【インタビュー対談】『スバラシティ』作者・KUWAKI RYUJIさん×攻略女流棋士・北尾まどか先生 ディープ視点で『スバラシティ』の秘密に迫った!

北尾まどかのスバラシティ

大好評だった、現役女流棋士・北尾まどか先生による『スバラシティ』集中攻略。パズルゲームの攻略としては滅多にないほど踏み込んだ攻略だったこともあって、いろいろな反響もあり、ついには『スバラシティ』アプリ内に記事へのリンクまで登場する結果となった。
そこで今回は、『スバラシティ』作者のKUWAKIさんと、攻略者の北尾先生との対談を実施。ディープ攻略者の視点で、明かされていなかった『スバラシティ』の秘密に迫る!

スバラシティ対談

スバラシティ対談

KUWAKI RYUJI(写真左)
iOSアプリ開発者。代表作は『スバラシティ』のほか、『ネコ脱出』、『ネコアップDX』、『モフーをふやそう』、『星のゴルフ』など。

北尾まどか(写真右)
将棋女流棋士二段、株式会社ねこまど代表。『どうぶつしょうぎ』作者。TAPPLIにて「女流棋士・北尾まどかの『スバラシティ』完全攻略9999年☆」連載。

(敬称略)

攻略記事「女流棋士・北尾まどかの『スバラシティ』完全攻略9999年☆」バックナンバー:【その1・基礎編】【その2・初級編】【その3・中級編】【その4・上級編】【その5・名人編】【インタビュー対談】【特別編・動画で見せます】

 

◆攻略記事で“やり尽くされた”!?

――まずはKUWAKIさんにお聞きしたいんですが、現役棋士の北尾先生が攻略を書かれているとお知りになって、最初はどう思われましたか。

KUWAKI 『スバラシティ』には、そんなに攻略法はないと思っていたので、あまり変わることはないだろうと思っていました。でも……やり尽くされましたね。焼け野原状態というか(笑)。

北尾 すみません(笑)。でも、別に大きな解があるゲームではないので、私もコツコツやる細かい手筋を積み重ねただけです。ほとんどプレイ日記でしたから。

――北尾先生が最初に『スバラシティ』に魅力を感じたのは、どんなポイントですか?

北尾 まず、雰囲気が独特なところに興味を惹かれました。シンプルで操作がしやすくて、奥が深くて中毒性があって、ずっとできるんですよね。気がついたら時間が経っている、ハッ!みたいな(笑)。そういうゲームこそ、いいゲームだと思うんです。
 それと、タイムアウトしない、焦らなくていいのがいいところだな、と思います。アプリゲームでは大事なところで、ちょっと止めて移動して、また時間があるときに続けてできる。そういうところは、すごくいいです。

――KUWAKIさんは、『スバラシティ』に関しては、タイム制はあまり考えなかったんですか?

KUWAKI 今回はスマホ向けに、タイムは考えないようにするのがいいだろう、と思っていました。そこは、『Threes!』というゲームを参考にした部分がありますね。『スバラシティ』は、『Threes!』に近いタイプのゲームですから。

北尾 私も『Threes!』はだいぶやったんですけれど、4×4でちょっと狭い感じがするんですよね。こういう系統のゲームは好きで、よくやってはいました。

KUWAKI 『Threes!』は、ちょっと敷居が高いところもありますね。足し算が、一見難しそうに見えて。

北尾 私、実はあまり数字が得意じゃないほうなので(笑)。数字が好きな人はあれでいいと思いますけれど、あれがカラーのグラデーションだったら良かったのにな、と思うんです。『スバラシティ』はカラー分けでもあって、その点は見た目に分かりやすいですよね。

KUWAKI なるべく簡単に見えるようにできた気はしています。

北尾 でも音を出すとビックリする、みたいな(笑)。ネーミングや市長アイコンの顔のユルい感じと、音楽のギャップには、これは……!と思いました(笑)。

KUWAKI 音楽は、最後につけたんです。初めはああいう荘厳なイメージではなかったんですけれど、最終的にバベルの塔の絵を入れたときに、それに合わせてつけた感じです。なので、初めの入り口はああいう感じなんですが、やり込むと合ってくるかと。

