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【台北ゲームショウ2015】シューティングからイライラ棒へ。台湾インディーズゲーム開発者の生き残り策

 台北ゲームショウ2015のBtoB(インディーズゲームフェスタ)コーナーで、2011年創業というmobili studioが処女作と最新作の2つのゲームを出展していた。この両者からアプリマーケットにおける急速な変化を垣間見ることができたので、紹介してみよう。

 共同設立社でテクニカルディレクターも務めるポール・チャンさんは38歳。玩具業界出身という変わり種だ。チームは5人(アーティスト2名、プログラマ2名、ゲームデザイナー1名)で、旅行アプリの開発で小手調べをした後、本格的にゲーム開発に参入してきた。その第一弾が縦スクロールシューティングの『Absolute Instant』だ。チャンさん自身シューティングゲームのファンで、特に『雷電』『究極タイガー』『ダライアス』などがお気に入りなのだという。当然ながら『Absolute Instant』も思い入れたっぷりの内容になった。

『Absolute Instant』

ダウンロードリンク: App Store

 ゲームは聖書的な世界観を持ち、プレイヤーが選べるのは男性キャラのユダと女性キャラのリズだ(あと一人、隠しキャラクターが存在)。ユダの機体は三方向ショット、リズの機体は前方へのレーザーで、パワーアップアイテムで三段階に強化できる。操作は指の動きに追随するタイプで、自分の指で自機が見えにくいという欠点はあるが、後述するテレポート機能によってカバーされている。攻撃はオートで、シェイクまたは二本指のタップでボムも打てる。

キャラクター選択

 グラフィックも美しく、中でも天使がモチーフのボスキャラクターたちは、水彩画風のタッチも含めてデザインがユニークだ。岩石を投げつけてくるゴーレム型のボスも「ここまで細かく描きこむか!」というこだわりの形状で、一見の価値はあるだろう。

 そして本作の特徴が、画面上の任意の地点をタップすると、そこにテレポートできる点だ。エネルギーゲージを消費するため、連続して3回までしかできないが、比較的早く回復するため、気軽に使える。敵の攻撃もテレポートで避けることが必須のシーンが多々あるため、指をピッピッピと動かしながらプレイすることが推奨されているのだ(これに加えて、画面左上のアイコンをタップすると機体を透明にできる機能もある。ただし無敵状態ではないので注意)。まさにスマホならではのシューティングゲームだろう。

 ただしアップルのオススメアプリにも選出されたものの、次第に有料アプリだけで経営を安定させるのは厳しくなったという。またハードコア向けにジャンルを絞りすぎたのも売上が失速する要因となった。そこで次回作は完全フリーのカジュアルアプリ『Talking Trio: Monsters』にかじを切り、そこからゲームとしての要素を強めた『Talking Trio: Birds』をF2P(無料アプリ)でリリースした後、満を持して最新作『Bubba: The Blowfish』をリリースした。ビジネスモデルはフリーの体験版と、有料+アイテム課金の2バージョンとなっている。

『Bubba: The Blowfish』

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『Bubba』はハリセンボンのキャラクターを本体を傾けながら操作して、コースのふちや障害物などに当たらないようにゴールまで導いていくというもの。ステージ上には貝殻のアイテムがあり、これをためていくとさまざまなアイテム(近くの貝殻を吸い寄せてくれる磁石など)に交換できる。もっとアイテムが欲しければ課金するという形だが、無料でも十分に楽しめる作りだ。家族や友達同士でサクッと楽しむには最適で、ついつい何度もやり直してしまう良バランスになっている。

 チャンさんは「日本のテレビ番組で放映されていた『電流イライラ棒』がヒントになったんだ。誰でも遊べるバラエティゲームにしたかったんだよ」と話してくれた。シューティングとイライラ棒では差がありすぎる気もするが、「ゲームの中身はレトロで、ビジュアルは現代風をめざしているので、その意味では同じ」なのだという。現在はCocos2d-Xで開発しているが、今後はUnityに移行して、2.5Dのゲーム(キャラやステージは3Dだが全体的には2Dゲーム)やコンソールへの展開も視野にいれていきたいと話してくれた。

 わずか数年にもかかわらず、激しく変化するアプリ市場と、その中でたくましくサバイブしていく台湾インディーズゲーム開発者たち。その一端を垣間見た感じだった。ゲームはどちらも腰のしっかりした良作なので、ぜひプレイしてみてほしい。

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