやすさを逆手に取って印象づけ、「サマナーズ音頭篇」では問いかけることによって認知と周知をさせているのではないでしょうか。そのような意味でも、このシリーズはタイトル連呼系のTVCMとしての役割を果たしていますね。
また「ダウンロードの唄篇」は山奥の奇祭のような練り歩きと、念仏のような言い回しによって洗脳されてしまうようです。あと、個人差はあると思いますが、このシリーズは童謡やわらべ唄のような、ジャパニーズ・ホラーに通じる怖さを感じるところもポイントかもしれません。
●村人シリーズ
次に紹介するシリーズは「村人シリーズ」。単発で見た場合、意味のわからないTVCMになりそうですが、ほかのシリーズで語られない素性などが語られることでTVCMの世界観が広がりますね。かといって、RPGぃさんが何者なのかは一切不明のままですが……。このようなお年寄りが淡々と語るTVCMは、1990年代のゲームのTVCMで用いられたシュールな演出に通じるところがあり、どこか懐かしい感じがします。逆に中高生くらいの若い世代には新鮮に感じられるのかもしれません。
●集合シリーズ
「集合シリーズ」では、おじいちゃん達の連携プレーの姿が微笑ましく描かれています。独特なイントネーションや間が、どこか笑いを誘いますね。このシリーズも1990年代のゲームのTVCMっぽい雰囲気です。撮影の最後まで『サマナーズウォー』が何なのか実は理解していなさそうな感じも、いい味になっているのではないでしょうか。あと完全に個人的な憶測ですが、「言い忘れ篇」は実は「だよ篇」のNGだったものを、面白いからそのまま使っているのでは(笑)
●ダウンロードシリーズ
最後に紹介するのは「ダウンロードシリーズ」。お年寄りのゆっくりとした動作と、ダウンロードの進捗ゲージを合わせて『サマナーズウォー』のタイトルを言う内容。一旦停止するようなタイミングは、ゲームアプリをダウンロードする行為の「あるある」として、上手く使われているのではないでしょうか。
と、ここまで独断で分類したシリーズごとに紹介してきましたが、共通するのはお年寄りの微笑ましさと中毒性のあるタイトル連呼。この盲信的とも言える映像を原稿作成中にずっとYouTubeのプレイリストで再生していたせいか、どこかで見たような懐かしい感じがしてきました。山奥……謎の集落……、お年寄り……、謎の唄……。そうだ、これはテレビ朝日で放映され、映画化もされた人気ドラマ『TRICK(トリック)』シリーズでよくあるシチュエーションじゃないですか! な、なんだってー!!
おや、こんな時間に誰か来たのかな? とりあえず完成した原稿を編集部に送っておこう。
この記事を書いた人
TVCMを見続けて約30年。特にゲームのCMが大好物のCMウォッチャーであり、ゲームそのものよりもCMに興味があるダメゲーマー。最近はスマートフォンアプリのCMが賑やかになってきていることに、時代の動きを感じている。