『パックマン』『ゼビウス』を堂々と二次創作できる! 2年目を迎えた「カタログIPオープン化プロジェクト」のホントのところを聞く(前編)

 2015年4月、バンダイナムコエンターテインメントが突如発表した新プロジェクト、『カタログIPオープン化プロジェクト。聞きなれぬ単語が結合した難しそうなプロジェクト名だが、簡単にいうと「バンダイナムコエンターテインメントの持つゲームの知的財産権(IP)を、第三者が二次創作として活用できるようにする」というもの。

 当時発表された基本的な条件として

・公式サイトに挙げられている17タイトル(現在は4タイトル追加されて21タイトル)
・デジタルコンテンツに限る
・日本国内の配信に限る

 などがあげられている。このほか、細かな条件は参加形態にもよるので、『カタログIPオープン化プロジェクト』の公式サイトを参考にしてほしい(http://open.channel.or.jp/)。

 とはいえ長年の歴史を誇るバンダイナムコエンターテインメント。「またまた~、オープンとかいって~、実際はキビシイ審査とかあるんでしょう?」と思ってしまう。実際のところ、どういうプロセスを経て、世にコンテンツが発信されているのか、詳しいところを取材してみた。

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株式会社バンダイナムコエンターテインメント
NE事業部 マーケティングディビジョン NE事業推進部
大森 大将(だいすけ)
武井 由香
吉井 祐二
菊池 真
(敬称略)

◆バンダイ・ナムコ統合10周年記念プロジェクトとしてスタート

――自社の資産であるIPを、なぜ他人に預けよう、ということになったんでしょうか。

武井:『カタログIPオープン化プロジェクト』の枕詞に「バンダイ・ナムコ統合10周年記念企画」とついているぐらいでして、昨年はバンダイとナムコが統合して10周年だったことと、統合10周年をもって「エンターテインメント」と社名変更もして、ゲームだけじゃなくて、エンターテインメント企業として、会社の方針も大きく変わったこのタイミングで、いままでやっていなかった面白い企画をやれないか、という中で出てきたのが、この『カタログIPオープン化プロジェクト』です。IPを扱う会社で、それをオープン化する……というのは当然これまでやったことがなかったわけですけど、だからこそ面白いことができるのではないかと。とりわけ、『パックマン』や『ギャラガ』は、弊社ですべての権利を保有しておりますので、外部に対して迷惑もかからず、我々が自由にできるコンテンツということで……世の中にどういう影響が与えられるかな、というのが最初の経緯です。さらに、昨年はパックマン誕生35周年のアニバーサリーイヤーだったこともあり、ちょうどいいタイミングでもありました。

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――とはいえ、『パックマン』といえば看板中の看板じゃないですか。開放するにあたって、不安とかなかったんですか? 当然審査があるとはいえ、想像もつかない使い方をしてくる方もいらっしゃると思いますが。

武井:そうですね、まずこのプロジェクトの根本的なところに「監修はしません」というのがあるんです。弊社には別にライツ部がありまして……

――みなさんがいらっしゃるNE事業部はライツの部署ではないんですね!

武井:はい。通常のライセンス商品はライツ部で監修を行うのですが、今回はその流れとは異なり、デジタルコンテンツに限るということと、日本国内に限定したプロジェクトということで、我々NE事業部の事業の範囲で絞り、そのうえで、あくまでも二次創作として参加していただいているんです。なので、なぜ監修をしないかというと、二次創作って、監修してしまうとせっかくのオリジナリティとか面白さが失われてしまって、そもそものコンセプトからは外れてしまうので監修はあえて行わず……ということですね。とはいえ、なんでもよいというわけではないので、エントリーいただいた方には直接お会いして、その方の想いをお伺いしたり、こちらからプロジェクトの趣旨ですとか、やってほしくないこと、注意事項などをお伝えさせていただいてます。

――すべて実際にお会いしているんですか?

武井:はい。

――それは、九州の方でも?

武井:はい。たまに、Skype会議じゃダメですか? とお問い合わせいただくんですけど、その場合はコンテンツがリリースされるまでの間のどこかでお会いさせていただきたいので、「東京にいらっしゃる機会があれば、その際にお打ち合わせさせてください」という風にしています。

大森:公式サイトにも「カタログIPを開放します!」ってあるんですけど……そもそも開放ってなんですか、とみなさんまず思われると思うんです。実際に個別にお問い合わせいただければ、答えられることは多いんですけど、サイト上では説明しづらいことが多い。これはいいです、これはダメです、と書いてしまうと、「じゃあ書いてある範囲でこうすればいいか」となってしまうし、企画の幅も狭まってしまう。なので、今回「オープン化」と書いてありますとおり、我々もそれなりに覚悟を持って臨んではいるんですけど、だからといって、サイト上に「何やってもいいです」とは書けない。なので、我々が説明したいとか、障害として立ちはだかりたい、というよりは、お会いして、お話しして説明することで、ちゃんと趣旨を理解していただいて、やりたいことをやれる範囲でやっていただく、という意味合いが強いです。

