【開発者インタビュー】アップルデザインアワード2014受賞! ゆるふわアクションゲーム『レオズ・フォーチュン』の開発者を直撃!

 今年のアップルデザインアワード2014を受賞した「レオズ・フォーチュン」の日本語版が、10月16日にAppStoreでリリースされ、10月23日にはPlayストアでAndroid版もリリースされた。シナリオやストーリーの日本語化などはもちろん、豪華声優陣も参加してインディーズゲームとは思えない完成度を持つアクションゲームになっている。
 今回TAPPLIは「東京ゲームショウ2014」を機会にスウェーデンから来日した「レオズ・フォーチュン」の製作会社1337 & Senriのおふたりにインタビューをお願いした。わずか4人という小さな会社だが、ゲームへの熱い情熱を込めて作った「レオズ・フォーチュン」について聞いてみた。

▲描きこまれた美麗なグラフィックのゲーム画面。マリモのような毛玉のようなキャラクター「レオ・ポンド」が泥棒を追いかけて、すべるように走って、跳んで、浮きまくる。テンポが良いパズルアクションゲームだ。

1337&Senri

1337 & Senri
開発者 : Johan Knutzen (ヨハンさん) ※写真後ろ左
開発者 : Shahrouz Zolfaghari (シャルズさん)※写真後ろ中
デザイナー : Anders Hejdenberg(アンデスさん) ※写真前
デザイナー : Karin Bruér(カーリンさん)※写真後ろ右

◆スウェーデン在住! 日本のゲームで育ったファンが作ったアクションゲーム

――まずは、簡単な自己紹介をお願いします。

ヨハン 私はスウェーデンのゲーム製作会社「1337 & Senri」のヨハンです。彼はシャルズ。1337 & Senriは大学時代に僕とシャルズが出会って、卒業してからふたりで設立しました。
 会社設立当初は2人だけでしたが、2010年にアンデス ヘイデンバーグという仲間に出会って、彼がゲームアーティストとデザイナーを担当してくれました。それでデビュー作の「ダークネビュラ2」というゲームを販売したあと、2011年に「ダブルストニー」というゲームを作りました。そして2014年の5月に「レオズ・フォーチュン(英語版)」をリリースして今に至ります。

ヨハン&シャルズ

――「レオズ・フォーチュン」は最初はアメリカで販売されたんですよね。評判はどうでしたか?

ヨハン 最初はアメリカとヨーロッパでリリースしました。一番評判が良かったのはアメリカでした。2番目はドイツです。3番はロシアかな? これまでに50万回くらいダウンロードされてます。

――「レオズ・フォーチュン」は有料アプリですよね。それで50万回はすごいですね。他に販売されている国はあるんですか?

ヨハン もともと英語版で作られていたゲームで、そのあとフランス語やイタリア語をはじめ、色々な言語でローカライズしました。そして日本語版を発売することになりましたが、日本語版はとてもスペシャルです。他の言語では、英語のナレーションに字幕をつけるだけでしたが、日本語版は声優を使って吹き替えでストーリーが楽しめるようにしました。

――日本語版は日本の声優さんを使っていますよね? 最初に聞いたときにびっくりしました。これだけ力が入っているのは、やっぱり日本で販売するにあたって完成度にこだわったということでしょうか。

ヨハン そうですね。日本語版は3ヶ月かけて作りました。まずはストーリーの翻訳をするのにデジタルゲーム翻訳者の長尾さんという方見つけて、彼に翻訳してもらいました。その後、彼に紹介してもらったディレクターさんのツテで、ワンピースのナミの声優をやっている岡村明美さん(マテンダ役)や、攻殻機動隊の荒巻の声を担当している大木民夫さん(レオ・ポンド役)に協力してもらって東京でレコーディングをしました。
 僕らはスウェーデンにいたので連絡が基本的にメールになってしまって大変でしたが、完成したものを聴いて、すごいものが出来たと驚きました。

ヨハン

――声優さんは日本でも本当に有名な方たちばかりですよね。「レオズ・フォーチュン」は声優だけではなく、音楽も良いと思うのですが、どなたがご担当されたんですか。

ヨハン 音楽はストックホルムに住んでいる、スウェーデン人のレイフという仲間が作りました。「レオズ・フォーチュン」のすべての音楽は彼が作ってくれました。音の奥行きにまでこだわって、ゲーム世界の右方向から音がすれば、右のスピーカーから音が出るようにして3D感が感じられるように作っています。ぜひヘッドフォンをつけてのプレイを体験して欲しいです。

――3D音楽のアイデアはヨハンさんやシャルズさんが出したんですか?

