釣りと言えば、インドア派の自分からは、アウトドアでアクティブな趣味だという印象があります。しかしインドア寄りの趣味であるスマートフォンゲームにも、根強い人気を持つ作品が多いジャンルでもあるのです。
自分も釣りゲームをいくつか遊んでみたことがあるのですが、釣り場の特徴や狙う獲物によって竿やリール、ルアーなどの道具を選択し、挑んでいくのがパターンだったと記憶しています。釣れる魚もさまざまな種類や大きさがあり、絢爛豪華。ああ、こりゃ確かに楽しいし、人気が出るワケだわーと、ひとりで納得をしていたわけですが。
そんな釣りゲームのなかでも、かなり物珍しいゲームが登場しました。それがこの『禅とヘラブナ釣りと私』です。
釣り世界には「釣りはフナに始まりフナに終わる」という言葉があるみたいですが、それにしてもシブいところを突いてきたなぁ、という印象のこのゲーム、さっそく中身がどんなものか紹介していきましょう!
◆シンプルさ、シブさがかえって異色の侘び寂びゲーム!
さて、さっそくプレイ開始してみましたが、見た目だけでなく、色々な部分が風変わりなゲームです。まず本作は、道具を選ぶという、数多の釣りゲームにあるプロセスが存在しません。また、釣り場も選択する必要はなく、いきなり現れるモノクロで描かれた水面をタップすると、ぽちゃんと音を立てて、浮きから先の仕掛けがいきなり投げ込まれます。
この時点で画面に見えるのは、水面に浮かぶウキと「禅の時間」というメッセージのみ。道具選択のプロセスがないのも、現代の釣りゲームとしては一周回って斬新な印象を受けましたが、まさか画面に釣り人はおろか、竿がちらっと映ることもないとは思ってませんでした。
ルアー釣りではないからリールを巻く必要もなく(というかそもそもリールが存在しない)、魚がかかってアタリがあるまでは、じっと浮きを見つめるのみです。
獲物がかかったら画面をタップすれば獲物が釣り上がります。ここでもよくある釣りゲームなら、テグスが切れないように魚が弱まったタイミングでリールを巻くなど、いろいろとゲーム要素が入るのが一般的なところ。しかし本作は魚が針にちゃんとかかっていれば、特になんの駆け引きもなく、さっと釣れてしまいます。
◆16種類の獲物と3種類のゲームモードを存分に楽しもう
釣れる魚は、ヘラブナがサイズ違いで8種類、それ以外の獲物が8種類の合計16種類。少なく感じられるかもしれませんが、もともとタイトルにある通り、ヘラブナ釣りが目的のゲームですので、これはこれで問題はなし! むしろコレクション要素を極力廃することで、ただひたすらヘラブナを釣るという行為に没頭できるのだと思います。
ちなみに、普通にプレイを続けると、ヘラブナばかり釣れる率が非常に高いです。ヘラブナ以外の魚はレアキャラってくらいの扱いなのかもしれません。
釣りのモードは3種あります。
「禅の時間」が通常のモード。自然に繁殖して成長したヘラブナは警戒心が強く、釣り上げるのが困難なのだそうなのですが、その分、「釣り堀などの人工の釣りとは違う、自然の中の釣りを味わえる」ということで愛好者も多いらしく。その感覚を存分に味わえるモードです。
「爆釣の時間」はいわゆるフィーバータイムです。入れ食い状態で、すぐに魚が釣れます。本作は釣った魚をTwitterでシェアすることができるのですが、それを行なうと「爆釣の時間」に入ります。
そして「放置の時間」はアプリを終了しても釣りを継続している状態となり、魚がかかると通知してもらえるのです。
◆ウキを見つめつつ、自分を見つめ直す。
「禅の時間」で魚が仕掛けにかかるまでの時間は、ほかの釣りゲームと比べると若干長めかもしれません(かかるときはすぐにかかりますが)。しかし、いつかかるかはわからないので画面から目を離すわけにもいかず、その間、ずっとモノクロ画面のウキをじっと見つめることになります。
ちょっとした合間ごとにいろんなゲームアプリを立ち上げては忙しく遊んでいる自分にとって、こうしたぼんやりした静寂の時間は、逆に貴重なものに思えてきます。釣りというのは元来こういうもので、静寂の中、自分を見つめ直すのによい機会なのかもしれません。
シンプル過ぎるぐらいにシンプルなゲームで、あまり気合いを入れずにぼんやりとゲームを楽しみたいという人にオススメです。現代人が失いつつある侘び寂びの感覚を、ぜひこのゲームで味わってみてはいかがでしょうか。