【レビュー】『千里の棋譜』対コンピュータを扱った異色の将棋ミステリアドベンチャー



 将棋やチェスなどのアナログゲームは、盤上で行なわれる頭脳戦ということで相性がいいのか、しばしばミステリ小説のモチーフとして扱われています。本作『千里の棋譜』も将棋がメインテーマとなるミステリアドベンチャーゲームです。

 本作の大きな特徴は棋士対コンピュータというテーマを扱っているところ。2011年から継続的に行なわれているプロ棋士とコンピュータ将棋ソフトの対局である「電王戦」がネット上などで大きく話題を呼び、注目を集めたのを覚えている人も多いのではないでしょうか。将棋といえば歴史あるアナログゲームですが、本作は現代的なテーマを扱っているのです。

▲大手メディア、サイバーテレビの局長が記者会見上で衝撃的発表! プロの将棋棋士が負けたらコンピュータが名人の座に就くだと……!?


◆将棋連盟会長宅で行なわれた事件の犯人は、そしてその狙いは……?

 主人公はフリーの記者である一ノ瀬歩未。幼なじみであり、プロ棋士の養成機関である奨励会に所属する長野圭三段の協力を得て、将棋連盟の会長宅に取材に行ったところで事件が起こります。部屋が何者かに荒らされ、会長が倒れている! 犯人は金品目当てではなく、何か重要な物を探していた様子。はたして狙いは一体なんなのか……というのが本作の導入です。

▲少しボケ風味の長野三段と、ちょっとツッコミ気味の主人公、歩未。いいコンビですわ。


 主人公の歩未はあまり将棋について詳しくはない設定です。そのため将棋の用語に関しては、あまり知識がありません。しかし相方がプロの棋士を目指す長野三段ですので、その辺りのフォローはバッチリ。

 つまり、プレイヤーである我々が将棋に詳しくなくても、きちんと本編内で解説をしてくれるので、将棋初心者でも物語にのめり込めます。一方で「将棋のことはちゃんとわかってるから、そんな説明まどろっこしいよ!」というプレイヤー向けに、そういった解説を飛ばせるようになっています。将棋知識が豊富でもそうでなくてもストレスを感じさせない作りは、丁寧だなぁと感じます。

▲物語内に出てきた将棋用語などは章ごとに解説がある親切設計。もちろん将棋をよく知ってるって人は飛ばしても大丈夫です。


▲対局相手がおらず、ひとりで解く「詰将棋」が謎と結びついていることも。こちらも初心者対応で解けなくても先に進めます。


◆選択肢を選ぶだけでストーリーが展開、しかし慎重に選ばないと……!?

 難しい操作は何もなく、基本的には時おり出てくる選択肢をチョイスしていくだけでストーリーが展開していきます。後半は間違えた選択肢を選ぶと即バッドエンドという展開も起こりえますが、バッドエンドになっても直前の選択肢からやり直すことが可能。「ゲームオーバーでガックリきちゃって続きをやる気が起きない!」なんてことにはなりません。ご安心を。

▲ゲーム後半に出てくる選択肢には要注意。すぐやり直せますけど、やっぱりバッドエンドは極力避けたいですもんね。


 また、探索画面の選択肢を選んだり、途中でゲットしたアイテムを特定の人物に見せたり、ただ地の文章を読んで選択肢を選ぶ以外の要素もあり、飽きがこないように工夫されています。

▲マップ移動などの要素もありますが、選択肢を選ぶだけでサクサク進みます。アドベンチャーゲーム初心者でもとまどう部分はないんじゃないかと。


◆ストーリーはまだ始まったばかり……続編に期待しよう!

 本作は実は四部作の第一弾となっています。つまりこのアプリだけではストーリーは完結しません。いいところで続いてしまって「ぐぬぬ……」となってしまいましたが、逆に言えば待つ楽しみがあるということですね。

 制作者のコメントによると、将棋を知らないプレイヤーでも自然に遊べて、将棋ファンや棋界関係者がプレイしても面白いと思うものを目指して制作されたとのこと。将棋の面白さを世に知らしめるのが目標のため、アプリの価格が無料で、かつゲーム内課金はなし。バナー広告なども一切入っておりません。

 また、今後の展開はまだわかりませんが、序盤ではミステリものにありがちな殺人事件なども起こらず、50年前もの間、隠され続けた「禁忌の棋譜」の謎と、対コンピュータ戦を前にして忽然と消えた名人の消息の追跡といったところを軸にストーリーを展開させています。これまでの将棋をテーマにしたミステリ作品とはまた違ったゲームらしい楽しみかたができる本作品、続編の登場も楽しみです!

▲アニメ好きの棋士として人気の高い高橋道雄九段が本人役で特別出演! かっこよくもトボけた感じも出てて、いい味出してますなー。


▲現状では殺人事件などのハデな事件こそ起こっていませんが、だからといって退屈というわけではなく、かなりハラハラさせられる内容。

▲ひとクセもふたクセもある登場人物たちのさまざまな思惑が絡まるストーリーは、まだまだ序盤。早く続きをプレイしたい!


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