【第4回】ゲームアプリのTVCMで紅黒歌合戦!? 夢の歌謡ショウが実現!

◆異なるアプローチの歌モノCMを同時紹介!

 TVCMのアプローチ方法としてCMソングを用いることはポピュラーで、筆者の好きなパロディCMでも替え歌などがよく使われたりします。また、その時その時の人気歌手やバンドが登場するTVCMなども話題になりますね。それこそ宣伝する商品やサービスを問わず、日々歌モノCMが誕生しています。小学生のころは印象的なCMソングが使われているTVCMを見ると、翌日には学校で歌っていたものです。

 さて今回は、そんな歌モノCMに注目して、奇しくも大物歌手を起用している2タイトルのTVCMを紹介しましょう。

◆紅組の“ラスボス”こと小林幸子さんがにゃんこと共演!

 まず紹介するのは、2014年の4月ごろに放映されていたのですが、その前から大ヒットを記録していたポノスより好評配信中の『にゃんこ大戦争』のTVCM。インターネットメディアへの露出や、2014年夏のコミケにも自身が出展して注目されるなど、活動とファン層の幅を広げている演歌歌手の小林幸子さんが出演しています。近年は歌番組出演時の衣装の荘厳さから、若いファンからは“ラスボス”と称されて親しまれているのはTAPPLIの読者ならご周知のとおりです。その小林幸子さんが出演する『にゃんこ大戦争』のTVCMは3バージョンあり、さすが、何度も変身する様はまごうことなきラスボス。また、各バージョンの衣装やセットなどがにゃんこである所にも注目です。


◆ただのインパクト重視のTVCMではないこだわりの数々!

 3つのTVCMの舞台になっているのは架空の歌謡番組。順位が表示されていることから、ランキング形式の番組のようですが、そのステージに小林幸子さんが登場し、歌い始めるシーンで構成されています。ここで歌われている曲のタイトルはすべて“にゃんこ大戦争”ですが、すべて作詞、作曲家が異なり、曲調も異なるというもの。歌い出しでTVCMが終わってしまうので、曲の続きが気になりますよね。しかも、その歌い出しの歌詞が、「猫背~」「猫舌~」「泥棒猫~」と、にゃんこに関連する単語というこだわり。この焦らしとこだわりが、TVCMとして視聴者の興味を惹いていますね。ちなみに、ゲームに関する情報がまったく含まれていませんが、前述の通り、すでに大ヒットを記録しているタイトルなので、さらなる話題性のアップとライト層へのアプローチを狙った内容になっているようです。

 また、このTVCMをより魅力的なものにしている要素として忘れてはならないのが、冒頭の曲紹介ナレーション。どこかで聞き覚えのある声で、小林幸子さんにまつわる“どうでもいい”情報を紹介しているのは、某番組のモノマネ選手権コーナーでチャンピオンにもなったアナログタロウさん。80年代のラジオ番組での曲紹介モノマネが、昭和の歌謡番組風のパロディのいいアクセントになっていますね。

◆紅組に対するは黒組(!?)代表の松崎しげるさんの熱唱!

 次に紹介するのは、同じく2014年の4月ごろに放映されていた、Akatsukiから好評配信中の『サウザンドメモリーズ』のTVCM。こちらは打って変わって聴かせるTVCMとなっています。『千のメモリー』と題された曲を歌うのは、これまた大物歌手の松崎しげるさん。誰もが認める日焼け具合に、肌黒さの指標にすらなりかけている松崎しげるさんが歌う『千のメモリー』は、往年の名曲『愛のメモリー』の替え歌なんですね。しかしゲーム内容を紹介する歌詞にもかかわらず、その熱唱力に聴き入ってしまいます。しかも、うれしいことにWEB限定公開のロングバージョンも公開されています。聴かせるタイプのTVCMにおいて、こうしたスペシャル版を用意することはCMウォッチャーにとってもうれしいですし、WEBを通じてアプリへの誘導も狙っているのでしょう。



つなげる人生よ
つなげる喜びよ
つなげるときめきをあなたに

この世に大切なのは
つなげることだけと
あなたは教えてくれる

◆リスペクトに基づいたアイデアがユーザーに響く!

 このTVCMのアイデア自体は、『サウザンドメモリーズ』→千メモリーズ→千のメモリー→愛のメモリー→松崎しげるさん、という流れで辿り着いたのだと想像できますが、単純な替え歌やパロディで終わっていないところがいいですね。もちろん、歌唱力バツグンの松崎しげるさんというキャスティングをしたからこそですが、きちんと熱唱してもらうことで、松崎しげるさんの魅力が最大限に発揮されています。また、熱唱しているのが替え歌だということも、ギャップがあって面白いですね。歌詞には『サウザンドメモリーズ』のバトルシステムの中核をなす、“つなげる”というキーワードが用いられ、連呼することで“つなげる”ことがポイントだと伝わってきます。

 このTVCMがただのコラボレーションに留まらないのは、最後に紹介されるコラボキャラ“シゲール”がもらえること。スタートダッシュ向けの強キャラをプレゼントするのではなく、コラボキャラをプレゼントすることで、アプリへより多くの視聴者を誘導できそうですし。さらに、CM中にコラボキャラへ変身する素振りや予兆があったりしたら、中二病的にドキドキしますね。黒の帝王から千夜の帝王への変身、見てみたかった。

◆タレントを起用するゲームCMに期待すること

 今回紹介したTVCMは、歌手を起用したという点では同じですが、それぞれの歌手の持ち味を活かした内容となっています。安易にタレントを起用したように見えるTVCMも数多く放映されていますが、そんな中でも目を引くのはやはり、ゲームやタレントへのリスペクトが感じられるものですね。ゲームCMの歴史においても、多くのタレント(歌手)が起用され、商品の魅力をアピールしてきましたが、今後もリスペクトが感じられるようなゲームCMに期待しています。

この記事を書いた人

真平(まっぴら)
TVCMを見続けて約30年。特にゲームのCMが大好物のCMウォッチャーであり、ゲームそのものよりもCMに興味があるダメゲーマー。最近はスマートフォンアプリのCMが賑やかになってきていることに、時代の動きを感じている。