北尾 バベルはそういう感じですよね。バベルを建てるために、ちゅどーんちゅどーんとマスを破壊していると、あれがピッタリな感じなんですよ(笑)。例えば8000年くらい経って、本当に人が住んでるのかな、もう市長しかいないんじゃないかな、という気持ちになりながら壊しているわけですから。

――もう家屋とビルしか見たことがないから(笑)。

北尾 そうそう、人の姿はもう出てこないので、これはカウントされているだけで実際にはいないのでは……とか(笑)。その微妙なバランスが、私にはツボでした。

スバラシティ対談

◆『スバラシティ』人口得点計算の秘密

――『スバラシティ』の世界観は、最初に考えたものですか?

KUWAKI いや、作りながらですね。最初はレベル10までの家の、あのイメージだったんですけれど、その後のランドマークやモニュメント的なものについては、紆余曲折ありまして。架空のものを描いたら、すごいビルが建っても面白くないんですよ。やっぱり知っているビルが建つとすごく楽しいので、そっちになりました。で、最終的なもののイメージは何だろう、ということで、バベルの塔に落ち着いた感じです。

北尾 バベルも何段階もあり、その後だんだん色が変わっていき、最後は市長が塔の上に乗っかっちゃっていますよね。いやーとうとうここまで来たか市長!って、結構感動的でした(笑)。

KUWAKI バベルの塔は、塔としての完成では金色なんですけれど、だいたいその辺で普通の人の限界が来るだろう、と思っていたんです。だから、その後の色変えは、どれだけ出せる人がいるのか、謎だと思っていましたね。出せる人いるんだろうか、でも一応色変えも描いておこう、くらいの気持ちでした。

北尾 そうなんですね。そういえば、なぜ黒バベルの上を作らなかったんですか? 黒バベルは23マスぶんなので、2マス空きでできて、ギリギリのフルではないですよね。

KUWAKI メニュー画面がですね……最後に一本ハミ出して付け足さなくてはいけなくなるので、面倒だなと(笑)。

北尾 いや、あのメニューの建物一覧を埋めて「あれ、もう一個いけるのに」、「これは隠しがあるな」と思って24マスで作ったら、同じ黒で。あれ?みたいな感じでした。やりこんだら、普通そこまでやるじゃないですか?

――普通のプレイヤーはできないと思います(笑)。

KUWAKI いやあ、手抜きです(笑)。

スバラシティ対談
▲バベルの塔が並ぶ一覧画面。確かに黒バベルまでで数がピッタリ。

北尾 次のアップデートで、隠しに期待してます(笑)。そういえば、対談の前に改めてハイスコアを狙ってみたんですけれど、建物全体のレベルは高いのに、前にやったときよりもスコアが低いんですよ。この理由を聞いてみたいな、と思って。

KUWAKI レベル10の白いビルを作ったところで、建物レベル的にはストップがかかって、どれだけ集めても白いビルになるんです。ただ、そこで集まったぶんは、実は端数として取っておいてあるんです。それが溜まり溜まってくると、得点に違いが出てくるんです。

北尾 絵だけで判断できない部分があって、例えばレベル9と1を合わせてレベル10ができるときもあれば、9と3あたりを合わせてもレベル10にならないこともあって。ひょっとして、同じレベル10でも、人口50人のときもあれば、150人くらいのときもある、という感じですか?

KUWAKI そうなりますね。

北尾 となると、バベルになったときにも、元が多いほうが人口が多くなりますよね?

KUWAKI 多いです。

北尾 そうですよね! そうなんじゃないかと思ってたんですよ! 前は黒バベル1本で2億5000万人くらいだったのが、今回は軽めに作っていたら、2億4000万を切るくらいだったんですよ。じゃあ今度からは白を作る段階でミッチミチにして、それを集めないといけないですね。

――序盤の攻略が変わりそうですね。

北尾 全然違いますね。攻略記事では、途中で細かく手数を稼ぐことで市長を増やしやすくするようにしていたんですけれど、そうなると変わってきますよ。市長を99まで溜めたら、なるべく重たいビルを作ろう、ということになりますね。いやぁ、これで謎が解けました!

