書籍やアニメなどの豊富なIPを活用したビジネスを国内外で展開。「niconico」やライブなどが含まれるWebサービス事業の赤字が拡大。
カドカワ株式会社(以下、カドカワ)は、2019年3月期決算を5月14日(火)に発表した。当期連結経営成績は、売上高2086億500万円(前期比0.9%増)、営業利益27億700万円(同13.9%減)、経常利益42億500万円(同13.2%増)、親会社株主に帰属する当期純損失40億8500万円だった。
経営成績に関する説明
出版事業
電子書籍・電子雑誌販売を中心に、書籍・雑誌販売、権利販売、海外拠点売上など、売上が多様化している中、主に電子書籍・電子雑誌販売が業績をけん引し、好調に推移している。
電子書籍・電子雑誌では、カドカワグループの総合電子書籍ストア「BOOK☆WALKER」の8周年キャンペーンなどの施策により、販売が引き続き好調に推移。外販事業においても、当期から新たな外部電子書籍ストアに許諾を開始し、販売を加速させている。
9月に「ニコニコ書籍」アプリと「BOOK☆WALKER」アプリを統合したことで、MAU(月間アクティブユーザー)が底上げされるとともに、作品の品揃えが拡大し、1ユーザーあたりの購入金額が上昇した。さらに、グローバル戦略を推し進めるため、「BOOK☆WALKER Global」や「台湾BOOK☆WALKER」も高成長を維持している。
書籍については、『よつばと!(14)』や『ダンジョン飯(6)』『乙嫁語り(11)』といった大型作品や、「盾の勇者の成り上がり」「オーバーロード」「Fate」シリーズが好調に推移している。
ライトノベルでは、「ソードアート・オンライン」「魔法科高校の劣等生」「この素晴らしい世界に祝福を!」などの人気シリーズが引き続き堅調に推移した。その他にも、市場が停滞している中で新たなヒットシリーズの創出や育成にも注力している。
一般書では、「トラペジウム」、学習まんが「日本の歴史」や「どっちが強い!?」が収益に貢献した。
一般文庫は、「ラプラスの魔女」「君は月夜に光り輝く」「ビブリア古書堂の事件手帖」「未来のミライ」といった映画化作品の原作本や、「過ぎ去りし王国の城」が好調に推移している。
また、権利販売では主に遊技機向けの商品化許諾が収益貢献した。
出版物は、メディアミックス展開の重要な源泉の一つであり、ヒット作創出のため年間5000点の新刊を継続的に発行している。
上記の結果、売上高は1159億5800万円(前期比2.9%増)、セグメント利益は72億5300万円(同20.9%増)となった。
映像・ゲーム事業
映像では、「STEINS;GATEゼロ」「殺戮の天使」「やがて君になる」などの作品の海外ライセンス販売が収益に貢献した。また、アニメの配信収入や「Re:ゼロから始める異世界生活」など、商品化許諾による収益貢献により、国内外問わず豊富なIPを活用したビジネス展開を拡大させている。
株式会社ムービーウォーカーの展開するデジタル映画前売券サービス「ムビチケ」も好調に推移し収益貢献に貢献した。
ゲームに関しては、3月に発売した『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』が大変好調に推移し、利益拡大に大きく貢献した。また、『DARK SOULS REMASTERED』が引き続き国内外で好調に推移し、パッケージ販売だけでなく、海外ロイヤリティ収入も収益に貢献した。『METAL MAX Xeno』『コナン アウトキャスト』などのパッケージゲーム、歴代「アーマード・コア」シリーズのBGMを収録したCD集「ARMORED CORE ORIGINAL SOUNDTRACK 20th ANNIVERSARY BOX」や、「Bloodborne」「DARK SOULS Ⅲ」の海外ロイヤリティ収入も引き続き好調であった。
一方、株式会社ドワンゴがリリースしていた位置情報ゲームアプリ『テクテクテクテク』が、収益貢献の期待値を大幅に下回ったことで、アプリ開発費を一括費用化するとともに、2019年6月でサービスを終了することを決定した。
上記の結果、売上高は482億9500万円(前期比1.8%増)、セグメント利益は39億1900万円(同36.3%増)となった。
Webサービス事業
ポータルでは、日本最大級の動画プラットフォームである「niconico」における「ニコニコプレミアム会員」のサービス収入を柱に、ウェブサイト上のバナー等の広告、有料動画等の関連収益を計上している。
「niconico」については、回線の増強や画質の向上を中心とした動画・生放送サービスの視聴環境改善を行ない、新バージョン(く)(読み方:クレッシェンド)や、新しい生放送アプリ「nicocas」の提供などを行ってきた。しかしながら、「ニコニコプレミアム会員」は減少傾向が続いており、当連結会計年度末には180万人となった。
ライブでは、競合する他の動画サービスとの差別化のため、「ネットとリアルの融合」をテーマに各種ライブイベントの企画と運営、ライブハウス「ニコファーレ」の運営などを行なっている。4月に開催した「ニコニコ超会議2018」の2日間の会場来場者数は過去最高の16万1277人を記録し、インターネット視聴者数は612万1170人だった。8月に開催した世界最大級のアニソンライブ「Animelo Summer Live 2018 “OK!”」は3日間で8万1000人を集め、収益に貢献した。
モバイルでは、総合エンタテインメントサイト「dwango.jp(ドワンゴジェイピー)」や、アニメ総合ポータルサイト「animelo」からの収益を計上した。有料会員数は減少しているが、引き続き、外注費や広告宣伝費などの固定費削減に努めており、収益性を維持している。
上記の結果、売上高は258億4800万円(前期比10.9%減)、セグメント損失は25億7600万円(前期の営業損失10億6700万円)となった。
その他事業
ネットとリアルを融合させた双方向性を特長とする教育プログラムの提供や、クリエイティブ分野で活躍する人材を国内外で育成するスクール運営を行なう教育事業、キャラクター商品の企画から販売、アイドルCDのeコマース等のMD(物販)事業を行なっている。
また、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年を収益化の目途としているインバウンド事業の準備費用を計上した。
上記の結果、売上高は221億4300万円(前期比6.3%増)、セグメント損失は26億1300万円(前期の営業損失13億5600万円)となった。
以上の結果、当連結会計年度における業績は、売上高2086億500万円(前期比0.9%増)、営業利益27億700万円(同13.9%減)、経常利益42億500万円(同13.2%増)、親会社株主に帰属する当期純損失40億8500万円(前期の親会社株主に帰属する当期純利益10億3800万円)となった。