書籍は発刊数減も電子書籍が補う形で伸長。東京オリンピックに向けたインバウンド事業の費用計上で損失が拡大。
カドカワ株式会社は、8月9日に平成31年3月期第1四半期決算を発表した。当期連結売上高は496億3100万円(前年同期比0.6%減)、営業利益は3億9900万円(同49.5%減)、経常利益は11億1100万円(同737%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は3億6800万円だった。
経営成績に関する説明
Webサービス事業
動画プラットフォーム「niconico」における「ニコニコプレミアム会員」のサービス収入が柱であり、ウェブサイト上のバナー等の広告、有料動画等の関連収益を計上。
当期末における「ニコニコプレミアム会員」は200万人に減少。改善対応にかかる費用や新サービスの開発費用が減益要因となった。期初想定よりもプレミアム会員数の減少幅は小さく、業績は期初予想を上回る結果となった。
「niconico」については、動画のフルHD画質(1080p)や生放送のHD画質(720p)対応、動画の非ログイン視聴対応など、動画・生放送サービスの機能改善に注力し、6月28日に新バージョンの(く)(読み方:クレッシェンド)の提供を開始した。
ライブでは、競合する他の動画サービスとの差別化を図るため「ネットとリアルの融合」をテーマに各種ライブイベントの企画・運営、ライブハウス「ニコファーレ」の運営などを行なっている。
平成30年4月に開催した「ニコニコ超会議2018」の2日間の会場来場者数は過去最高の16万1277人を記録し、インターネット視聴者数は612万1170人だった。
モバイルでは、シングル楽曲/着うたなどを配信する総合エンタテインメントサイト「dwango.jp(ドワンゴ ジェイピー)」や、アニメ総合ポータルサイト「animelo」からの収益を計上。有料会員数は減少しているが、外注費や広告宣伝費などの固定費削減を継続し、収益性を維持する。
上記の結果、売上高は67億7500万円(前年同期比11.0%減)、セグメント損失は4億1100万円(前年同期は営業損失7200万円)となった。
出版事業
書籍、雑誌の新刊点数は、前年同期比で控えめであったが、電子書籍・電子雑誌がそれを補う形で伸長。業績は堅調な滑り出しとなった。
電子書籍・電子雑誌は、主力事業の電子書籍外販事業や、グループの総合電子書籍ストア「BOOK☆WALKER」での販売は好調を維持。グローバル戦略を推し進めるため、10月にオープンした「BOOK☆WALKER Global」や、2月にオープンした「台湾BOOK☆WALKER」も高い成長を維持している。
また、電子書籍・電子雑誌の成長のため、無料マンガサービス「ニコニコ漫画」や読書管理サービス「読書メーター」など、自社グループの電子書籍関連サービスを株式会社ブックウォーカーに集約し、電子書籍のPRから販売まで、一貫したサービスが展開できるようになった。
書籍では、コミックスの『よつばと!(14)』『ダンジョン飯(6)』などの大型作品が好調に推移している。ライトノベルは、市場が停滞している中で新ヒットシリーズの創出、育成に注力。「ソードアート・オンライン」「魔法科高校の劣等生」といった人気シリーズについては、堅調に推移している。メディアミックス関連は、映画「ラプラスの魔女」の原作本や、映画「未来のミライ」の関連本が好調に推移している。7月スタートの新アニメでは、「オーバーロード」の関連本や、「niconico」で大人気のフリーゲーム「殺戮の天使」のコミカライズ本が当第1四半期に出荷し、好調に推移している。
雑誌では、刊行計画や発行部数の見直しなどで販売は減少。地域情報誌「Walker」シリーズ、ライフスタイル誌「レタスクラブ」などは、Webメディアと連動したビジネスモデルへの転換を進めており、Webメディアのページビューや広告収入の増加などの成果につなげていく。
上記の結果、売上高は265億8000万円(前年同期比1.6%減)、セグメント利益は10億3700万円(同5.3%減)となった。
映像・ゲーム事業
映像では、4月スタートの新アニメ「STEINS;GATEゼロ」「フルメタル・パニック! Invisible Victory」「ヒナまつり」など、海外ライセンス販売が収益に貢献。「劇場版 ソードアート・オンライン‐オーディナル・スケール‐」「Re:ゼロから始める異世界生活」などの商品化許諾による収益貢献があり、国内外問わず豊富なIPを活用したビジネス展開を拡大している。株式会社ムービーウォーカーの展開する劇場前売券サービス「ムビチケ」も好調に推移し、収益に貢献している。
ゲームについては、当第1四半期に販売予定だったパッケージゲームのうち、第2四半期以降に発売を延期したタイトルがあったが、『DARK SOULS REMASTERED』『METAL MAX Xeno』などのパッケージゲームや、3月発売した『Bloodborne』や『DARK SOULS Ⅲ』海外ロイヤリティ収入が好調で、前年同期並みの業績を維持した。
上記の結果、売上高は111億5900万円(前年同期比4.0%増)、セグメント利益は8億7700万円(同36.5%増)となった。
その他事業
ネットとリアルを融合させた双方向性を特長とする教育プログラムの提供や、クリエイティブ分野で活躍する人材を国内外で育成するスクール運営を行う教育事業、キャラクター商品の企画・制作・販売やアイドルCDのeコマース等のMD(物販)事業を行なっている。
また、東京オリンピック・パラリンピックが開催される平成32年を収益化の目途としているインバウンド事業の準備費用を計上した。
上記の結果、売上高は59億7900万円(前年同期比11.3%増)、セグメント損失は3億100万円(前年同期は営業損失8500万円)となった。
以上の結果、当第1四半期連結累計期間の業績は、売上高496億3100万円(前年同期比0.6%減)、営業利益3億9900万円(同49.5%減)、経常利益11億1100万円(同73.7%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益3億6800万円(前年同期は2300万円の純損失)となった。
業績予想については、5月10日の発表から変更はない。
関連サイト
カドカワ株式会社公式サイト
平成31年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)
2019年3月期 第1四半期決算説明資料