――攻略連載の後半に続いて、コアな質問でしたね(笑)。

※この計算式については、対談の後、KUWAKIさんがご自身の開発ブログで具体的に公開されました。
TamagoLoop ゲーム開発ブログ
http://tamagoloop.blog.fc2.com/blog-entry-114.html

スバラシティ対談

◆作者を悲しませる“卒業宣言”

北尾 KUWAKIさんは、ご自身でも『スバラシティ』をプレイされたりするんですか?

KUWAKI もちろんやります。作っているときに検証としてもやりましたけれど、休んでいるときにもやるようになっちゃって。ちょっと良くないので、自分に禁止令を出しました(笑)。

北尾 私の知り合いも、やってはアンインストールして、また戻してやって、というのを繰り返してますよ(笑)。「もう何度目かの卒業です」って言ってるんですけど、この間とうとう黒バベルができたそうです(笑)。

KUWAKI Twitterでも「もう『スバラシティ』やめます」と宣言する人をたまに見かけるんですけれど、悲しい気分になりますね……(笑)。

北尾 宣言しないとやめられないのは、中毒性がある証拠ですよ。

――北尾先生には集中連載で5回に渡って攻略していただきましたが、何段階かゲームが変わるタイミングがありましたね。4色になるところから、スバラシティを目指せる段階、金の建物を壊し始めて市長を溜める段階と、人によってゲーム内での狙いが変わっていく印象があります。

北尾 市長を溜めるというのを人に言うと、周りが「えっ……」となりますね(笑)。バベルを作ってまた壊すと延々と終わらないですから、最初は終わり方が分からなくなったりしました。それで、まず9999年までやるのと、市長を99まで溜めるのをやってみるところから始めました。

――それをお聞きしたときに、棋士がゲームを本気でやるとえらいことになる、と思いました(笑)。

北尾 私、凝り性なので(笑)。

KUWAKI 市長を増やす考え方は、そんなには想定していなかったですね。最初に出したバージョンでは、市長が99を超えるとバグっていたくらいですから。

北尾 市長が99までで、それ以上にならないのもポイントなんですよね。年数は表示されていないだけで、計算されているんですけれど。9999年を超えた後、すごく集中している最中に、100年を超えてコロコロ~と市長が増えたお知らせが来ると「ああっ!」とビックリするんですよ(笑)。その辺りになると、もうバベル1件建てたところに2億人住んでいる世界ですからね。

KUWAKI もう市長じゃないですよね(笑)。神様になっちゃう。

北尾 神様になって、最終的にはバベルの塔の上で星になるわけですね! すごいセンスです。デザインもいいですよね。

――Twitterなどの反響を見ても、男女関係なく受けている印象がありますね。

KUWAKI 男女はそれほど考えていなかったんですけれど、あまりゲームっぽくない感じは目指していました。大きなビルを建てたときに、どういう絵柄だと嬉しいかな、と思ったときに、こういう感じの絵になりました。描く範囲が限られているので、すごい建物だというのを表現するには、精密に描くしかないんです。それで苦労するハメに(笑)。

北尾 これをひとりで描かれたのは、すごいと思います。

スバラシティ対談

◆ひとり用なのに共有したくなるゲーム

――攻略記事の中で秀逸だったのは「4色くるくる」という言葉の発明でしたね。

KUWAKI あれは嬉しかったですね。たぶん多くの人がやっているんでしょうけれど、それに名前にをつけてもらえて。

北尾 「階段積み」とか「挟み込み」とか、『スバラシティ』でもつい考えちゃいますね。『ぷよぷよ』も結構やったので。

KUWAKI 『スバラシティ』については、ひとりでプレイするゲームなんですけれど、何となくみんなと共有している感じが出てきたのが、あまりいままでにない感覚で嬉しかったですね。
『スバラシティ』は、実はそんなにコンピュータに依存していないゲームなんです。ルールだけで組まれているのに近いので、そう作ると競ってもらえる感覚が生まれるのかな、というのは、作る側としては大発見でした。

