2024年には中国が日本のマンガ市場を追い越す?中国のマンガ市場が電子コミックを中心に市場規模を拡大中。
2018年は世界的に電子書籍が大躍進の年であった。
日本では「ワンピース(出版:集英社)」「進撃の巨人(出版:講談社)」などの長期連載作品をはじめ、「キングダム(出版:集英社)」や「僕のヒーローアカデミア(出版:集英社)」「はたらく細胞(出版:講談社)」など、アニメや映画化のメディアミックスがさかんに行なわれた作品が注目を集め、市場規模は4367億円に成長した。
中国においては、紙コミックに代わり電子コミック市場が台頭し、アニメ化など日本でも同じようにメディアミックスによって国内で支持を受けた作品があった。さらに、市場規模が年々増加したことで2018年には2596億円超もの市場に成長した。
アメリカでは、Marvel ComicsやDC Comicsに登場するキャラクターを扱った映画が国内外でヒットしたことにより、原作コミックが注目を集めたが、マンガ市場はほぼ横ばいに推移した1177億円という規模だった。
本記事では、日本と比較する形で、電子コミックが盛んな中国、国内外で人気のアメコミを出版するアメリカの3か国のマンガ市場の比較記事を紹介する。
日中米では日本のマンガ市場が最も大きく4300億円
日本のマンガ市場については、映画やアニメ、舞台など多様なメディアで展開された人気作をはじめ、現代の趣味の多様化にあわせて様々なテーマのマンガが刊行された。
数年前までは紙コミックが主流であったが、スマートフォンの普及や各出版社が提供するマンガアプリの影響で電子コミックが急速に注目を集め、新作マンガだけでなく過去作品の再販などで、電子コミックの利用者が増加。近年の日本のマンガ市場は紙コミックの売上が徐々に減少していたが、その分を電子コミックの売上が伸長、支えたことで、2014年から2018年までの5年間は4300億円で横ばいとなっている。
アメリカにおけるマンガ市場の規模は、1100億円ほどと日本の3分の1程度であり、国土や人口の多さに比べて市場が小さいという特徴がある。日本の市場調査会社の発表によると、2007年までは2000億円前後の市場規模だったがその後も徐々に落ち続け、2012年には650億円ほどの市場規模になってからは、現在は徐々に回復傾向にあり、2014年からの5年間は日本と同じく横ばいに推移した。アメリカの市場は、後述するが日本のような複数の出版社がマンガを出版しているのではなく、人気マンガ出版社Marvel ComicsやDC Comicsから刊行される「スパイダーマン」や「スーパーマン」などの人気ヒーローマンガシリーズに依存している。
中国に関しては、2014年から右肩上がりに成長しており、2014年と2018年を比較すると1.75倍ほどに伸長。2018年の市場規模は2596億円と日本市場の半分ほどの規模に成長した。
この急激な中国市場の成長を支えたのは電子コミックだ。
電子コミックは、2014年の中国では市場の20%ほどの占有率であったが、スマートフォンやウェブマンガサイトなどの認知が拡大したことで、利用者が増加。多様な作品がウェブサイトでみられるということから、2017年頃から紙と電子コミックの利用比率が逆転し、2018年には市場の80%を電子コミックが占めるようになった。
今後も中国のマンガ市場が右肩上がりに成長を続け、日本とアメリカが2014年からの5年間と同じく横ばいに推移するのであれば、2024年頃には中国のマンガ市場が日本のマンガ市場を超えることも考えられる。
日米中の主なマンガ出版社
日本では、株式会社集英社や株式会社講談社、株式会社KADOKAWAをはじめとする多数の出版社がマンガを刊行している。アメリカではMarvel ComicsやDC Comicsの2大マンガ出版社が主にマンガを刊行しており、後述するマンガランキングをみると、2社が市場の大半を占めているというのがうかがえる。
中国の出版社に関しては、マンガをメインにしているところが少なく、子ども向けの絵本や学習教材、アート系の書籍を出版している企業が刊行している。さらに、中国においては紙コミックよりも、電子コミックが圧倒的に読まれているため、ウェブマンガサイトの運営も好調だ。
次は日本とアメリカ、中国の主なマンガ出版社を紹介する。
日本
株式会社KADOKAWA 公式サイト
「新世紀エヴァンゲリオン」や「デュラララ!!」「キノの旅」「涼宮ハルヒ」といったマンガやライトノベル、一般書籍、雑誌など多種多様な書籍を扱う出版社。
海外などにおいては、中国の上海に子会社を設立しており、マーケティングや各種作品の輸出入を行なっている。
