【第2回】君はすべて見ることができたか? 増え続ける『モンスターストライク』のTVCM


◆『モンスターストライク』のTVCMは快進撃に合わせて増えている

 2013年のリリース(iOS版は10月、Android版は12月)以降、急激に利用者数を増やしていき、2014年の5月には『パズル&ドラゴンズ』(以下『パズドラ』)の牙城を切り崩し、ついには利用者1000万人を突破したモンスターアプリ『モンスターストライク』(以下『モンスト』)。そのヒットの理由は、単純でわかりやすい操作と爽快なゲーム内容はもちろん、ほかのゲームアプリよりもCMに力が入っているのではないかと、密かに注目していたのです。すると期待通り次々に新作CMが登場し、7月30日の時点で累計8種類ものCMが放映されています。ひとつのゲームアプリでこれほどたくさんのCMを放映したのは『パズドラ』くらいでしょう(いつか連載で紹介したいですね)。どちらも放映数が多いので、「よく見るなあ」という印象を受けた読者の方も多いのではないでしょうか。そこで、さらに新作が登場しそうな勢いの『モンスト』のCMについて、過去のCMを振り返りながらそのタイミングごとの表現を考察してみました。


■CMプレイバック(その1)

 最初に放映されたのがこの3作で、“モンスターをひっぱって飛ばす” “みんなで一緒に遊べる”という『モンスト』の特徴を伝える内容。これをプレイヤーが現実世界でゲームと同じ動きをする表現にすることで、ゲーム内容をイメージしやすくしています。このようなCMはゲームCMウォッチャーとして“アクション表現型CM”と呼んでいます。“アクション表現型CM”は、その名の通り、操作方法やキャラクターの動きに特徴があるパズルゲームやアクションゲームの発売(リリース)直後に用いられるのが特徴です。これには派生型として、ゲームに没入するあまり、現実のプレイヤーがゲーム内の影響を受けてしまうという“没入型CM”もあります。しかし、“居酒屋篇”の先輩が黒焦げになってしまうというオチは違いますね。これは“カッコつけているのに頼りにならない先輩”の成れの果てです。

■CMプレイバック(その2)

“アクション表現型CM”の次に放映されたのが“ラスカル篇”。ラスカルのTVCM篇を記念してゲーム内にもラスカルが登場しました。スターリング少年とボートに乗って『モンスト』で遊んでいるラスカルが、ボスに対して必殺技である“ストライクショット”を発動するとともに、森の彼方に飛んでいってしまうと、チッと舌打ちされてしまいます。推測するに、飛んでいってしまうという表現がゲームにおける失敗を意味するのであれば、マルチプレイをしているスターリング少年の気持ちもわからなくもないですね。でも、ラスカルをデッキに入れている読者の皆さんは、たとえラスカルがあと1撃で倒せる攻撃カウント1のモンスターの目の前で止まってしまっても、舌打ちしてはいけません。もちろんマルチプレイでほかのプレイヤーが失敗した時も。

■CMプレイバック(その3)

 勢いが止まらない『モンスト』がApp Store売上ランキングでトップに立ちました。7月上旬から放映された“カーリング篇”と“囲碁篇”は、それぞれの対戦(解説)シーンに『モンスト』らしいエッセンスを加えてしまったCM。ゲーム内容をより面白おかしく表現するCMとして放映したものでしょう。。この2作は『モンスト』の見た目に近い題材が選ばれています。“囲碁篇”の淡々と締めくくる流れはパロディとしてのクオリティを高めていますし、“カーリング篇”の解説者の「これ、カーリングじゃないですね!」というセリフは、意味的にはパロディを否定しているのですが、視聴者のツッコミを代弁することで共感を得られているのではないでしょうか。個人的にはビリヤードも選ばれてよさそうな気がしましたが、マイナー競技ゆえの“競技中継の画面”の馴染みのなさが、選ばれなかった理由なのではと推測しています。そしてCMウォッチャーとして、次に作られるCMは王道である“歌”と“動物”を予想していたのですが、結果的に半分的中していました。

■『モンスト』最新CMチェック

 7月24日(原稿執筆時)から新たに放映された2作は、料理番組と動物ドキュメンタリー番組のパロディ。丸めた肉団子やフンが最終的に爆発するという展開は同じですが、“シリーズ物”はCMウォッチャーにとって大好物です。ここまで増えると、『モンスト』プレイヤーはもちろん、そうでない人もついつい全部の種類が気になっちゃいますよね。個人的に残念なのは、料理番組におけるお約束ともいえる、「◯◯しておいたものがこちらです」という流れが取り入れられてなかったことですね。15秒間という短い時間だからこそ、活かせるアイデアだと思うのですが、考えてみたら『モンスト』っぽくするのが難しいことが判りました。“フンコロガシ篇”はフンコロガシ的な新種の生物の生態紹介という感じにするとよりしっくりするかもしれませんね。と、CM批評家気取りでいってみました。
 
 パソコンやタブレット、スマートフォンの時代といわれながらも、やっぱりTVCMの影響力は大きいのだと実感します。そんな状況のなか、はたして次はどんなCMが登場するのか。はたまた印象的なCMソングが流れるのか。さらなる高みを目指す『モンスト』が、どのようなCMでファンの心を掴み、利用者数を増やしていくのか。今後も目が離せませんね。

【著者プロフィール】真平(まっぴら): TVCMを見続けて約30年。特にゲームのCMが大好物のCMウォッチャーであり、ゲームそのものよりもCMに興味があるダメゲーマー。最近はスマートフォンアプリのCMが賑やかになってきていることに、時代の動きを感じている。