東宝、映画「鬼滅の刃」などのヒットが業績に貢献 営業利益224億円 2021年2月期決算

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映画「鬼滅の刃」の大ヒットが業績に貢献したが、コロナ禍による映画の公開延期、舞台やコンサートの公演中止などで収益は減少。

東宝株式会社(以下、東宝)は、2021年2月期決算短信(連結)を4月13日(火)に発表した。当連結会計年度の営業収入は1919億4800万円(前期比27.0%減)、営業利益は224億4700万円(同57.5%減)、経常利益は241億9500万円(同56.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は146億8800万円(同59.9%減)とだった。

東宝 決算

経営成績に関する説明

映画事業
映画営業事業では、予定していた配給作品が相次いで公開延期となったが、昨年春の緊急事態宣言解除後に座席制限の中で公開した、スタジオジブリの長編アニメーション4作品のリバイバル上映が映画館に活気を取り戻したことで、映画「今日から俺は!!劇場版」の大ヒットにつながったという。「コンフィデンスマンJP プリンセス編」「映画ドラえもん のび太の新恐竜」「糸」も好調で、座席制限解除後の10月には、「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」が記録的な大ヒットとなり、その後も「STAND BY ME ドラえもん2」「新解釈・三國志」「映画 えんとつ町のプペル」とヒット作が続いた。また、東宝では、劇場用映画「ブレイブ -群青戦記-」などを制作した。東宝東和株式会社などに関しては、「ドクター・ドリトル」などの作品を配給したが、洋画話題作品が軒並み次期以降に公開延期になった影響で減収となった。これらの結果、映画営業事業の営業収入は398億4000万円(前期比18.4%減)、営業利益は64億7800万円(同47.8%減)となった。

映画興行事業では、TOHOシネマズ株式会社などにおいて、「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の大ヒットにより回復基調にあるが、4月中旬から5月中旬にかけて全劇場で休館したことや、劇場再開にあたって感染予防措置として間隔を確保した座席販売を行なったこと、洋画の期待作が公開延期や配信限定へ転換したことなどの影響で、当期の映画館入場者数は2532万人(前期比49.3%減)だった。この結果、映画興行事業の営業収入は462億4200万円(前期比49.3%減)、営業損失は11億円(前期は営業利益149億4800万円)だった。

映像事業では、パッケージ事業においてDVD、Blu-rayで「天気の子」「舞台『刀剣乱舞』維伝 朧の志士たち」「僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46」などを提供した。出版・商品事業では、「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」「映画ドラえもん のび太の新恐竜」などの劇場用パンフレット、キャラクターグッズの販売が伸びたが、邦洋画の話題作が公開延期になった影響が続いたことで前期比減となった。アニメ製作事業では、TVアニメ「呪術廻戦」などに製作出資を行なった。アニメ製作事業・実写製作事業に関しては、「僕のヒーローアカデミア」や「東宝怪獣キャラクター」などの商品化権収入に加え、製作出資した作品の各種配分金収入があった。ODS事業では、「Endless SHOCK」「僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46」「映画『映像研には手を出すな!』」などを提供した。また、株式会社東宝映像美術と東宝舞台株式会社では、映画やTV・CMなどでの舞台製作と美術製作で稼働を再開したが、ライブイベントやテーマパークにおける展示物の製作業務や大規模改修工事などに関して、開催の中止や延期、見直しが相次いだことから売上は減少した。これらの結果、映像事業の営業収入は301億1400万円(前期比8.5%減)、営業利益は49億7300万円(同25.1%減)だった。

上記の結果、営業収入は1161億9700万円(前期比32.8%減)、営業利益は103億5100万円(同69.5%減)となった。

東宝 映画事業 東宝 映画事業 推移

演劇事業
演劇事業では、東宝において、緊急事態宣言が発出された4月以降、東京公演と全国ツアー公演をすべて中止したが、7月より順次公演を再開した。再開にあたっては、劇場の消毒や換気の強化などの感染予防に取り組んでいるとのこと。

公演再開後、帝国劇場においては「ジャージー・ボーイズイン コンサート」「THE MUSICAL CONCERT at IMPERIAL THEATRE」などを、シアタークリエでは「メイビー、ハッピーエンディング」「Gang Showman」「おかしな二人」「オトコ・フタリ」などを上演したが、間隔を確保した座席販売や公演関係者の新型コロナウイルス感染による一部公演中止などもあったことで減収となった。また、有料のライブ映像配信やアーカイブ配信を実施し、新たな収益源の確保につとめた。

東宝芸能株式会社では、映像作品の撮影中止や延期、舞台やコンサートの公演中止などの影響を受けて、減収となった。

上記の結果、演劇事業の営業収入は79億4800万円(前期比54.7%減)、営業損失は10億6600万円(前期は営業利益40億8200万円)だった。

東宝 演劇事業

不動産事業
不動産賃貸事業では、2020年春の緊急事態宣言を受けて、商業施設の臨時休館を行なったことに伴う賃料の免除や歩合家賃の減少、保有する物件の入居テナントに対しても賃料減額の措置を講じたことなどで、前期比で売上は減少した。これらの結果、不動産賃貸事業の営業収入は279億1300万円(前期比5.9%減)、営業利益は123億2900万円(同9.4%減)となった。

道路事業では、公共投資が堅調に推移したが、建設技能者の不足による労務費の上昇や資機材価格の高騰もあり、依然として予断を許さない状況が継続しているという。その中、スバル興業株式会社と東宝の連結子会社が、新型コロナウイルス感染防止策を講じながら安全管理の徹底をはかり、技術提案などを通じた積極的な営業活動で、新規受注や既存工事の追加受注につとめたという。その結果、道路事業の営業収入は274億6000万円(前期比0.9%増)、営業利益は40億4800万円(同1.0%減)となった。

不動産保守・管理事業では、東宝ビル管理株式会社と東宝ファシリティーズ株式会社において、ホテルや劇場などの商業施設の経済活動が再開し、受注回復の動きがみられるが、2020年春の緊急事態宣言時の臨時休業による休業手当等の負担が営業利益を圧迫した。その結果、営業収入は97億5000万円(前期比10.0%減)、営業利益は6億8400万円(同29.4%減)となった。

上記の結果、不動産事業全体では、営業収入は651億2400万円(前期比3.8%減)、営業利益は170億6200万円(同8.6%減)となった。

東宝 不動産事業

その他事業
娯楽事業及び物販・飲食事業は、2020年春の緊急事態宣言などによる臨時休業後、東宝共榮企業株式会社の「東宝調布スポーツパーク」において利用者数が回復したが、TOHOリテール株式会社の飲食店舗や劇場売店などにおいて、営業時間の短縮等や外食需要の厳しい状況が続き、減収となった。

上記の結果、営業収入は26億7800万円(前期比41.1%減)、営業損失は3億2000万円(前期は営業利益7800万円)だった。

関連サイト

東宝株式会社公式サイト
2021年2月期決算短信〔日本基準〕(連結)
2021年2月期決算説明資料

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