株式会社集英社 公式サイト
「ドラゴンボール」や「スラムダンク」「ワンピース」など、国内外問わず幅広い世代に人気の作品を出版している。中国への出版に関しては現地法人を設立せずに、エージェント企業を通して行なっている。
フィギュアなどの出版物以外に関しては、2019年6月よりバンダイナムコホールディングスと共同で、集英万夢(上海)商貿有限公司を設立した。この会社では、マンガ原作の版権作品の企画、製造、販売、版権ビジネスや出資等を行なっている。
株式会社講談社 公式サイト
「五等分の花嫁」や「進撃の巨人」「あひるの空」など、アニメ化や映画化された注目作品を出版する企業。2005年には中国北京に子会社の讲谈社(北京)文化有限公司を設立し、マンガや雑誌、小説などを中国の現地法人を通じて出版している。
アメリカ
Marvel Comics 公式サイト
マンガのほか、映画やドラマ、出版、ゲーム、テーマパークなどの幅広い事業を展開している企業。日本でも有名な「スパイダーマン」や「ホークアイ」「デッドプール」など、人気キャラクターを題材にしたマンガや小説を出版する。
DC Comics 公式サイト
上記のMarvel Comicsと同じく、映画やドラマ、出版、ゲームなどの事業を、アメリカを中心に展開する出版社。代表作には「バットマン」や「スーパーマン」「アクアマン」「グリーン・ランタン」など、アニメ化や映画化された作品。
Hyperion Books 公式サイト
1991年にウォルト・ディズニー・カンパニーのグループ出版として設立され、現在はニューヨークに本社を構える企業。マンガも刊行しているが、主に児童向けの書籍や青年向けの小説を出版している。
中国
中国连环画出版社 公式サイト
1985年3月に設立され、1998年に中国美術出版株式会社の子会社になった出版社。主に子供向けの書籍やマンガを提供しており、集英社の「BLEACH」や「NARUTO」「テニスの王子様」の翻訳出版を行なった。
浙江人民美術出版社
1980年1月に設立され、1992年に国家報道出版局と労働人事部から優れた書籍出版会社のひとつに選出された出版社。アート系や中国の文化に関する書籍を中心に子供向けの書籍を出版し、集英社の人気作品「ワンピース」の翻訳出版も行なった。
快看世界(北京)科技有限公司 公式サイト
また、中国では出版社以外にも、快看世界(北京)科技有限公司提供の「快看漫画」を中心に、日本でも知られるテンセント提供の「騰訊動漫」、weibo提供の「微博動漫」など、中国大手企業が運営するコミックサイトも人気を博している。各サイトによって掲載作品が異なっていることから、日々数多くのマンガ作品が生まれていることがうかがえる。
このように各国の出版社では自国内への出版をはじめ、海外の向けた書籍出版、翻訳、電子コミックの提供などを行なっている。
2018年各国の人気マンガランキング 日本では「ワンピース」が上位3位を独占
日本のマンガ市場では、「ワンピース」や「進撃の巨人」など少年マンガの販売が好調。TOP10すべてをみても、少年向けマンガ雑誌で長期連載されている作品という結果になった。日本における市場では、紙と電子コミックをあわせたランキングを紹介する。
アメリカのマンガ市場においては、Marvel ComicsとDC Comicsが刊行する作品がランキングを独占。どの作品も日本でも知名度が高いキャラクターが登場する。アメリカも日本と同じく、紙と電子コミックをあわせたランキングを紹介。
中国においては女性向けマンガが多く読まれ、日本とアメリカの男性向けマンガとはまた異なった結果となった。中国においては、市場の80%を電子コミックが占めているため、中国で最も利用されているウェブコミックサイト「快看漫画」のランキングを紹介したい。
日本
「オリコン 2018年年間本ランキング マンガ部門」の発表によると、「ワンピース」の続巻88巻、89巻、90巻が上位3位を独占。続く4位以降は「進撃の巨人」24巻、25巻がランクインした。
1位:ワンピース 88 (Amazon作品ページ)
2位:ワンピース 89 (Amazon作品ページ)
3位:ワンピース 90 (Amazon作品ページ)
4位:進撃の巨人24 (Amazon作品ページ)
5位:進撃の巨人25 (Amazon作品ページ)
6位:進撃の巨人26(Amazon作品ページ)
7位:HUNTER×HUNTER 35(Amazon作品ページ)
8位:HUNTER×HUNTER 36(Amazon作品ページ)
9位:キングダム 50(Amazon作品ページ)
