舞台上に「いろは坂」がみえる……! 役者と演出ががっちりとハマった2.5次元ミュージカルの進化を体感。
コミックの累計発行部数1,700万部を突破した大人気自転車ロードレース漫画「弱虫ペダル」。様々なメディアミックスで盛り上がっているこの作品を題材にした舞台「『弱虫ペダル』新インターハイ篇~ヒートアップ~(以下、ペダステ)」の公演が、10月19日(木)より東京でスタートした。
この舞台は、マンガを原作とした2.5次元ミュージカルとも呼ばれるもので、2017年2月~3月にかけて上演された舞台「『弱虫ペダル』新インターハイ篇~スタートライン~」の続編にあたり、原作でいうと2年目のインターハイが開幕し、その1日目の様子をを2時間の舞台に凝縮したものだ。
主人公・小野田坂道(醍醐虎汰郎)が所属するチーム総北(千葉県立総北高校)をはじめ、最強のライバルであるチーム箱学(私立箱根学園高校)や、不気味な御堂筋翔(林野健志)が率いるチーム京都伏見(京都伏見高校)など、これまでも激闘を繰り広げてきたチームと、デッドヒートを繰り広げて、キャラクターたちの成長やチームの結束が深まる様子を楽しめる。
というほど、今回の公演はゆったりとしていられないようだ。なぜなら上演開始から瞬く間にレースが始まり、そこから2時間、場面を変えながら熱い激闘が繰り広げられ続けるからだ。
息をつく隙もないほど続くバトルシーンに「激しすぎるのは疲れるかも……」と敬遠してしまう方もいるかもしれないが、そこは心配ご無用。いや、確かに疲れてしまうかもしれないが、時間の経過を忘れるほど舞台に引き込まれて、物語に没頭して楽しめる。今回の『ペダステ』は素晴らしい舞台だった。
そのひとつは、間違いなく西田シャトナー氏の斬新な演出だろう。
傾斜がついたスロープ型の舞台装置をシーンに応じて、回転配置することで、レース道中のコースに変化をつけたり、選手間に高低差を付ける演出が、舞台上に坂を浮かびあがらせていた。特に今回の物語は山岳ステージが舞台となるシーンがあり、観光地としても知られる「いろは坂」が劇中に登場したが、このいろは坂のつづら折りが、舞台装置の移動とともにはっきりと舞台上にみえたのには驚いた。この演出と役者たちのキャラクターに入り込んだセリフの力強さが相まって、序盤から物語に引き込まれ、すっかりと楽しんでしまった。
この舞台装置の移動はパズルライダーと呼ばれる専門スタッフが行なっているとのことだが、彼らは場面によって、レースの観戦者や、レースに参戦するその他大勢も演じる。この舞台を支え成功させるには欠かせない存在といえるだろう。もちろん、演技をしている役者はもちろんだが、照明・音響など、ほぼ完璧に息のあったステージで、現在の2.5次元ミュージカルのレベルの高さを目の当たりにできた。
2017年7月にフランスで開かれたJAPAN EXPOでも舞台『ペダステ』は大喝采を受けたとのことだが、それも納得。新しい舞台として、これから盛り上がるのは間違いない。
題材が自転車レースということもあって、原作を読んだことがない人でも楽しめるシンプルなストーリー。入り組んだ人のつながりやキャラクター個々の性格に関しても、役者陣が個性のある演技で表現しているので、抵抗なくすんなりとはいりこめる。また、最初はロードレーサーのハンドルだけ持っている役者たちに違和感を感じるかもしれないが、実際に生でみるとスピード感と迫力の籠った熱のある演技で気にならなくなるはずだ。
新しいエンターテインメントとして、これからますます定着していくだろう2.5次元ミュージカル。体験していない人は、ぜひ体験してみて欲しい。
最後に、オフィシャル会見に参加したメインキャラクターを演じた俳優陣のコメントを紹介しよう。
鳴子章吉役:百瀬朔
「観にきたお客様がお客様が帰るときに楽しかったな、リフレッシュできたなと思ってもらえたら最高だと思います。そのために僕らは必死に(ペダルを)回しますので、その姿を少しでも良かったな、と思ってもらえたら嬉しいです。楽しみにきてください」
泉田塔一郎役:河原田巧也
「腹の底から声が出て気持ちがむき出しになっていく作品です。それをペダリングという負荷がかかる中で出さなきゃいけなかったりと、この作品を通じて得るものが多くて毎回勉強をさせていただいてます。今回は新しいメンバーの加入や、前回出場したメンバーも大きくなってきているので、一味違う舞台に大きな期待をしてもらえればと思います」
今泉俊介役:和田雅成
「『弱虫ペダル』に、明日の生きる活力をもらってます。その活力を舞台上で表現して、観てくださったお客様に“強く生きよう”と思ってもらえるように頑張ります」
葦木場拓斗:富永勇也
「明日からの日々の活力になれば嬉しいと思います。精一杯頑張ります!」
御堂筋翔役:林野健志
「稽古に挑みながらずっと考えていたのが、この舞台は自分がアスリートになった気分でキャラ作りをして、気持ちもインターハイが始まるぞ、とレースにのぞんできました。レースの結果や勝負の駆け引きを楽しんでもらえたらと思います」
小野田坂道役:醍醐虎汰郎
「今回の舞台は最初からレースシーンで、『弱虫ペダル』ならではの熱量やバイブレーションなど、より多く伝えられることができる作品になってると思います。その熱量をお客様に観てもらって“すごいな”とか、普段の生活でもこの舞台をみたことで変わってくれることがあったら嬉しいと思います。また、前回は初舞台初主演でしたが、今回は初めてじゃないので、もっと成長した小野田坂道をみせられると思うので楽しみにしていてください。」