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中国3億オタク時代② ~スマホフィーバー(国民思考モードの転換期)~

中国キャッチ

老若男女、全年齢層が熱中するスマホゲーム。人口14億の国家が形成する超巨大マーケット。

中国ではe-Sportsの開催会場には大勢の観客が訪れ、観戦や応援を楽しむ。

ニーハオ TKJ.です。

前回は中国におけるゲームの立場が巨大なビジネス市場に変化つつあるとお伝えしました。無論、これは決して突然に空から落ちたものではありません。必ず発端があると考えられます。

今回はその核心に至る前に、まずは現地中国で感じてきた変化をお伝えします。

Part2. 悪、毒とまでいわれたゲームが中国社会に認められた理由とは?

ゲーム好きの私ですが、幼いころ(90年代半ば)は、休みの日以外でゲームをやろうとすると「ゲームとかアニメとかろくでもないことしないで、もっと勉強しなさい!」と、よく父親に叱られていました。

でも、最近は「これ、何のゲーム?」とか「デイリーミッションがあるから一局やろう」と、昔と違って一緒にやろうと誘われることが多くなりました。普段の生活をみていても、ヒマな時はいつも新聞を読むかドラマを見ていた父親が、いつの間にかスマホばっかいじっているようになっていました。

それだけではありません。親戚が私の家に遊びに来ても「wifiのパスワードを教えて」と先に聞いてくるのは私と同世代の人ではなく、ひとつ上の世代の人が多いです。そして、みんな親子あるいは、久々に会う親戚同士でも一緒にゲームをはじめることもあります。ゲームをやると怒られて育った私には、考えられない光景です。

このことについて、ネットで検索したり、仲間に聞いてみると、「そそそ、うちも全く一緒!」、「昔あんなに叱られたのに、いまや完全にスマホ依存症だわコレ」という同様の声が途絶えませんでした。

この経験からも、中国におけるゲームの捉えられ方が急激に変化してると思わざるを得ません。中国では今、ほぼ全年齢の人がゲーム、特にスマホゲームに熱狂しているという、不思議な興味深い転換期が到来していると考えました。

その要因を自分なりに考え、3つの仮説を立てました。

第一に中国モバイル事情の大きな変化です。

2007年iPhoneがアメリカで登場するやいなや爆発的に広がりましたが、2年遅れて中国でリリースされても、市場の反響はいまいちでした。ところが、2010年に発売されたiPhone4は中国でもブームとなり、中国スマホ市場が凄まじいスピードで成長し、数年後の2016年10月には、中国国内のスマートフォンユーザー数が10億を超えます。

そして、アプリ分析サイトのQuest Mobile(※海外サイト)の調査によると、2016年12月にはMAU(月間アクティブユーザー)が5000万を超えてるアプリが66種類。MAU100万以上のアプリは983種類という、ヒットアプリの尋常ではない集客数が確認できます。

Quest Mobile。中国のアプリ事情を調べるなら知っておきたいサイト。(C)QuestMobile

さらに調べると彼らが1か月あたりのアプリにかける時間は平均で82時間というデータが出ています。年齢別にみると、10代は87時間、20代は84時間、30代は80時間、40代は73時間だそうです。

このことからもスマートフォンやタッブレットは既に生活の一部になっていて、子供や10代といった若い世代にはあって当たり前の存在になっていて、ACG好きなオタク少年たちが20代になって仕事に就き、金銭にある程度余裕ができると、ゲームなどをスマホで楽しみ好きなことにお金を使えるようになります。一方で中年層以上の40~50代もスマートフォンの新参者でありながら、科学の便利さがもたらした強い刺激とゲームがもたらす快感を直接に味わえるようになりました。つまり、スマホはほぼ国民全員の実用から娯楽まで関わることになってきたのです。

第二にe-Sports産業の著しい発展がもたらした経済的効果があります。e-Sportsとは、複数のプレイヤーで対戦できるビデオゲームをスポーツや競技としてとらえる際の名称です。wikiによると、現代の競技人口は5500万人以上になるそうです。

