【市場比較コラム】映画市場世界トップ3 日本・アメリカ・中国の市場動向

日本映画ランキング

これまで独走状態だったアメリカが、2019年に中国に抜かれ、映画市場のトップが入れかわる? 日本の映画市場は約2000億円と横ばい状態を継続。

2018年の日本映画市場は、シリーズ最高記録を更新した『劇場版 名探偵コナン ゼロの執行人』や、2018年11月公開の映画『ボヘミアン・ラプソディ』のロングヒットなど、国内外でも話題になった作品が多数上映され、市場規模は2225億円と世界第3位となった。

日本より上位の国をみてみると、長年第1位のアメリカが1兆2118億円、2011年に日本を超えてからも急成長を続け、アメリカに迫りつつある中国が2位で9878億円となっている。

ここでは、2018年の映画市場規模上位3か国(日本、アメリカ、中国)について、少しだけ踏み込んだ比較記事をお届けしたい。

2019年最新の映画市場考察記事はこちら。

日本とアメリカの映画市場規模は8年間横ばい

映画市場

2012年~2018年の年間興行収入推移
(アメリカ:1ドル112円、中国:1元16円で計算)

実は、日本の映画市場は、ここ8年間どころか1978年ごろから約40年間、2000億円台の規模で変わっていない。

また、アメリカに関しても例年1兆2000億円という市場規模をずっとキープしており、これまで他の国を寄せつけない世界最大の市場を誇っていた。

だが、ここ10年ほど中国の映画市場が右肩上がりの成長を続け、2011年に日本の2000億円を超えてから、2018年には1兆円に迫る勢いの市場規模に成長し、このまま続ければ、2019年にはアメリカの映画市場を超えると予想されている。

スクリーン数が6年間で5倍 急増する中国の映画館

スクリーン数についても日本とアメリカはほぼ横ばいだが、中国に関しては市場規模と同様、急激な増加をみせ、2018年のスクリーン数は2012年の5倍と急増した。

それぞれの国についてスクリーン数の詳細をみてみよう。

スクリーン

2012年~2018年のスクリーン数推移

日本ではイオンシネマと東宝、ユナイテッド・シネマの3種で市場の半数

日本では、イオンシネマやTOHOシネマなど、映画配給会社が運営する映画館を中心に3500超のスクリーンが展開している。近年、松竹株式会社や東宝株式会社(以下、東宝)が新映画館を駅周辺や再開発エリアに開業したり、小規模映画館も新規オープンしているが、それと同規模程度の閉館施設があるため、総数的には変動がないようだ。

近年は映画館によっては2D上映のほか、IMAXや4DXなど、映画をみるだけでなく体験するような設備の導入や、劇場限定グッズ、会員向けサービスなども提供されている。

日本のスクリーン数

日本市場の中で最も多くスクリーンを展開しているのが、イオンのショッピングセンターを中心に映画館を運営しているイオンシネマだ。関東を中心に、日本のスクリーン数の約22%を占める766スクリーンを展開中だ。

次いで、東宝が子会社や関係会社を通して運営中のシネコン兼チェーン映画館のTOHOシネマズが日本全体の19%のスクリーンを展開。同映画館では、2019年6月以降のチケット価格の値上げと、工事中の商業施設、Hareza池袋内に新映画館を2020年にオープンすることを発表して話題にもなった。

これら上位2館の映画館に、3番手のユナイテッド・シネマ系列の10%を加えると、上位3社で日本の映画市場の総スクリーン数の半分を占める結果になった。

AMC TheatreとRegal Entertainmentの2つでアメリカ市場の60%を占有

世界で最も大きい映画市場を誇るアメリカでは、日本の10倍以上の40000超のスクリーンが展開中。ここでは含めていないが、お隣カナダを含めた北米市場だと、さらにより多くの映画館とスクリーンが運営されているはずだ。

アメリカのスクリーン数

アメリカのスクリーン数

そのアメリカで最多数のスクリーンを展開しているのが、AMC Entertainment Inc.(以下、AMC)が運営する映画館AMC Theatreだ。この映画館は、2012年に中国の大手企業の大連万達集団に買収され、一時期は同グループの関連企業だったが、その後AMCが株を買い戻し、現在は同社が運営を行なっている。AMC Theatreは、劇場やシアタールームによっては食事を楽しみながら映画が観賞できるなどの工夫を行なっている。

2番目に多くのスクリーンを展開しているのはRegal Entertainmentの7379スクリーンだ。この映画館では、「REGAL CROWN CLUB」という独自のサービスを展開し、ユーザーの確保に尽力している。

中国はアメリカの1.5倍のスクリーンを展開 複数企業が各々で映画館を運営

中国では、アメリカの1.5倍程にあたる6万超のスクリーンが展開中だが、一部企業が市場の多数を支えている日本やアメリカとは違い、様々な企業がそれぞれの映画館を運営しているのが特徴だ。