ヨハン そうですね。ゲームはグラフィックだけよくてもダメです。音楽、グラフィック、ストーリーのすべてが大事です。それぞれが最高になるようにこだわりました。

――こだわりの集大成ですね。次はゲームの内容に関してお聞きしたいのですが、今、あらゆる種類のゲームがある時代で、あえてアクションゲームを作ることにしたきっかけはあるんですか?

ヨハン きっかけは、僕らの幼少の頃の思い出にあります。スウェーデンの冬は夜が長いので小さい頃から僕らは家で日本のゲームばかりやってました(笑)。マリオやロックマンといったシンプルなアクションゲームですが、それにどっぷりとハマりました。それで「レオズ・フォーチュン」を作ろうと思い立ったときに、そういうシンプルなアクションゲームで行こうと思いました。

――「レオズ・フォーチュン」は単純なアクションではなくて、パズル的な要素も含んでいるようにみえますね。

ヨハン そうですね。アクションがシンプルなゲームが好きなんですが、ゲームはパズル的な要素も大事だと思います。頭を使って、謎にチャレンジして解いていくというのもおもしろさを感じるのに大切な要素だと思ってパズル的要素を入れました。

――おふたりともパズルゲームも好きなんですか?

ヨハン はい、大好きです。僕とシャルズのおすすめはインディーズゲームの「ブレイド( Braid)」です。僕は、おもしろいゲームを作るためにはアクション性、パズル性、ストーリー性の3つの要素が大事だと思ってます。

シャルズ また、親切さも大切です。「レオズ・フォーチュン」はパズル要素でつまずくことがあるかもしれませんが、細かくチェックポイントを設けて、何度でも挑戦できるようにしました。これで誰にでもストレスなくゲームを楽しんでもらえると思います。

ヨハン それと見た目にも気を使っています。子供や大人、誰にでも安心して楽しんでもらえるように、ふわっと親しみを感じるグラフィックにしました。

シャルズ

◆クレイジーなアイデアを出す監督だけど最高のパートナー

――キャラクターもそうですが、背景のグラフィックも本当にすごいですね。作るのは大変だったんじゃないですか?

ヨハン そうですね。最近のハードウェアの進化によって今のグラフィックが実現できるようになりました。これが3年前だったらきっと無理だったでしょう。今のモバイル機器は、プレイステーション4には負けると思いますが、普通に1Gメモリはあるので、プレイステーション3以上のものは作れると思っています。

――なるほど。とはいえ、できるとはいっても実際に作るのは大変ですよね。

ヨハン 大変でしたね! 色んな問題がありました。最初はシャルズがアイデアを出してきたんですよ。「すべてのグラフィックをユニークにしたゲームを作ろう。今ならできるよ!」と。確かにモバイルの性能はぐっと上がってきていたので、出来るかもしれないけどクレイジーなアイデアでした。彼はいつも出来なさそうなことを出来るようにしようとクレイジーなアイデアばかり出してくるんです。

――それで実際にゲームを作ってしまうのはすごいと思いますよ。

ヨハン 本当ですね。「出来なさそうだけど頑張りましょう」でここまで来ました(笑)。毎日16時間、週末も休みなくやりました。特に忙しかったのはリリース前の半年ですね。毎日毎日忙しく仕事してました。

――それだけ凝って作られたステージですが、全部でいくつ用意してあるんでしょうか。

ヨハン 全部で5つの世界があって、それぞれに4つのステージがあります。ひとつめは森の中、ふたつめは港、そして砂漠、雪のなかと様々な雰囲気のものがあります。 これらのグラフィックは、アンデスとカーリンのふたりの仲間が描きあげました。カーリンは22歳の女性スタッフです。彼女は若いですがものすごく上手な人で、出会えたのは本当に幸運でした。入った直後から1337 & Senriに無くてはならない大切な人になりました。

レオズフォーチュン画面01
▲行き止まり!? 下にある歯車が仕掛けになっているようだが……。こんな仕掛けもレオズ・フォーチュンの不思議な世界観にぴったりとハマり込んでいる。

――キャラクターデザインもそのふたりでやってるんですか?