10位:キングダム 49(Amazon作品ページ)
アメリカ
コミック調査会社「comichron」の発表によると、2018年売上ランキングの1位を「Action Comics #1000(出版:DC Entertainment)」が獲得。この作品は、DC Comicsの人気キャラクターのひとりである「スーパーマン」のストーリーを描いた物語だ。
2位は日本でも人気のキャラクター「スパイダーマン」が登場する「Amazing Spider-Man #800(出版:Marvel Comics)」、3位が1位と同じく「バットマン」の作品である「Batman #50(出版:DC Entertainment)」であった。
以下4位には「Fantastic Four(出版:Marvel Comics)」、5位には「Amazing Spider-Man(出版:Marvel Comics)」と全世界で映画が公開され、話題になったキャラクターの作品がランクインしている。
その他にランクインした作品に関しても、Marvel ComicsとDC Comicsが発行する作品が、ランキングの大半を占めていることから、アメリカにおけるマンガ市場はほぼこの2社が支えていることがうかがえる。
1位:Action Comics #1000 (出版:DC Comics Amazon作品ページ)
2位:Amazing Spider-Man #800 (出版:Marvel Comics kindle版ページ)
3位:Batman #50 (出版:DC Comics kindle版ページ)
4位:Fantastic Four #1 (出版:Marvel Comics kindle版ページ)
5位:Amazing Spider-Man #1 (出版:Marvel Comics kindle版ページ)
6位:Return of Wolverine #1(出版:Marvel Comics kindle版ページ)
7位:Venom #1(出版:Marvel Comics kindle版ページ)
8位:Amazing Spider-Man #798(出版:Marvel Comics kindle版ページ)
9位:Batman Who Laughs #1(出版:DC Comics kindle版ページ)
10位:Amazing Spider-Man #799(出版:Marvel Comics kindle版ページ)
中国
中国の市場については、市場の80%を電子コミックが占めるため、電子コミックのランキングとして快看世界(北京)科技が運営する中国大手ウェブコミックサイト「快看漫画」における年間のコメントランキングを紹介。
1位には少女向け恋愛マンガ「怦然心动」、2位は恋愛ファンタジーマンガ「甜美的咬痕」、3位は女子高生が主人公の少女マンガ「朝花惜时」がそれぞれ人気だった。どの作品も女性向けの恋愛作品という、日本で人気の少年向け作品とはまた異なった作品となった。
1位:怦然心动 (作品ページ)
2位:甜美的咬痕 (作品ページ)
3位:朝花惜时 (作品ページ)
4位:零分偶像 (作品ページ)
5位:河神大人求收养 (作品ページ)
6位:到只小狐狸 (作品ページ)
7位:女巨人也要谈恋爱 (作品ページ)
8位:我男票是锦衣卫 (作品ページ)
9位:整容游戏 (作品ページ)
10位:同学关系? (作品ページ)
※リンクはすべて海外サイト:中国語
まとめ
日本においては紙コミックの売上が減少し、電子コミックが増加していることから、マンガ市場に参入するのであれば、売上が減少している紙コミックを出版するより、在庫を抱える必要がなく、デジタル環境で制作から配信までが一貫で行える電子コミックの方が現実的だ。
さらに、今後、マンガ市場が近年と同じような成長率で推移するのであれば、中国の市場が、日本の市場をも追い越すのではないかと予想される。
中国の市場においては、国が海賊版の取り締まりを強化していること、電子コミックに携わる企業や出版社などの競争激化によって、投資が盛んに行なわれ、良質な作品が生まれやすい土壌が整ってきていることから、中国から世界に知れ渡る作品が登場する日が来るのは、そう遠くないのかもしれない。
※10月8日、画像が正しく表示できない箇所があったため、内容を一部修正しました。
関連サイト
以下のサイトを参考に制作しました。
全国出版協会・出版科学研究所
第43回中国インターネット発展状況統計報告
オリコンニュース公式サイト
Comichron(海外サイト:英語)
当当網(海外サイト:中国語)
快看漫画(海外サイト:中国語)