立体映像を使って、あたかも自分がそこにいるかのようなリアリティを体感することができる3DVRの世界。その世界をスマートファンを使ってリーズナブルに、そして手軽に楽しむことができることで注目を集めている3D VRビューアーが、タオソフトウェアの『タオバイザー』だ。
▲『タオバイザー』は組み立て式のキット構成となっている。とはいえ小学生でも時間をかけずに作れるほど簡単なものなので工作が苦手ない人でも問題ない。
『タオバイザー』クラウドファンディングサイト
⇒ https://motion-gallery.net/projects/taovisor2
『タオバイザー』は、インターネット経由で出資者を募るクラウドファンディングを利用して製作。1回目のクラウドファンディングでは目標金額の達成率は274%にもおよび、現在行われている2回目も順調に支援者の数を伸ばしている。また、『ABC 2014 Winter』では出張販売も実施。絶えず購入希望者が姿を現す大盛況のなか、販売場所となった東海大学高輪キャンパスの一室で、ハードの開発者であるkinneko氏と対応ソフトウエアの開発者であるタオソフトウェアの谷口 岳氏に、『タオバイザー』についてさまざまなお話を伺ってきた。
▲『タオバイザーホームアプリ』を開発した谷口氏(左)と本体を開発したkinneko氏(右)。『ABC 2014 Winter』の最中でお忙しいにも関わらず、御二方とも快くインタビューに応じてくれた。
――そもそも、なぜ3D VRに注目したのでしょうか?
kinneko氏 最近になって注目したわけではなく、昔から興味をもっていたんですよ。でも3D VRはかなり昔からブームのようなものが繰り返されてましたよね。さまざまな開発者やメーカーが力を入れるんですが、流行りかけては廃れてと。その要因のひとつにはやはり、3D VRを体感するための機器が高価であったりPC環境を整える必要があったりと、決して手軽なものではなかったことだと思うんです。すごく面白いのに、広く受け入れられないのはもったいない。そこでもっと安価で体感機器を作れないかと考えた結果、Android端末が技術的に追いついてきていて、使えるかなと思ったわけです。
谷口氏 Android端末には3D VR機器に必要とされる加速度センサやバッテリーが内蔵されているので、あとはビューアーとなるものさえ作ればいいだけですからね。
――ビューアーだけであれば、基本的にレンズ2枚あれば作れますからね。
kinneko氏 そうですね。それで誰もが素材を手に入れやすい100円ショップで材料を揃え、『FakeRift』という自作3D VRゴーグルを作ったんですよ。安価で作ることを目指したものの、かなり試作を繰り返したので、現在の形になるまでかなり費用がかかってしまったんですけどね(笑)。
▲主たる部分を100円ショップのグッズで製作した『FakeRift』。ジェットコースターを疑似体験できるデモプレイが行われ、多くの来場者が3D VRの楽しさを実感していた。
――それが『タオバイザー』のベースになっているんですね。その『FakeRift』から、なぜ『タオバイザー』を作るに至ったのでしょうか?
谷口氏 私自身、ソフトの面から3D VRにすごく興味をもっていたんです。しかし、対応ソフトを作るにしても開発段階で視認するのに3D VR機器が必要ですよね。先ほどKinnekoさんが仰っていたとおり、その環境を整えるだけでも費用的に厳しいものがありました。そんなときに『FakeRift』の存在を知って、すぐさま連絡を入れたんです(笑)。
kinneko氏「『FakeRift』の簡単組み立てパッケージを作りましょう」というお話をいただいて、谷口さんがすごく3D VRに関して熱心であったこともあり、一緒に『タオバイザー』を作ることになったんです。
谷口氏 3D VRに興味があるけど開発環境に困っている開発者は多いと思うんです。少しでもそんな人たちの助けになり、3D VRの市場がもっと盛り上がればいいと考えていたので、絶対に実現させたかったプロジェクトでしたね。それと同時に安価なビューアーがあれば、もっと多くの人が手軽に3D VRを体感することができるようになりますから。
――開発者とユーザーの両方が盛り上がれば、必然的に市場は拡大していきますからね。製作時に気を使った点はどんなところでしょうか?
谷口氏 開発者が使うということから、材質には気を配りましたね。同じく安価なビューアーでダンボール製のものがありますが、アプリの開発中などに何度も着け外ししていると、すぐにボロボロになってしまうんです。そういった理由から、『タオバイザー』では、軽量で強度もあるエフセルという素材を使用することにしました。
kinneko氏 あとは3D VRを体験してもらってわかったのが、日本人は意外に目の間隔の個人差が大きいということですね。そのため目の間隔調整機能もつけるようにしました。そうそう目といえば、眼鏡をかけたままでも使えるのが『タオバイザー』の大きな特徴でもあるんですよ。ほとんどの3DVRビューアーは眼鏡を外さないと使用できませんからね。
▲『タオバイザー』本体にスマートフォンを差し込んで使用。できるだけ多くの機種に対応できるような構造となってはいるが、一部、対応していないスマートフォンもあるので注意を。
――なるほど。そのような工夫から『タオバイザー』が完成を遂げたわけですが、1回目のクラウドファンディングを終えて、支援者からの反応はいかがだったのでしょうか?
谷口氏 もちろん細かな要望は個々にありましたが、概ね好評でしたね。反響としてもっとも大きかったのは、支援者の方々よりも、手に入れられなかった方々でして。「どこで買えるのか?」といった質問がかなり多く寄せられましたね。
――実際のところ、今回のような出張販売は続けられるのでしょうか?
谷口氏 続けてはいきたいのですが、在庫しだいになってしまいますね。できるだけ多くの人に3D VRを体験してもらうのがテーマでもありますから、いろいろな方法を模索してはいます。
――ところで『タオバイザーホームアプリ』はどのようなものなのでしょうか?
谷口氏 より便利にタオバイザーを使用することをコンセプトに開発したアプリです。『タオバイザー』使用中はタップでの操作はできなくるので、このアプリ上では頭を左右に動かして、タップしたいところを向くような感覚でホーム画面上のアプリを起動できるようになっています。また、3D VRの世界ではこんなことができるというサンプルを用意していますので、ぜひ体感していただきたいですね。開発者の方々にとっては、こんな使い方もあるというヒントになれば嬉しいです。
――今後もアップデートなどを予定しているのでしょうか?
谷口氏 はい。また新たに3D VRを使ったアイデアが貯まってきたら、アップデートなどでそれを体験できるものを追加していく予定ですね。どのような形でアプリを進化させていくかは、これからじっくり考えていきたいと思います。
『タオバイザーホームアプリ』ダウンロードはこちらから
⇒ https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.co.taosoftware.android.taovisor
――最後に『タオバイザー』の今後の予定についてお聞かせください。
谷口氏 現状はまだ2回目のクラウドファンディングの途中ですし、正直なところ『タオバイザー』の今後の展開はまだ考えていないんですよ。『タオバイザーホームアプリ』もそうですが、一段落して今後の予定が決まりましたらなんらかの形で告知していきますので、今しばらくお待ちください!
お忙しいなか、貴重な時間をいただきありがとうございました。まだまだ今後の展開が楽しみな『タオバイザー』。続報が入りしだいご紹介してくのでお楽しみに!