『激突!ブレイク学園』開発者に聞く!【前編・激突力のルーツ】

 エイティングからリリースされた『激突!ブレイク学園』。7月にiOS向けにリリースされて、AppStore無料ランキングトップを獲得。続いてAndroid向けにもリリースされ、早々に20万ダウンロードを突破したニューカマータイトルだ。本作を作ったエイティングの開発チームに、注目タイトルのウラ側についてインタビューした様子を、前後編でお送りしよう。

 前編は、このタイトルがどんな流れから生まれたかゲームなのかを中心に聞いた。『激突!ブレイク学園』の内容が気になっている人は必見!

株式会社エイティング
 亀井康孝(プロデューサー:写真左)
 島林幸司(ディレクター:写真中央)
 久米啓民(バトルディレクター:写真右)
 (敬称略)
◆「ユーザーさんの積極性は想定以上」
――『激突!ブレイク学園』は、まず20万ダウンロード突破と、滑り出しは順調ですが、手応えはいかがですか。

亀井 たくさんのユーザーさんに遊んでいただけて、開発・運営チームとしても、非常にやりがいを感じています。要素はまだ足りていないので、ユーザーさんに満足していだけるよう、どんどん追加していければと思っているところです。

――ユーザーからの直接の反響は聞こえてきますか?

亀井 現在公開しているストーリークエストをもうクリアしているかたもいらっしゃるので、その次のストーリーやイベント追加が求められているのを感じています。ユーザーさんには積極的に遊んでいただけていて、こんなにクリアするかたがいきなり出てくるのは想定以上でした。夏の水着イベントに続き、いろいろ準備していますので、途切れることなく運営していこうと思っています。

――エイティングは『テトリスモンスター』(エレクトロニック・アーツ)など、開発会社としては名高い存在でしたが、今回の『激突!ブレイク学園』で自社パブリッシュに踏み切られた理由はなんでしょう。

亀井 スマートフォンアプリには数年前から運営・開発として携わっていますが、会社としてはそれ以前にも20年間、アーケードからコンシューマ(家庭用)、格闘ゲームからアクションゲームまで、さまざまなジャンルのゲームを開発してきた歴史があります。アーケードではシューティングや格闘ゲームなど自分たちでのパブリッシングもして、ここ十数年はいろいろなパブリッシャーさんとお仕事させていただき、さまざまなノウハウを身につけてきました。そしてスマートフォンで勝負できる市場もできてきたので、培ってきた強みを活かした何かを出そう、ということで、今回の挑戦になったわけです。

――今作では、ヒット作も出ている「ひっぱり系アクション」に挑戦されたわけですが、このジャンルを選択された理由は?

島林 実は「ひっぱり系アクション」というのは、スタートの段階では、あまり意識していた部分ではなかったんです。エイティングは、3Dもの、アクションゲームを得意として開発経験を積んできましたので、その強みをどう活かしていこうか、というのが先でした。その中から、ユーザーさんにあまり複雑な操作をさせない、アクションの良さとの落とし所として浮かび上がったのが、いまの操作系だったんです。なので、公式ジャンルとしている「激突青春アクションRPG」という部分のほうが、このタイトルの世界観やゲーム性を表すうえでは適切かな、と考えています。

――ひっぱり、というよりは、激突、あるいはぶつける、という部分が重要であると。

島林 そうですね。その爽快感をいかに簡単に味わわせるかということです。ただ、この操作系は、ユーザーさんにとっては簡単ですし、実際に『モンスターストライク』というヒット作も出て幅広く受け入れられていることから、他の会社さんも考えた末に似たような結論に至って同ジャンルが増えている、とは思いますね。

亀井 僕たちは最初はコントローラの十字キーでキャラクターを動かしてきましたけれど、タッチパネルのスワイプやフリックでキャラクターを動かそうとなると、コントローラの感覚に一番近い操作は、ひっぱりなのかな、と。ジャンルというよりは、操作系のひとつという感じですね。もともとは昔のフラッシュゲームから始まり、『アングリーバード』などで広まったものですから、操作としては洗練されてきていますね。


▲直感的な簡単操作で、ガンガン連鎖してぶつけていく爽快感を楽しめるのはこのゲームの魅力。

――今回の『激突!ブレイク学園』の開発をスタートしたのは、いつ頃ですか?

