テーマパークの休園や店舗の閉鎖などが国内外で発生。EC事業やエンターテイメント関連の商品化は好調に推移。
株式会社サンリオ(以下、サンリオ)は、2021年3月期決算短信(連結)を5月14日(金)に発表した。当連結会計年度の連結経営成績は、売上高410億5300万円(前期比25.7%減)、営業損失32億8000万円(前期は営業利益21億600万円)、経常損失17億3100万円(前期は経常利益32億7400万円)、親会社株主に帰属する当期純損失39億6000万円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益1億9100万円)だった。
経営成績に関する説明
日本
物販事業のリテール部門は、年末年始と初売りの機会に、各商業施設が実施した感染症拡大防止対策により、集客が減少したことで売上に大きく影響し、その後も集客が不安定となる社会環境となり、苦戦が続いた。
一方のEC事業では、引き続き堅調に推移し、第4四半期における客数も毎月1万人以上増加(3月末の総会員数は前年比162.9%)、売上は前年同期比147.0%と大幅に伸長した。
卸部門においては、キッズアイテムの納品は苦戦したが、前髪クリップや、「エンジョイアイドルシリーズ」など、学生や大人向け商品が販路を広げたことや、季節商品の返品減などで、第4四半期売上は前年同期比108.4%と好調に推移した。商品では、『こぎみゅん』『マイメロディ』『はぴだんぶい』のキャラクタープロモーションや、当りくじ、マスクなどの衛生用品が人気を集めた。また、『ポムポムプリン』が25周年を迎えたアニバーサリー記念として、2月に新宿高島屋にて、新型コロナウイルス感染症の拡大防止策を講じつつ、ポップアップショップを開催した。
ライセンス事業の商品化権ライセンスでは、第4四半期も引き続き新型コロナウイルス感染症拡大による影響が大きく、銘菓やインバウンド向け菓子、観光地向け雑貨などが苦戦したが、「ユニクロ」や「ハニーズ」などの衣料系チェーンで春物衣料の導入が促進されたことで売上が大きく伸びたそうだ。巣ごもり需要も旺盛で、クッションなどといったインテリア雑貨も堅調に推移した。
対企業企画では、外務省や栃木県警察などの官庁や山梨県、東京都、岡山県総社市といった自治体など、公的機関との成約が順調だったことに加え、西濃運輸株式会社や株式会社ハウスメイトパートナーズなどとの新規広告宣伝契約も多大なる貢献をした。
エンターテイメント事業本部における第4四半期の実績は、予算比と前期比で二桁の伸びとなった。商品化権ライセンスは、任天堂株式会社のNintendo Switch向け「どうぶつの森 amiiboカード」へのサンリオキャラクター供与をはじめとし、株式会社セガ、フリュー株式会社、株式会社バンダイ、株式会社タカラトミーアーツなど、各企業との契約によるプライズやカプセルトイの商品化など、エンターテイメント関連の商品化がとても好調に推移した。
また、デジタルビジネスについては、「LINE」や「ココネ」などのゲームやデジタルコンテンツへの継続的なライセンス供与に加え、新規取引先の積極的な開拓により、株式会社 coly、BIGO TECHNOLOGY PTE. LTD.など現在成長著しいデジタル企業との新規取引を獲得した。
アニメ関連ビジネスにおいては、「アイドルマスター」などとの様々なコラボレーション案件が売上に貢献した。また、他社IPのデザインプロデュース商材がアパレル量販中心に拡大し、引き続き有力なデジタル企業とのグローバル展開を推進すると共に、『こぎみゅん』や『BEATCATS』などの新規キャラクターの育成・強化に注力する。
テーマパーク事業では、東京都多摩市のサンリオピューロランドが、東京都の2回目の緊急事態宣言発令の影響を受け、第4四半期の入園者数17万1000人(前年同期比2万2000人減、11.6%減)、通期では45万3000人(前期比87万1000人減、65.8%減)という結果になった。12月7日から開業30年目を迎え「30th Anniversary Parade「Hello, New World ~虹を、つなごう」を開催したところ、好評を博し、売上にも貢献したという。6月からは自社及び他社コンテンツのデジタル配信やオリジナル商品の通信販売などの施策を行なうとともに、販促費や広告宣伝費等を削減したが、大幅な営業損失になった。
