海外事業で貿易摩擦などによる消費低迷が収益に影響。新型コロナウイルス感染症の防疫対策で国内のテーマパークや店舗を一時休業。
株式会社サンリオは、2020年3月期決算(連結)を6月12日(金)に発表した。当期連結経営は売上高552億6100万円(前期比6.5%減)、営業利益21億600万円(同56.0%減)、経常利益32億7400万円(同43.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は1億9100万円(同95.1%減)だった。
経営成績に関する説明
当期の業績については、国内でライセンス事業におけるキャンペーンなどの大型案件が減少したことに加え、冷夏、暖冬、台風といった天候不順により、ライセンス事業と物販事業が伸び悩んだ。
一方、テーマパーク事業においては、マーケティング施策が奏功したことで、国内の10代後半や20代前半を中心とする女性に支持された。
物販事業においても、天候の影響やインバウンドの停滞があったものの、アイドルファン向けの商品やハンディファンなどのヒット商品も生まれ、好調に推移した。
しかしながら、2020年2月以降の新型コロナウイルス感染症の拡大が大きく業績に影響した。海外は、特にアジアにおいて期初計画通りに進行することが難しい環境にあり、香港のデモ、米中貿易摩擦を契機とする経済情勢の悪化、日韓関係の悪化、台湾の総統選による消費低迷などがマイナス要因となった。
欧米においては、依然として厳しい状況ながら業績回復に向けた取り組みを行なった。北米では新規取引先の開拓が奏功し、ライセンス事業が堅調だった。欧州では12月に新COOが着任し、セールス体制の強化、法務部門の整備に着手した。
セグメント毎の詳細は以下。
日本
物販事業のリテール部門では、年始の福袋や当りくじと、2020年に45周年を迎えた「マイメロディ」のバースデープロモーションが、サンリオショップや百貨店の特設会場などで好調に推移しし、売上に貢献した。2月上旬までは順調に客数も伸長したが、それ以降は新型コロナウイルス感染症の影響により消費が落ち込んだ。
購入者と従業員の安全確保の観点から、路面店を臨時休業したが、当期累計の既存店売上(直営店及び百貨店の直営ショップベース)は前期比3.8%増となった。
卸部門では、インバウンド需要の減少により店頭売上は苦戦したが、ドン・キホーテやイオン、Amazonへの売上で前期を大きく上回ったことで、前期比4.0%増と、物販事業全体の売上に貢献した。
ライセンス事業の商品化権ライセンスでは、年間を通じて、天候不順などにより、アパレル全般で苦戦を強いられる一方、キャラクターのワイド展開も好調だったことで、アニメ・デジタル事業も伸長した。
当第4四半期連結会計期間についても、前半は家庭用品や玩具などを中心に好調だったが、2月以降は、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受け、海外製造の停滞並びに売り場の縮小、消費者マインドの低迷により、売上が伸びなかった。
対企業企画では、年間を通じて自治体への取り組みや大型広告宣伝の強化を進めるとともに、出版部門の体制を変えることで、より利益体質への強化をはかった。
当第4四半期連結会計期間には、三菱UFJニコス株式会社のクレジットカードに「シナモロール」、交通系電子マネーでは西日本旅客鉄道株式会社の「ICOCA」に「ハローキティ」、首都圏の私鉄・地下鉄を中心に利用可能な「PASMO」に複数キャラクターのデザインが採用されるなど、金融系カードの新規発行によるロイヤリティが売上に貢献した。
テーマパーク事業では、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、2月22日より臨時休園したことで、東京都多摩市のサンリオピューロランドは、入園者数が132万人(前期比9.3%減)と前期比で減少した。臨時休園前までの状況は、年間を通じて若い女性向けにSNSを使った情報発信の実施などで、入園者数は前年同期比3万人増(前年同期比2.4%増)と好調に推移していたが、休園に伴うチケット販売中止の他、イベント開催に伴う人件費や、4月にリニューアルオープンした館のレストランなどの設備改修などの経費増加などがあり、減収減益となった。
