【レビュー】想像力が恐怖をかきたてる! 音しか聞こえない暗闇が舞台のホラーパズルゲーム『Dark Echo』

◆目に見える“音”で周囲を探りながら進むパズルアドベンチャー

 ホラーを題材とした作品には、時折こんなシーンが登場する――登場人物の背後に正体不明の“何か”が迫り、今すぐ振り返るか、そのまま逃げ続けるかを悩む場面だ。大抵の場合は話の都合上、振り返るだろうが、もしもずっと“何か”に怯えながら逃げ続けることになったら……。

 そんなことを想像しながらプレイしたのが、この『Dark Echo』だ。視覚化された音だけを頼りに、暗闇からの脱出がゲームの目的。画面をタップするとタップした方向に画面内の足跡マークが移動するので、出口を探してさまよい歩くこととなる。

▲最初に見えるのは足跡だけ。ここから音で周囲を確かめながら先へと進んでいく。


 足跡をタップすると靴音が鳴り、音は周囲へ広がっていき、障害物に当たると曲がる。この特徴を利用し、入り組んだマップを少しずつ進んで出口にたどり着けば章のクリア。そして次の章へ進んでいく。

▲章ごとのタイトルは、非常にシンプル。なかにはクリアのヒントになるような言葉もあるので、目を通しておこう。


▲長めにホールドしてから離すと、まるで盛大にジャンプでもしたかのように音が大きく、遠くまで広がっていく。

◆行く手を遮る、赤い“何か”から逃げろ!

 最初はちょっと変わった脱出アドベンチャーといったノリだが、赤い“何か”が現れてからはガラリと雰囲気が変わる。行く先に現れる赤い場所や、唸り声を上げて追いかけてくる赤いものに触れると驚くほどあっさり死んでしまう。

▲画面が真っ赤に染まり、ゲームオーバー。ステージの最初からやり直すことになるので注意。


 これに対抗する術は一切なく、助かるためにはひたすら身をひそめ、逃げ続けなくてはいけない。終わりが見えないなか、正体不明の存在に追い詰められるのはパニックホラーの趣がある。

 これ以外にも黄色く見えるスイッチ、青く見える水溜りのようなものも登場。スイッチを押すと扉の開くような音が聞こえ、先に進めるようになるが、同時に赤い何かがこちらに向かってくる場合もある。水溜りは移動スピードが大きく下がるので、追われている時はどうにか避けないとすぐに追いつかれてしまう。

▲水溜りの中では移動スピードが下がる。何かに追われたまま突っ込むとまず助からない!


 ときには赤い何かから逃げるだけでなく、自ら近づいておびき寄せ、出口から遠ざけるといったテクニックも求められる。こうしたギミックを解くパズル要素も取り入れられており、非常にやり応えのある内容に仕上がっている。

▲赤い何かは、足音に反応して襲ってくる。音を反響させながら周囲を調べている間に遭遇しかねないので、慎重な行動を。


◆見えない、わからないからこそ刺激される想像力

『Dark Echo』の世界はただただ暗く、ここがどこなのか、どうしてこんな場所にいるのか何もわからない。しかし固い床を歩く靴音、扉の開く音、ポタポタと滴る水音、虫の羽音、獣のような唸り声。こうした音に臨場感があり、目には見えない状況をこれでもかというほど想像させてくる。

 たとえば赤い何かのすぐ近くを通らざるを得ない時。大きな足音を立てて気付かれないよう、少しずつタップしながら慎重に進む。息を殺し、手探りで壁をつたい、一歩ずつゆっくりと歩く。姿が見えるわけではないのに、そんな様子がありありと目に浮ぶ。

▲なかには、何かが押し込められたような状態を目にすることも。赤い何かはここから生まれているのか? 想像は尽きない。


 そして赤い何かに見つかってしまった際の、肉が潰れたような生々しい音、響き渡る男性と思しき叫び声、真っ赤に染まる世界。これも具体的に何が起きているのかはっきりわからないからこそ、最悪の想像がいくらでも頭を過ってしまう。

 時折聞こえる誰かの足音もそうだ。もしかしたら同じような状況の人間がほかにもいるかもしれない。しかし自分にとって敵なのか、味方なのか。そもそも、さっき感じた足音と今聞こえた足音ははたして同一人物なのか。こんな感じで、音のみでしか与えられない情報だからこそ「こうなんじゃないか」、「いや、ああなんじゃないか」と妄想が膨らんでしまうのだ。

 本作での操作キャラクターの死を、シューティングゲームで敵に撃墜された、アクションゲームでうっかり穴に落ちてしまったというような感覚で捉えられるならそう恐ろしく感じないだろう。ホラーやパズルタイプのゲームに興味のある人、そして想像力が豊かな人には怖いもの見たさで一度プレイしてみてほしい。きっと見えない恐怖に背筋が凍るはずだ。
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