北尾 やっていると、「いまこんな感じ」とか「このくらいできた」とか、つい画面キャプチャを撮って人に送りたくなるんですよ。それに「おおー」とか言ってもらえるのが楽しくて。共有できるゲームですよね。

KUWAKI ソーシャルゲーム的なものや、オンラインで対戦するゲームでなくても、こういうもので勝負できるかもしれない、というのが見えたのは、すごく嬉しいし、ホッとしたところでもあります。ひとりでプレイして、他の人にも自慢できる形が理想です。

――プレイヤーのみなさんにも、ぜひ攻略を読んでいただいて、自慢できる街づくりを目指してほしいところですね。北尾先生の攻略の視点は、特に後半、僕のような並みのプレイヤーとはちょっと違ってたりしますけれど。

北尾 攻略を読んでいただければ、だいぶ私の気持ちが分かっていただけるのではないかと(笑)。

KUWAKI あまりそういう人向けには作ってなかったりするんですけれど(笑)。東京タワーができて楽しい、というくらいが一番いいというか、僕もそういう人を見ているのが楽しい(笑)。バベルを並べられるとヒヤヒヤします。

北尾 この間、私も東京タワーを建てまくって遊んだりしましたよ。そういうのもありましたよね?

KUWAKI GameCenterにあったりします。

北尾 そういう遊びが増えるのも面白いかな、と思いました。

スバラシティ対談

◆『スバラシティ』攻略はいまも成長中!?

――KUWAKIさんは、しばらくは次回作の予定はないんでしょうか。

KUWAKI とりあえず、『スバラシティ』を息の長いゲームにしたい、というのがあります。作りたいものもありますが、ちょっと後回しです。パズルゲームで生きていこうかな、とは思っていますけれど。『スバラシティ』でパズル好きに集まっていただければ、と思います。

北尾 もともとパズルはお好きだったんですか?

KUWAKI (ビデオ)ゲームから入っているので、アクションパズル的なものが好きなんですよ。あまりガチガチのパズルだと、ちょっと難しいですね。

北尾 私も『ぷよぷよ』はだいぶやりました。黒い携帯型の……ゲームギアでしたっけ?

――ゲームギアでやっていた人は珍しいですよ(笑)。

北尾 クラスの子が持ってたので、それでやってたんですよ。

KUWAKI スーパーファミコンの『パネルでポン』(1995年、任天堂)というゲームがあるんですが、僕はあれが大好きなんです。

――意外ですね。『スバラシティ』とは正反対なアクションパズルで。

KUWAKI あの辺りから、忙しいパズルも増えましたね。

北尾 『スバラシティ』は、焦らなくていい、延々と読めるところがいいですね。

KUWAKI そこは、今回とても評判がいいところです。

北尾 それと、待ったがないところが潔くて好きです。感想戦ができたら面白いかもしれないですね。動画を撮ってみたいな、とか。人のプレイを見ていると、へぇ、と思うこともあるので。

KUWAKI 横が詰まってから、どうやりくりしているのか、なんていうのは気になりますね。

北尾 私は、攻略を書いたときといまとで、だいぶやり方も変わっていますね。いまは下に並べることはまずないですし。

――実は北尾先生は、攻略連載中にどんどん成長していたんですよね。

KUWAKI そうなんですか(笑)。

北尾 そりゃそうですよ! 点数もどんどん伸びたし、やり尽くしてませんから。だから、あれはプレイ日記であって、攻略し終わった後の振り返りではないんです。いまは市長を溜めるまでの回転も早くなっているので、技術も向上しています。

KUWAKI なんだかドキドキしてきました(笑)。市長を溜めるのは、そんなに簡単ではないはずなんですけどね……。

北尾 でも、上級者もまだまだ楽しむ余地があるのが『スバラシティ』のいいところです!

スバラシティ対談

(2015年7月収録)