2014年9月18日(木)から9月21日(日)まで開催された東京ゲームショウ2014(以下、TGS2014)。モバイル端末向けのゲーム出展も珍しくなくなった昨今、今年度も数多くのスマートフォン向けゲームアプリが出展され、各ブースで盛り上がりを見せていましたね。
さて、今回のTGS2014で個人的に注目していたのは、コンパニオンのお姉さ……ゲフンゲフン、ではなく、とあるコンテストです。TGS2014というと、コンパニオンのお姉さんやコスプレイヤーの人気投票、期待のゲーム投票などがありがちですが、なんと今回はゲームのCMのコンテストが開催されていたのです。
◆GREE CMコンテスト公式サイト
http://jp.product.gree.net/tgs2014/cmcontest/
このコンテストは、プロアマ問わずGREEが提供しているゲームのCMを作って応募できる、オープン形式のコンペティション。しかも、審査を通過した作品はTGS2014に合わせて人気投票が行なわれたのです。グランプリ作品の賞金はなんと100万円! ということもあり、思わず個人的に応募を検討してみたのですが、制作スタッフのスケジュールが合わず断念……。
今回の「ゲームアプリCMウォッチャーズ」では、このコンテストのオンラインの人気投票とTGS2014会場のGREEブースでの投票によって選ばれたグランプリ作品、入賞作品を、応募できなかった悔しさを噛み締めながら紹介していきます。
●グランプリ作品:『消滅都市』「いきなり実写版!」篇 tuboowyさん
ゲーム中のバトルの様子を実写で表現するオーソドックスな作りの作品。世界観や設定が作りこまれているゲームのTVCMほどその説明に終始してしまいがちで、興味を惹きつけるのは難しいもの(よほど魅力的な世界観でない限り)。その点、このCMはゲームの特長のひとつである「さまざまな職業の仲間」の意外な組合せを実写で見せることで、いいアクセントになっていますね。欲を言えば、もっと意外性のある組合せとビジュアルであれば、さらにインパクトを残せたのではないかと思います。
ほかの作品と比較して、30秒間のストーリー展開が「ゲームが現実になる→敵登場→仲間登場→バトル→ゲーム紹介→オチ」と、まとまっている点や全体的なクオリティの高さがグランプリに選ばれた理由なのではないかと分析してみましたが、読者のみなさんはどうでしょうか?
●入賞作品:『踊り子クリノッペ』「踊るクリノッペ!」篇 Hiroyuki Moritaさん
クリノッペという謎の生き物のお世話をすることで癒されるゲーム内容を、実際のゲーム画面ではなく生活の中にクリノッペが溶け込んでいる様子として映像化した作品。「いつでもどこでもクリノッペと一緒」というメッセージ性とやさしいBGMが、『踊り子クリノッペ』の世界観を上手く表現しています。
そういう意味で、イメージ映像やPVとしてはいいなぁと思うのですが、TVCMという作品として見ると、具体的なお世話やコミュニケーションの様子、プレイヤーとの関係性を同じように描くことができれば、より興味を惹きつけられるのではないでしょうか。たとえば、昼寝をしているプレイヤーの頭の上で飛び跳ねて起こしてくれたり、プレイヤーが出かける際に持ち忘れてしまったスマートフォンに気付かせてくれたりするシーンがあったら、キュンとしちゃいそうですよね。
●入賞作品:『踊り子クリノッペ』「失恋」篇 イコさん
こちらの作品はタイトルのとおり、失恋して泣き疲れて寝てしまった女子の寝言を聞いたクリノッペが、人知れず慰めてくれているというほんわかストーリー仕立て。先ほどの「踊るクリノッペ」篇とは違い、より人との距離を近づけているアプローチなのではないでしょうか。実際に触れ合っていますしね。でもアプリ上の謎の生き物であるクリノッペに、心を感じるように癒やされたら、親しみもより一層深いものになりそうです。
ただ、そのように描かれているのに、『踊り子クリノッペ』というアプリ名だけのナレーションは味があるようで、製品の説明として情報不足なのかな、と思いました。いわゆる、キャッチコピーが欠けているんですね。何かひとこと、サラっと的確に言い表すナレーションが入ると、グッと興味を惹かれるのではないでしょうか。
●入賞作品:『不良遊戯 シャッフル・ザ・カード』「ババ抜き」篇 松澤麻子さん
題材としたゲームも手法も、ほかの作品と一線を画しているのがこちら。硬派&セクシーが売りの『不良遊戯 シャッフル・ザ・カード』のCMに、ゆる~いイラストとヘタウマヒップホップの歌を持ってくるというアイデア。ミスマッチと言えばミスマッチだけれど、どこかクセになる歌は中毒性というか、つい口ずさんでしまいたくなる魅力があります。何か共通する魅力があるな~と思い出したのが、芸人の「どぶろっく」さんの歌でした。あの、自分の状況や妄想を歌い上げる世界観に近いものがありますね。
硬派(セクシー)な題材をあえて変化球で攻める手法はゲームのTVCMではよくある話ですが、この作品は中高生男子がちょっと歌ってみたくなっちゃう絶妙なラインを捉えているのではないでしょうか。
●入賞作品:『釣り☆スタ』「ニュース・事件です」篇 432kenさん
ニュース番組を模したパロディ作品はたまに見かけますが、証言する男性が登場するのは珍しいですね。さり気なくゲームの特長を説明しているのも、パロディ作品としてポイントを押さえてます。「(魚が)100種類以上も釣れるとか」とテロップで主語を補足している所も、細かいですがニュース番組のインタビューでよく見る光景ですね。個人的にこの作品で一番好きな所はここですね。
「ライバルの出現、その正体は……『釣り☆スタ』の登場。これはもう…事件です」という一連の流れは、構成テクニックが光っているのですが、残念ながらTVCMでよくあるパターンなんですね。ここでもうひと捻りあったら、より印象に残る作品になったのではないかと思います。たとえば、同様のTVCMで使われる「※これは◯◯のCMです」という注釈文のテロップを逆手にとって、「※これはニュース番組に見せかけた『釣り☆スタ』のCMに見せかけた△△です」っていうオチもアリじゃないですかね。
●コンテスト入賞作品を振り返って
ゲームCMウォッチャーとして見たため、どうしても粗探しばかりになってしまいましたが、実際に観ている最中はかなり楽しませてもらいました。どの作品も方向性が違っていて、それぞれの手法を代表する作品が選ばれている感じがしますね。その中で全体的にまとまっていた『消滅都市』「いきなり実写版!」篇がグランプリに選ばれたのだと思います。
誰でも気軽に動画編集ができるようになった今こそ、こうしたコンテストがもっと増えるといいですね。そしていつか応募して入賞したら、このコラムで自画自賛したいと思います。
この記事を書いた人
TVCMを見続けて約30年。特にゲームのCMが大好物のCMウォッチャーであり、ゲームそのものよりもCMに興味があるダメゲーマー。最近はスマートフォンアプリのCMが賑やかになってきていることに、時代の動きを感じている。