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――なるほど。

大森:なので、「不安はありますか?」の答えとしては、「不安しかない」です(笑)。こんなの始めたらエライことになるでしょうという社内の意見もありました。例えば『パックマン』って、我々のスターなわけです。そのキャラクターが敵として出てきて、剣でザクザク切られて……ってのはダメでしょう、と当然言われる中で……「まあ、社名もエンタ-テインメントになったし、良くない?」という話をちょっとずつしていったら、最終的にOKになりました。一方で、パックマンがすごく有害なアプリに使われて、広告塔になったらどうするんだ、とか、いろんな懸念点はあったんですけど、まあとりあえずやってみるか、とフタを開けてみたところ、「好きなのでやってみたい」という方からの応募がほとんどで、そういった困るような企画のエントリーはあまりありませんでした。

――初期に『ゼビウス』が魚沼産のお米で村おこし、みたいなのがありましたけど……。

武井:『ゼビウス対ご当地怪獣ドキラ 世界の食いしん坊越後魚沼大集合!』ですね。魚沼地域の田園風景が、『ゼビウス』の背景とオーバラップするので、こういうのをやりたい、ということで応募いただいたとのことでした。

――打ち合わせでは熱の入ったプレゼンがされるんですね。

大森:もちろん、先方も企業ですし、事業として取り組まれております。「『ゼビウス』がお米を……」とか、「新潟の空を……」といったお話をお打合せでお伺いして、『ゼビウス』と魚沼が繋がる意外な組み合わせというか、発想に驚いたことを覚えています。
武井:地域創生、とおっしゃっていて、そんな良いことに使っていただけるならすごくありがたいな、と。あと、うちの会社じゃ絶対出てこない企画です(笑)。オープン化とはこういうことだよね、と確認できました。

『ゼビウス対ご当地怪獣ドキラ 世界の食いしん坊越後魚沼大集合!』
開発:有限会社パパイヤ電池開発
iPhone https://itunes.apple.com/us/app/zebiusu-duigo-dang-guai-shoudokira/id1028351694?l=ja&ls=1&mt=8
Android https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.co.papaya.android.dokira

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◆個人にもオープン! 「公認クリエイター」制度

――応募カテゴリーの中にある「公認クリエイター」というのは何ですか?

武井:公認クリエイターは個人の方にご参加いただけるプログラムです。
大森:もともと、法人しか対応しない予定だったんです。ところが、「法人だけじゃつまんないでしょ」という意見が出てきまして……。
武井:去年の4月に「ニコニコ超会議2015」に出展させていただいて、ブースに直接いらっしゃった個人の方からお問い合わせをいただいたりしました。
大森:昨年4月、法人向けにスタートしたんですが、「なんで個人はダメなんですか」というお問い合わせをたくさんいただきまして。社内からも「せっかくだから個人に作ってもらったほうが、二次創作としての醍醐味というか、より個性的なコンテンツが生まれるのでは」という意見が出てきまして。じゃあ個人もやりましょう、ということで……個人の方も、今は企業の方とまったく同じ条件でご参加いただけます。

――ちなみに、最初に公開されたアプリは何でしょう。

武井:最初にリリースされたのはおそらく『XEVI撃ち!』か『激ムズ!ドッヂアンドダッシュ ver.パックマン』です。
大森:「おそらく」というのはからくりがありまして……。当初は登録の手続き上、リリース日に関しては、我々はあまり把握できていなかったんです。先ほども申し上げましたが、監修がないので、我々の最終OKをもってリリースしてください、という手順ではなく、最低限のルール、チェックを守っていただければ、あとは好きなタイミングで配信してくださいというお話をしていたので。定期的にストアをチェックしてはいたんですけど、なんとなくでしかわからかったんです。

『XEVI撃ち!』
開発:株式会社オートクチュール
iPhone https://itunes.apple.com/jp/app/xevi-jichi!/id1025703273?l=ja&ls=1&mt=8
Android https://play.google.com/store/apps/details?id=com.hautecouture.xevious

『激ムズ!ドッヂアンドダッシュ ver.パックマン』
開発:アズアンドコー株式会社
iPhone https://itunes.apple.com/jp/app/id1017625472
Android https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.azco.dd_pack

――でも、それって心配じゃないですか?

大森:最初の話に戻るんですけど、心配だったです(笑)。なので現在は、公開後にご連絡をいただく形にさせていただいてます。

――公開後に差し止めしたことってこれまであるんですか?

大森:ないです。逆に、お会いして企画のご相談を受けた時に、我々が「それはやめてください」と言ってしまうような企画をお待ちしてます(笑)。普通に売り上げを上げようとして作ったアプリで、我々が困ることは本来ないはずなんです。お願いさせていただいているのは、権利表記を入れてくださいというお話と、許諾マークを入れてくださいというお願いはしていますが、ゲーム内容やクリエイティブに関して、こうしてくださいとか、困りますとか申し上げたことはほとんどないです。
武井:エログロはさすがにやめてくださいと言いますけど、これまでにそういった企画のエントリーはないですね。
大森:極端な例で、競合他社さんが「パックマンを敵で出したい」と言われても、どうぞ、というお話です。

――先日、ケイブさんの『ゴシックは魔法乙女』でやられていましたね。

大森:だいぶかわいい感じにしていただいて、あれはあれでよかったなあと思います。

『ゴシックは魔法乙女』コラボでドっきゅん?乙女のノスタルジア
開発:株式会社ケイブ
iPhone https://itunes.apple.com/jp/app/id924726102?mt=8
Android https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.co.cave.mahouotomeM

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>> 『メトロクロス』がなくて『源平』があるのはなぜ!?……後編に続く