島林 今年の2月からですね。リリースまで、半年かかっていないです。

――相当短い期間のような気がしますが、半年かからずに作るのは、エイティングさんではよくあることなんですか?

亀井 よくは……ないですね(笑)。もともと企画を考え始めたのは、去年の秋口なんです。企画を通してから開発までの間にもスマートフォンの市場ではいろいろなことがあって、いろいろなタイトルも発表されましたから、僕たちもノンビリしていられない、できるだけ早く出そう、ということで、実質5ヶ月でのリリースとなりました。

――そこは、スマートフォン市場のスピード感ですね。

亀井 いままで僕たちがコンシューマゲームを作ってきたスピード感とは、全然違う開発スタイルにはなりました。

――開発は、最初は何人くらいでスタートしたんですか?

島林 最初のコアメンバーは、5人です。ディレクターが私と久米、プログラマーがふたり、デザイナーがひとり。その小規模なところから、どんどん人が入って手伝ってくれて、ピーク時ののべ人数としては50人くらいにはなったと思います。

――50人となると、スマートフォンゲームとしてはなかなかの規模ですね。

島林 3Dアクションゲームということで、僕たちもコンシューマの感覚から来ていますので、「ここはもっと良くなる」「ここの手触りではダメだ」というノウハウを入れないわけにはいきませんし、手を抜くことはできません。良いものにしようとしていくうちに、規模が膨れ上がった感じです。

――そこは、開発会社らしい職人肌ですね。

島林 やはり、エイティングという会社が、初めて自社で、なおかつ得意である3Dアクションゲームを出すのに、ゲームとして劣っているものを出すわけには絶対にいきませんから、そこは最後までこだわったところです。
◆「僕たちが20年間やってきたものを合わせたゲームです」
――作り手として、本作の面白さのキーポイントを挙げていただくと、どんなところになりますか?

島林 3Dならではのカメラワークやエフェクト、ボイスと、見て触って聞いての面白さもありつつ、いかに考えてプレイするかで、もっと面白くなるゲームである、と考えています。どういう角度で狙うのが良いのか、次の相手にどうぶつけるのかというプレイをし始めると、とたんに攻略の面白さが出てきますので、アクションゲームの奥深さもうまく出せたな、と思います。

久米 バトルを担当した僕のほうでも、特に「考えるともっと面白い」という部分を強く意識しました。具体的には、一撃必殺の「ブレイクインパクト」などですね。常に局面ごとに考えてもらえる選択肢を多くして、その場その場で有効な手段をユーザーさんに考えていただきたいな、という気持ちを込めて、いまも作っている最中です。

――自分の操作キャラクターだけではなく、当てたキャラクターが次々と連鎖的に動いていくのは、他のゲームにない面白さですよね。この仕組みは、早い段階から考えていましたか?

島林 ビリヤード的に、キャラクター同士をぶつけて繋げて、という戦略性や賑やかさは、企画の最初から考えていました。僕らはアクションゲームとしての緻密さ、駆け引きの面白さを大事にしてきた自負がありますので、そういった部分で、発射して終わりではなく、その後の展開がどうなるかまでを考えてプレイする要素を入れ込みたいな、と思っていました。幅広い層にプレイしてもらいつつ、どう緻密さにたどり着いてもらうかを考えながらゲームデザインをしています。

――3Dグラフィックで行こう、というのは最初から決めていましたか?