中国のスクリーン数

中国市場で最も多いスクリーンを展開しているのが、中国最大級の映画館である广东大地电影院线股份有限公司(大地院線)。2006年の設立以降、映画のほかにも、商業用の不動産やマーケティング、投資、広告など、幅広い事業を展開している企業だ。

その次は、中国大手企業ワンダグループの提携企業で、2005年に設立された映画会社 万达电影股份有限公司(万達院線)。万達院線は、中国国内以外にも、オーストラリアやニュージーランドなどで映画館を運営しており、世界規模では合計1551の映画館、15932スクリーンを展開している巨大企業だ。

上映作品は日本が3か国の中で最も多く映画を公開

公開本数

2012年~2018年の公開本数推移

次に映画館で上映された作品数や、各国の作品ランキングに注目してみよう。

まず、上映作品数だが、日本が最も多く、2018年には1192作品が上映されている。この数字は市場規模上位3か国でもトップで、アメリカと中国は日本に比べると2割強ほど、年間上映作品数は少ない。

以下で、それぞれの国の人気作に注目してみよう。

日本

日本映画ランキング

日本映画ランキング

2018年の日本で興行収入ランキング1位を記録した作品は、11月に公開された洋画『ボヘミアン・ラプソディ』だった。次いで、日本の人気ドラマの劇場化作品『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』が入り、3位にはアニメ映画「劇場版 名探偵コナン」シリーズ最新作と、洋画邦画アニメとバラエティーに富んだランキングとなった。

アメリカ

アメリカ

アメリカ映画ランキング(1ドル112円で計算)

アメリカは自国制作の映画がランキングの上位3作をおさえ、上位2作品はマーベル・スタジオのヒーロー映画となっている。3位の『ミスターインクレディブル2』に関しても、ウォルト・ディズニー・カンパニーの子会社であるピクサー・アニメーション・スタジオが制作したものであり、大きな枠でみるとアメリカの上位3作品はディズニー作品となった。

中国

中国映画ランキング(1元16円で計算)

中国も、アメリカと同じく自国制作の映画が上位3位を独占。近年はハリウッド映画にも中国企業が製作に携わり、中国で好成績を記録している作品もあるが、純国産の映画人気にはかなわなかったようだ。

チケット価格は日本が最も高く、中国の2倍以上

チケット価格

2012年~2018年のチケット平均価格推移
(アメリカ:1ドル112円、中国:1元16円で計算)

最後に3か国のチケット価格を比較してみる。

日本のチケットの平均価格は1300円ほど。

一般的な映画鑑賞価格の大人1800円より少ない金額だが、これは安価な前売り券の購入や、各映画館や携帯会社、クレジットカード会社が提供する割引など、独自サービスを利用してチケットを購入する鑑賞者が多いためだ。だが、割引などを駆使して購入しても、映画市場上位3か国で日本のチケット代は最も高い金額となっている。

アメリカに関しては、日本よりも安価だが、2012年の892円から6年間で1021円になるなど、年々微増しているようだ。

これは、アメリカでは、日本のようにチケット代が決まっておらず、公開開始から日にちが経った作品に関しては、割引価格で観賞できるサービスをはじめ、曜日毎の金額設定や、一時期話題になった月額見放題サービス「Movie Pass」など、映画館によって多様な料金プランを打ち出しているためだと思われる。

そして中国のチケット代は、日本の半額近く、3か国のなかでも圧倒的な最安値となる600円ほどとなっている。

チケット代が安いだけでなく、中国では映画チケットプラットフォーム「淘宝电影票(英語名:Taopiaopiao)」など、オンラインでチケットを購入できるサービスが日本より普及していて、エリア毎の映画館でも検索が工夫されており、映画がレジャーとして選択されやすくなる要因のひとつとなっているようだ。

これからの映画市場は、中国市場を意識するべきか

日本は2000億円規模から大きな成長がなく、今後も大きく成長する見込みがみられない。環境が整い、一定の映画ファンや、作品ファンが好きな作品をリピートしたり、話題作などで瞬間的な増員はありえるものの、市場に与える影響は少なく、今後爆発的な成長は難しそうだ。

一方、近年の中国市場については、スクリーン数や公開本数の増加による興行収入の増加で、アメリカと同等または上回る市場規模が見込まれており、2025年頃には2兆円規模の市場に成長するともいわれている。

今後の、映画関連事業については、中国市場を意識せざるを得ないのかもしれない。

2019年の映画市場考察記事はこちら。

参考サイト

以下のサイトを参考に制作しました。

一般社団法人日本映画製作者連盟
Box Office Mojo(海外サイト:英語)
National Addociation of Theatre Owners(海外サイト:英語)
中華人民共和国国家新聞出版広電総局(海外サイト:中国語)
China Movie Data Information Network(海外サイト:中国語)

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