大分県のハーモニーランドは、入園者数が42万人(前期比9.0%減)と前期比4万人減少した。上半期は、夏季に長雨や台風の影響があったが、入園者数は前年同期を上回った。下半期に関しては、企業の会員企画や「ハロウィンナイト」や「サンクスパーティ」など各イベント開催日の集客も堅調に推移し、1月までの累計でも、前年同期を上回って推移したが、臨時休園の影響で、前期の入園者数に届かない結果となった。
セグメント全体では、主に海外子会社からのマスターライセンス料の低迷などが大きく影響し、減収減益となった。
上記の結果、売上高430億円(前期比4.7%減)、営業利益17億円(同52.6%減)だった。
欧州
前期に計上したミニマムギャランティ未達金による売上計上額が大きく、その減少分をカバーするには至らなかったが、欧州子会社が管轄している、オセアニア、南アフリカ、イスラエルといった地域がアパレルを中心に拡大したことに加え、欧州主要国においてもアパレル、雑貨関連の回復の兆しがみえてきたことで、対前期の下げ幅を小さくすることができた。
「ミスターメン リトルミス」を扱うイギリス子会社Sanrio Global Ltd.については、主要市場である欧州において、ヘルス&ビューティやアパレルが苦戦したことに加え、中国事業の展開が想定通りに進まなかったこともあり、売上が伸びなかった。
上記の結果、売上高14億円(前期比17.3%減)、営業損失5億円(前期は営業損失3億円)だった。
北米
ライセンス事業では、マスリテーラー向けの展開が伸び悩んだが、OPIやLevi’s、PUMAなどのコラボレーション展開や、Ulta、Cost Plusといったスペシャリティリテーラーなどの流通開拓が奏功し、売上を下支えした。キャラクター構成としては、「アグレッシブ烈子」の売上が伸長し、カテゴリーとしてはゲーム・ソフトウェアが大きく伸長した。
物販では、EC部門が好調も、中南米向け出荷の減少や倉庫機能アウトソースに伴うシステム障害等により減収となった。また、前期からのリストラにより、人件費は大幅に削減された一方、ハローキティ45周年施策などマーケティングへの投資や物流アウトソーシングに伴う費用が予定を上回ったこともあり、損失の縮小が進まないという結果になった。
上記の結果、売上高26億円(前期比2.0%減)、営業損失11億円(前期は営業損失10億円)だった。
南米
現地通貨ベースでは微減収だったが、レアル安が大きく影響した。
メキシコではヘルス&ビューティなどを中心によい動向があったが、ブラジルではアパレルなどが苦戦した。
上記の結果、売上高5億円(前期比10.1%減)、営業利益1900万円(同14.0%増)だった。
アジア
香港・マカオでは、デモなどによる社会騒乱により店頭集客が伸びず、ライセンス主力取引先が軒並み大幅な売上減となった。
東南アジアでもフィリピンを除く地域で弱含みとなり、ベトナムでは、現地テーマパーク開園の遅れにより売上が苦戦したほか、日用品やコスメ関連が苦戦したタイ、シンガポール、マレーシアでも売上が伸び悩んだ。フィリピン、インドネシアでは、売上の伸びは緩慢でしたが、取引先数が拡大した。
台湾では、家電カテゴリーで堅調な拡大がみられたが、主力カテゴリーである企業キャンペーンやアパレルの売上縮小や、前期にテーマパーク関連での一時的な売上の計上があったことの影響で減収となった。
韓国では、日韓関係を背景とした商談中止や商品展開の縮小の影響が大きく、商品化権の主力ライセンシーが伸び悩んだ。キャラクターとしては、キャラクターを複数使ったデザインをはじめ、マイメロディやシナモロールなどの売上を伸ばしたが、ハローキティや、アニメ人気が落ち着いてきた「リルリルフェアリル」の売上減少をカバーするには至らなかった。
中国では、新規取引先の開拓を進め、ライセンシー数を増加したが、米中貿易摩擦を契機とする経済情勢の悪化や、映画コンテンツをはじめとした競合IPの進出に伴う既存大手ライセンシーの落ち込みをカバーするには至らなかった。
上記の結果、売上高76億円(前期比15.0%減)、営業利益28億円(同18.9%減)だった。