大分県のハーモニーランドは、11月には入園者数が前年同月比87%まで回復したが、近隣県の緊急事態宣言発令の影響もあり、第4四半期の入園者数は4万8000人(前年同期比1万人減、17.2%減)、通期では17万6000人(前期比25万2000人減、58.8%減)となった。2021年4月に開園30周年を迎えるため、感染防止に留意しながら集客の回復につとめる(※サンリオピューロランドは2020年2月22日~7月12日、ハーモニーランドは2020年2月22日~6月7日まで臨時休園だった)。
上記の結果、売上高は315億円(前期比26.7%減)、営業損失は29億円(前期は営業利益17億円)だった。
欧州
新型コロナウイルス感染症拡大の影響によるロックダウンで休校が相次ぎ、学童用品をはじめとしたライセンシーの落ち込みが大きく業績に影響を与えた。
一方で、スペインの大手アパレルメーカーとのグローバル規模のコラボレーションやフランスのラグジュアリーブランドとのコラボレーションが貢献し、前期に対する下げ幅は比較的小さくすることができた。
『ミスターメン リトルミス』に関しては、重要カテゴリーである出版ライセンスが堅調に推移した他、香港でも常設店舗をオープンし、スマートフォンケースやイヤリングなどを販売している。
上記の結果、売上高12億円(前期比17.6%減)、営業損失3億円(前年同期は営業損失5億円)となった。
北米
ライセンス事業では大手消費財メーカーとの契約未更新が響き、前期に行なった『ハローキティ』45周年関連の大型コラボレーションをカバーする結果には至らなかったという。
物販事業では、新型コロナウイルス感染症拡大による店舗閉鎖の影響で苦戦しているが、EC事業については成長を続けているとのこと。11月には大手EC事業者と提携し、取扱商品数の増加にも取り組んでいるという。
上記の結果、売上高21億円(前期比18.1%減)、営業損失11億円(前年同期は営業損失11億円)となった。
南米
生理用品をメインで扱う事業者との取り組みが好調な半面、新型コロナウイルス感染症の爆発的な流行により、多くの取引先において苦戦が強いられたという。小売店閉鎖による在庫の増加が影響し、全体的に売上が減少傾向にあるとのこと。
また、2020年2月以降進んでいるレアル安による為替差損の影響もあるそうだ。
上記の結果、売上高3億円(前期比39.4%減)、営業利益700万円(同62.2%減)だった。
アジア
香港・マカオでは、モール装飾などが苦戦した。生活必需品関連の売上は増加傾向にあるが、主要取引先の時短運営や閉鎖による売上不振が大きく響いている。
また、東南アジアにおいても、最大のパートナーであるタイの百貨店が一時休業になるなど、厳しい状況が続いている。
台湾では、新型コロナウイルス感染症の抑え込みに成功しており、コンビニや百貨店とのプロモーション案件を獲得することができた。一方、中国で製造を行っている大手取引先の開発が一時停止するなど、商品化については苦戦した。
韓国では、テレビショッピングをメインの販路としている主要取引先が好調な一方、その他の取引先の新型コロナウイルス感染症による影響をカバーすることができなかった。ゲームアプリとのコラボレーションに関しては、相変わらず好調で、継続的に取り組みを行なっており、メッセージアプリでのスタンプ売上も伸長している。
中国では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、アクセサリーカテゴリや学童用品、玩具が苦戦した一方で、大手スポーツ用品メーカーとの大型コラボレーションを行なったほか、ヘルス&ビューティカテゴリの売上も堅調に推移し、前期に対する下げ幅は比較的小さく抑えることができた。
上記の結果、売上高58億円(前期比23.4%減)、営業利益19億円(同31.9%減)となった。