映画事業はヒット作に恵まれたことで増収増益。演劇事業では「Endless SHOCK」などの全席完売で業績好調。
東宝株式会社(以下、東宝)は、2020年2月期決算(連結)を4月14日(火)に発表した。当期の連結業績は、営業収入2627億6600万円(前期比6.7%増)、営業利益528億5700万円(同17.5%増)、経常利益は550億6800万円(同18.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は366億900万円(同21.2%増)となった。
経営成績に関する説明
当期は、台風などの天候不順の影響があったが、主力の映画事業で新海誠監督作品『天気の子』がメガヒットを記録してロングラン興行となったほか、多数の話題作や定番のアニメーション作品の配給を行なった。
また、演劇事業においても様々な話題作を提供した。
セグメント毎の業績は以下。
映画事業
映画営業事業のうち製作部門では、東宝において『天気の子』や『名探偵コナン 紺青の拳』『キングダム』など25本、国際東宝株式会社(Toho International, Inc.、以下、国際東宝)において『名探偵ピカチュウ』『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の共同製作を行なった。東宝では劇場用映画『思い、思われ、ふり、ふられ』などを制作した。
映画営業事業のうち配給部門では、前記作品のほかにも『映画ドラえもん のび太の月面探査記』『映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン ~失われたひろし~』を含む29本を、東宝東和株式会社などで『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』『ペット2』などの20本を配給した。
東宝グループとして、アメリカ子会社の国際東宝の重要性が増したことで、当連結会計年度より連結の範囲に含めた。
上記の結果、映画営業事業の営業収入は488億700万円(前期比9.5%増)、営業利益は124億200万円(同23.4%増)となった。
東宝における映画営業部門と国際部門あわせた収入は、内部振替額控除前で542億5000万円(同24.3%増)で、内訳としては国内配給収入が410億7400万円(同21.9%増)、製作出資に対する受取配分金収入が29億5400万円(同76.1%増)、輸出収入が41億3000万円(同53.2%増)、テレビ放映収入が14億7700万円(同5.3%減)、ビデオ収入が9億9100万円(同29.5%減)、その他の収入が36億2300万円(同39.8%増)だった。
映画興行事業では、TOHOシネマズ株式会社(以下、TOHOシネマズ)などで上記配給作品の他に『アラジン』『アナと雪の女王2』『トイ・ストーリー4』など、邦洋画の話題作を上映した。当期における映画館入場者数は、4997万人と前期比で4.4%増加した。それにより、映画興行事業の営業収入は912億5800万円(前期比8.6%増)、営業利益は149億4800万円(同18.7%増)となった。
劇場の異動については、TOHOシネマズが9月14日に熊本県熊本市中央区に「TOHOシネマズ 熊本サクラマチ(9スクリーン)」を開業、東京都千代田区の「有楽町スバル座(1スクリーン)」は10月20日をもって閉館した。これにより、東宝グループが経営するスクリーン数は、全国で8スクリーン増加の695スクリーン(共同経営56スクリーンを含む)となった。
映像事業では、東宝のパッケージ事業において、『映画刀剣乱舞-継承-』『舞台「刀剣乱舞」慈伝 日日の葉よ散るらむ』『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』などを提供した。出版・商品事業では、劇場用パンフレット、キャラクターグッズにおいて、『名探偵コナン 紺青の拳』や『天気の子』をはじめとする自社配給作品、及び『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』『アベンジャーズ/エンドゲーム』などの洋画作品も順調に稼働した。