島林 僕らが一番ユーザーさんに満足してもらえる、プレイや触っての楽しさは、3Dだから表現できるものがあります。例えば、カメラワーク。操作や演出のタイミングでカメラを動かすことで、ユーザーさんに爽快感とストレスのなさを提供することができます。それに、このゲームはバトルがめまぐるしいので、3Dのほうが表現として向いているんです。

――確かにプレイしていても、激突のときにカメラが寄ったりエフェクトが派手になったりというのは、見た目に一番楽しい点ではありますね。

島林 3Dだからこそできたことだと思います。カメラワークや視点については、このゲームの気持ちよさや面白さ、爽快感において、どれがベストかを議論した結果、いまの形になりました。このゲームはこの形が面白い、と本当に確信が持てたのは、リリースの1ヶ月くらい前です。本当にギリギリでした(笑)。


▲敵を倒すとカメラが切り替わる演出は3Dならでは。2人目、3人目と連続して倒すとエフェクトもどんどん派手になって爽快感抜群!

亀井 ユーザーテストも外部レビューもして、いろいろな意見を聞いて、ギリギリになって試したものが上手くいった、という感じです。例えば、「友情リレー」は、最後のほうで入りました。あれで戦略性がまったく変わりましたね。

――確かに、味方同士が激突したときに攻撃力アップや加速、回復などが起こる「友情リレー」は、ゲームにプラスアルファをもたらしている要素ですね。

島林 ビリヤード的なゲームとしては、どういう順番でぶつけていくかという遊びなんですが、この友情リレーが入るまでは、ぼんやりとして考える余地がなく、作業的なプレイになりがちでした。でも、友情リレーが入ると、単純な攻撃だけでなく、回復や補助としてキャラクター同士をぶつける意味が生まれて、プレイの幅が一気に広がるんです。この友情リレーと、ブレイクインパクトを入れたことで、どういう順番でぶつけるかに意味付けできて、いまのゲームシステムが生まれたんです。

――バトルの仕組みとしては、友情リレーの導入は大変じゃなかったですか?

久米 大変でした。開発の途中では、穴もたくさんあって。具体的な話では、コンボが延々終わらないケースもあったので、ある程度の天井を設けて、コンボを繋げていくと減速度が強くなるような形で、ハマらない仕組みにしています。

亀井 僕たちはずっと格闘ゲームを作っていたので、その辺りの調整は慣れている部分もあったんです。企画もプログラマーも、こういうときはどうしたらいいのかは、だいたい分かっていたんです。

――格闘ゲームのノウハウが活きていたというのは面白いですね。

亀井 今回の開発チームに格闘ゲームのプログラマーが入っていたのもあって、いろいろな部分で格闘ゲームのノウハウを元にしています。ゲージを溜めて出すブレイクインパクトは、まさに格闘ゲームそのものです。個々のスキルは、格闘ゲームでいう必殺技ですし。格闘ゲームだったらどうか、というのは、すべてにおいて開発チームでの裏テーマでもありました。

――お三方とも、格闘ゲームの開発経験ありですか?

島林 僕は格闘ゲームではなく、コンシューマの開発から、ここ数年はいわゆるガラケーのモバイルゲームの開発をしていました。今回ディレクターとして、亀井や久米、プログラマーやデザイナーの格闘ゲーム的なノウハウが、壁にぶつかったときや課題が見つかったときにすごく助かりました。

――モバイルゲームのサービスとしてのノウハウと、格闘ゲームの楽しさのノウハウをひとつにしたわけですね。あまり他にあるノウハウではないと思いますので、エイティングならではという感じがします。

亀井 融合したものではありますね。エイティングにはオンラインゲームを作っていた部隊もあるので、サーバの技術もありました。格闘ゲームのノウハウ、オンラインゲームの運営のノウハウ、ソーシャルゲームのサービスのノウハウと、僕たちがいままで20年間やってきたものを合わせたゲームということになります。

 前編はここまで。次回後編は、スタッフおすすめキャラクターから今後のアップデート予定まで、見逃せない情報が満載。お楽しみに!

(2014年8月収録)