シャルズ はい、そうです。「レオズ・フォーチュン」は最初はキャラクターを作らずに、ただ動きだけが確認できるプロトタイプを作りました。そこで、動きをみたときに「このゲームはどんなキャラクターがあうか」を考えたのですが、ジャンプしたり、道具を使ってクリアするというよりは、キャラクター自体が弾んだり、膨らんだりした方がおもしろいんじゃないかとアンデスから提案がありました。それで今のキャラクターたちが完成しました。

――確かにコミカルでかわいらしいというだけでなく、ゲームの動きにマッチしてますね。色んな道具の使い方を覚えたりというステップがあるよりは、キャラクターの能力で進んでいったほうが直感的にもプレイできそうですね。ゲームのプロトタイプはみなさんで作ったんですか?

ヨハン うーん、僕(だけ)?

 一同 (笑)

――ひとりで作ったんですか? シャルズさんはその時は何をしてたんですか?

ヨハン シャルズは、製作をはじめた時から一緒でした。いつも一緒にいて「これはどうしよう」「次はどうしよう」と、そういう悩みを持ったときにアドバイスや製作に関する管理をしてくれました。
 進行に関してはハードでした。ある朝、2人で話し合って、ある部分を「こうしよう」と決めたときにも、シャルズは「コレ今日できる? 今日作っちゃおう。今日出来ないとムリ!」と、悩む間を与えてくれませんでした。
 でも、それがいいんですよ。もし、ひとりだったら納得できるまでひとつの作業に没頭してしまったり、悩んだときにそこで止まってしまったりするんですが、シャルズがそばにいて何かあったときにすぐに相談できたり、時にはぐぐっと背中を押してくれたことで、ひとつのことにかかりきりにならずに済みました。

――厳しい監督ですね(笑)。

ヨハン でも、2人のチームは完璧でした。最高のパートナーだと思っています。

シャルズ

◆「レオズ・フォーチュン」が運んできたたくさんのラッキー

――それで「レオズ・フォーチュン」が完成して、リリースされたんですね。

ヨハン そうですね。リリース後の最初の週は、App Storeのメインバナーに掲載されていました。そこでたくさんの方がダウンロードしてくれてラッキーでした。

――ラッキーというより、それはいいものを作ったからですよ。

ヨハン でも、開発に1年半もかかっていたので、これでもし誰も遊んでくれなかったらどうしようかと不安ばかりだったので、とてもラッキーだと思いましたね。本当に頑張って良かったですよ。
 あと6月にあった“アップルデザインアワード2014”で受賞したのもダウンロードが伸びたひとつのきっかけになったと思います。「レオズ・フォーチュン」は5月にリリースされたんですが、その2週間後にアップルから電話があったんです。アップルの社員は「すごく良いニュースがあるから、来週サンフランシスコで話さないか?」と言いました。

――スウェーデンの会社に電話がかかってきたんですか?

ヨハン そうです。アップルの社員は「詳しいことは現地で話すからとりあえずサンフランシスコに来てください」というんです。僕たちはいわれるがままにサンフランシスコに渡り、アップルデザインアワード2014の授賞式の会場に行きました。 そうしたら、ステージの上に、僕とシャルズとアンデスとカーリンが写っている写真があったんです。その時も受賞したことは僕らに知らされてなかったのでビックリしました。

――伝えられてなかったんですか? それは驚きますね。

ヨハン はい。驚いていたら会場で「レオズ・フォーチュ~~ン!」とコールされたので「えーっ、どうしよう?」って感じでしたね。 アップルデザインアワードは世界中から6種類のアプリが選ばれたんですが、そのひとつに選ばれて、これも本当にラッキーでした(笑)。

――選ばれてからは周りの環境に変化はありましたか?