中国では、ゲームは悪いものであり、やれば必ずダメな人になって人生も終わるという観念(偏見)があるため、e-Sportsの発展はスマホと同じようにゆったりとしたものでした。しかし、現在は、国としてもe-Sportsを競技やスポーツと認め、2016年の市場規模が前年比で187.1%増となり、8000億円(504億元)に到達しています。観客数は8000万人ともいわれ、提携するライブ配信アプリも盛り上がってました。これだけ注目を集めると、莫大な経済的効果を生むようになり、社会的に悪と思われていたゲームも“競技”として有意義なことだと認めざるを得なくなります。

e-Sportsの競技者となった20、30代は、2005年にプレイヤーSKY(李暁峰氏)が「ウォークラフト3」の世界チャンピオンになったをはじめ、中国内だけでなく、世界のe-Sports舞台で活躍する人が次々と現れてきます。彼らはNBAやオリンピックの人と同じように専門のクラブに入り、徹底的に訓練をして、世界中の試合に参戦します。その彼らの苦労と努力の結果が高成績に結びついてるのは間違いありません。こうなるとダメ人間として扱うこともできなくなってしまいました。

中高年層においても、これまでの学歴社会という背景の影響もありますが、今までずっと「他の事をやるより勉強しろ」と、ゲームを見下していたのに、いざゲームを体験してみたらドハマりしたことも興味深いです。

こうして、今まで社会で認められなかったゲームが汚名を返上し、アニメやマンガなどと一緒にオタク産業として発展しました。

最後のひとつは国が動いたことです。中国は間違いなく市場主義の社会ですが、国の事情により、政府の制限や介入が強いことも間違いありません。前述のように、国民的産業になったオタク産業を見て、長い間禁止または放任主義の態度を示していた政府側も、やっとポジティブな姿勢をとりました。

いくつかの例をあげましょう。

まずは家庭用ゲーム機です。ゲームは「悪、毒」という観念により、中国政府は2000年に子供の成績に悪影響を与えるとの理由から生産と流通を禁止しました。余談ですが、禁止されたとはいえ、子供たちは別ルートまたは別プラットフォームでゲーム楽しんでいました。これも中国でPCのオンラインゲームが圧倒的な人気を誇る要因のひとつになっています。
それが2014年に家庭用ゲーム機販売を解禁となります。そして爆発的に売れて2016年の販売額は約550億円(33億7000万元)に達するとまでいわれました(この件もなかなか独特なので、今後紹介していきたいと思います)。

次は市場の正規化についてです。今まで経済が継続的に急成長してきた中国は利益に注目しすぎて、著作権や個人情報などに目を向ける余裕がありませんでした。したがって、パクリや海賊版が堂々と市場に蔓延し、かつての中国はさまざまな業界でパクリ大国という「美称」がありました(笑)。

しかし、それも数年前の話ではありますが、古い話だと個人的には思います。現在はオンラインゲーム市場においては、中国政府(中国文化部)が市場の秩序を取り締まり、著作権への要求やデジタル財産の保護など、消費者や企業の合法的な権利と利益を保護する法案や政策を次々と作成、実施しました。

最近の話ですと、中国では2017年5月1日(月)よりオンラインゲームのアイテムに関する法案が施行されました。この内容は、主にガチャや課金アイテムの情報を伝え方や、プライバシーの保護の徹底に関するものです。当サイトにもニュースがあるので、興味がある方はそちらで確認をしてみてください。

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画像は中国文化部公式サイト。

このように中国政府が法案や条例を実施することにより、ゲーム市場の健全的な発展を促進する姿勢がみえます。また、これに応じるように、国民からも著作権に対する訴求意識が高まっているように感じます。最近中国のゲームは「海賊版撲滅!」「日本の〇〇社さんから権限をとった唯一のゲームです!」といったキャッチフレーズが多くみかけられます。特に大手ゲーム会社であればであるほど、著作権を重視しています。

教育の場にもゲームは登場します。テストではありますが、2016年よりスポーツ学部のひとつとしてe-Sports専攻科が、中国国内の20か所の大学に新設されました。この科では、e-Sports発展の歴史から理論などを学び、ゲームを娯楽ではなく教材として活用し、人を育てていくようです。
科の新設を認めたことからも、政府が将来的にe-Sports市場が伸びることを期待していることが読みとれます。

現在中国の人口はおよそ14億です。ここでお伝えした通り、中国社会においてもオタク要素がコツコツと正しく浸透していると思います。これを「全国汎OTAKU」と一括りするには大袈裟かもしれませんが、この膨大な市場は、政府も企業、そして3億のOTAKUたちが一緒になって作り上げた市場には間違いありません。

ただ、現実はやはり甘くはありません……。長い前置きになってしましたが、次回はいよいよ中国進出に関してお話ししたいと思います。

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