アニメ製作事業では、映画『名探偵コナン 紺青の拳』や、テレビアニメ「僕のヒーローアカデミア」「BEASTARS」「Dr.STONE」などに製作出資を行なった。
また、アニメ製作事業・実写製作事業では、ゴジラを中心とした「東宝怪獣キャラクター」等の商品化権収入に加え、製作出資した作品の各種配分金収入があった。
ODS事業ではアニメ『プロメア』『海獣の子供』や、『ARASHI Anniversary Tour 5×20』のライブビューイングなどを提供した。
株式会社東宝映像美術及び東宝舞台株式会社では、人材の確保に努めつつ、原価管理の徹底と、映画やテレビなどの舞台・美術製作、テーマパークにおける展示物の製作業務などを受注した。
上記の結果、映像事業の営業収入は328億9500万円(前期比7.3%増)、営業利益は66億3900万円(同26.2%増)となった。
以上の結果、映画事業全体では、営業収入は1729億6100万円(前期比8.6%増)、営業利益は339億8900万円(同21.8%増)となった。
演劇事業
演劇事業では、帝国劇場において、3月「Endless SHOCK」が全席完売、4~5月「レ・ミゼラブル」、6~8月「エリザベート」がともに連日満席、9月「DREAM BOYS」が全席完売、10月は「ラ・マンチャの男」を上演し、11月「ダンス オブ ヴァンパイア」は満席、12月と1月「JOHNNYS’ IsLAND」、2月「Endless SHOCK」は全席完売となった。
シアタークリエにおきましては、「VOICARION IV Mr.Prisoner」が大入り、「ジャニーズ銀座2019 Tokyo Experience」は完売、「CLUB SEVEN ZERO II」は満席、「SHOW BOY」は全席完売、「ブラッケン・ムーア ~荒地の亡霊~」「シャボン玉とんだ 宇宙(ソラ)までとんだ」は満席となり、「グッドバイ」「VOICARION VII」が大入りとなった。
しかしながら、帝国劇場やシアタークリエ、日生劇場の各2月公演「Endless SHOCK」「VOICARION Ⅶ ~女王がいた客室~」などの作品は、新型コロナウイルス感染症の拡大状況と政府の感染症対策本部の方針に鑑みた結果、2月28日からの公演を中止している。
上記の結果、前期と演目などの違いはあるが、営業収入は175億4700万円(前期比比3.2%増)、営業利益は40億8200万円(同28.1%増)となった。
不動産事業
不動産賃貸事業では、東宝の「天神東宝ビル」が3月に開業、その他全国に所有する不動産が堅調に稼働し、事業収益に寄与した。
東宝スタジオでは、ステージレンタル事業で、映画やテレビ、CMともに順調に稼働した。
上記の結果、営業収入は296億6500万円(前期比1.3%増)、営業利益は136億1100万円(同0.8%増)となった。
道路事業では、受注競争の激化や建設技能者の慢性的な不足などにより、依然として予断を許さない状況が続いている。
スバル興業株式会社と東宝の連結子会社は、積算精度の向上や入札における総合評価方式への対応強化をはかるとともに、受注増に繋げるべく積極的な技術提案を行なった。それに加え、原価管理の徹底によるコストの削減や業務の効率化による収益の向上につとめた。
上記の結果、道路事業の営業収入は272億1100万円(前期比比8.1%増)、営業利益は40億9000万円(同34.2%増)となった。
不動産保守・管理事業では、東宝ビル管理株式会社及び東宝ファシリティーズ株式会社が、労務費や資材価格の高騰、人員不足の常態化などで、厳しい経営環境が続くなか、新規受注に取り組むとともにコスト削減につとめた。
上記の結果、営業収入は108億3600万円(前期比2.0%減)、営業利益は9億6900万円(同2.2%減)となった。
以上の結果、不動産事業全体では、営業収入は677億1300万円(前期比3.4%増)、営業利益は186億7000万円(同6.5%増)だった。
その他事業
娯楽事業及び物販・飲食事業では、東宝共榮企業株式会社の「東宝調布スポーツパーク」、株式会社東宝エンタープライズの「東宝ダンスホール」、TOHOリテール株式会社の飲食店舗や劇場売店で、利用者のニーズを捉えた充実したサービスの提供に尽力した。
以上の結果、その他事業の営業収入は45億4300万円(前期比0.2%増)、営業利益は7800万円(同9.9%減)となった。