ヨハン それはわかりませんが、同じ時期に僕らはグーグルにもメールをして会いに行きました。そのときは「レオズ・フォーチュン」はAndroid対応をしていなかったんですが、プロトタイプを作って持って行ったんです。そうしたらグーグルから、その時は内密のプロジェクトだったAndroid TVの話をされたので、「僕らはAndroid TVでも「レオズ・フォーチュン」が作れる」と言うと、Android TVのコンテンツのひとつとして取り上げてもらえることになりました。これもまたラッキーですね(笑)。
 思い返してみると、このあたりで急速に色んなことが広がってきましたね。会社に閉じこもってがむしゃらに作業をすることしかできなかったのに、アップルデザインアワードを受賞して、グーグルにメールして「僕らなんでも出来るよ」と言ってまわって(笑)。

――「レオズ・フォーチュン」が1337&Senriの色んなラッキーのきっかけになってたんですね。

ヨハン2

◆ゲームをプレイしたことのない人たちにゲームの魅力を知ってもらいたい

――「レオズ・フォーチュン」が様々な国の人たちに受け入れられた最大の理由は何だと思いますか?

ヨハン リリース前は、全然自信がありませんでした。友人にもプレイしてもらって「イイネ!」とはいってもらいましたが、実際はわからなくて不安ですよね。リリースするときにレビュー記事で5点満点中5点の評価を受けたんですが、まだ自信は持てませんでした。それでリリースしてから今になっても、やっぱり自信はないですね(笑)。自分で作ったからだと思いますが、知らない人がプレイしてどう思うのか、ずっと心配してますね。だから、正直わかりません。

――シャルズさんはどうですか?

シャルズ 僕らは子供の頃にファミリーコンピューターなどでゲームに夢中になっていましたが、今までゲームをしたことがない人たちは、そういった経験がないと思います。でも、今はみんながiPhoneやAndroidといったスマートフォンを持っています。「レオズ・フォーチュン」はキャラクターの見た目もそうですが、みんなのプレイしやすさを考えて作りました。そういうところがたくさんの人たちの目に魅力的にうつったんだと思っています。

――なるほど。ゲームをプレイしたことがない人たちでも親しみやすいようにと考えて作られたんですね。

シャルズ そうです。私たちはゲームの魅力を知っていますが、世の中のほとんどの人はまだ知らないと思います。僕らはそういう人たちに、ゲームのおもしろさを知ってもらいたい、それを伝えたいと思っています。

ヨハン 僕のお母さんとかにも?(笑)

レオズフォーチュン画面2
▲子どもにも親しみやすいキャラクターたち。道しるべにもなるコインが仕掛けのヒントにもなっているので、ゲームも楽しく遊べるはず。

――ヨハンさんは未だに自信が持てないとおっしゃっていましたが、それはまだ「レオズ・フォーチュン」でやりたいことが残っているということですか?

ヨハン もちろん、まだまだ「レオズ・フォーチュン」でやりたいことはありますが、新しいゲームを作りたい気持ちもあります(笑)。色んなアイデアがあって、それが「レオズ・フォーチュン」に合うのか、違うものに合うのかわかりませんが、次に進むことが出来れば、それが自信に繋がるような気がします。

――それでは最後にこのゲームを遊ぶ日本のユーザーに対してメッセージをお願いします。

ヨハン そうですね。「レオズ・フォーチュン」をプレイしたら、ぜひ感想を教えてください。僕は少しですが日本語がわかるので、日本語でも全然大丈夫です(※実際にこのインタビューは日本語で行われました)。公式フェイスブックでも公式ツイッターでもいいです。もちろん返信もしますよ。僕たちのような小さな会社には、それがとても大きな財産になります。ぜひお願いします。

――シャルズさんもメッセージをお願いします。

シャルズ 日本でゲームを遊んでいるユーザーさんには、日本のインディーズ界をサポートして欲しいです。今回の東京ゲームショウ2014でもたくさんのインディーズゲームをみました。大きな企業のゲームは素晴らしいですが、インディーズゲームにも、斬新なアイデアを使った楽しいゲームがたくさんあります。日本のユーザーにももっとそれを知って欲しいです。「レオズ・フォーチュン」もインディーズゲームです。その魅力を知るきっかけになってくれればと思います。

――ありがとうございました。

ヨハン&シャルズ2

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