【映画プロデューサー千葉善紀の“コレやってます!”】ゲーム版『マッドマックス』、本当の熱い物語は終盤にやってきた!

日活千葉P

映画『冷たい熱帯魚』『ヤッターマン』『片腕マシンガール』『凶悪』『極道大戦争』など、プロデューサーとして数々の話題作を手がけた鬼才・千葉善紀は、実は日本映画界有数のゲームファンだった!
家庭用ゲームを中心にプレイする千葉Pと、ゲーム雑談をしてみよう、というこのコーナー。あくまでもひとりのゲームファンとして、千葉Pが言いたい放題!

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千葉善紀
 日活株式会社 プロデューサー

(敬称略)

◆インターセプターよりおじさんの車!?

(前回「期待値MAXのゲーム版『マッドマックス』、クリアしたので語り倒します!」より続き)

――前回に続き、ゲーム『マッドマックス』(PS4/Xbox On/PC用、ワーナー・エンターテインメント・ジャパン)の話です! 今回は、まず実際に千葉さんのクリア済みデータでプレイしてもらってますが、ちゃんとマックスらしい革ジャンを着てますね。

千葉 序盤は、インターセプターも奪われちゃって出ないし、服装も地味で、『マッドマックス』感が全然出てこないんですけど、ワーナーさんが発表している通り、クリア後にはマックスの革ジャンとインターセプターが手に入ります。一番最後なんで、手に入ってからはそんなにやることないんですけど(笑)。
 終盤になると、ホームを出たところから敵もグイグイ来るんですけど、インターセプターに乗ると後ろにいるおじさんが乗れなくなっちゃって、ハープーンなどの武器が全然使えなくなっちゃうんですよ。すごく走る代わりに、意外と使い勝手がない記念品(笑)。ショットガンひとつで荒野に出る『マッドマックス』の殺伐とした感じを楽しむのにはいいです。

――後ろに乗るおじさんは、ゲームオリジナルキャラクターのチャムバケットですね。以前、千葉さんは「こんなおっさんは『マッドマックス』にいない!」って怒ってましたけど(笑)。

千葉 このおじさんがいなかったら、こんなところで生き残るのも大変ですよ。車の修理もしてくれるし、インターセプターより、おじさんの車がいい(笑)。

――『マッドマックス』ってそんな話でしたっけ?(笑)

千葉 いやぁ、ゲームをやっていけば分かりますよ。いかにこのおじさんが頼もしいか(笑)。
 まあ、革ジャンは序盤から着たかったですけどね。やっぱり、マックスの革ジャンはカッコ良いですから。

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▲“頼りになるおじさん”ことチャムバケット。

◆『マッドマックス』好きにもオススメ

――序盤でつまづきがちな人に向けて、中盤以降で印象的なシーンはありましたか?

千葉 地下に潰れた空港があるんですけど、相当広かったりしますよ。そこに車でゴリゴリ入って行けます。どこまでも車で移動するのは、このゲームの面白いところですね。
 この空港、すごくいいマップなのに、大した敵がいないのはもったいないんですけどね。

――屋内のシーンが多いのは、ちょっと『サンダードーム』っぽくもあるんですよね。

千葉 いい感じの敵が少なくて、だいたい同じようなのが多いですからね。ラスボスのスクロタスはかなりいいですけど。

――オープニングムービーで見るだけでも、あのスクロタスはいいキャラクターですよね。

千葉 しかもドラマ的にも「この野郎……ぜってえ許せねえ!」という高揚感があります。後半のストーリーは本当にグッときますよ。血沸き肉踊る、映画的な熱さ、怒りがあって、最後の終わり方は本当にカッコ良い。シビれます!
 

――オープンワールド系のゲームとしては、わりと早めというところですか。

千葉 敵の歯ごたえもそれほどではないので、3回くらいリトライすれば中ボスも攻略できちゃうし。なので、ゲーム初心者の人でも、それほどハードル高くなく進める設計にはなっていると思います。
 時間をかけて敵を攻略して、ゆっくりスクラップを集めて進めればいいんですよ。ただ、あれほど集めたスクラップも、終盤にはほとんど使い道がなくなってるので、そんなに必死に集めなくてもいいかも(笑)。

――物資としては貴重なはずのガソリンも、さして重要でもなさそうですしね。

千葉 映画の中では殺し合いになるくらいの貴重品だったんだけど、ゲームでの扱いはわりと雑(笑)。途中までは、ひたすらスクラップを集めて、ガソリンのポリタンクで敵陣を爆破するゲームですから(笑)。

――「マッドマックスってこうだったかな?」という(笑)。

千葉 それもこれも、すべては序盤の我慢です。最後のドラマに向けての下積みだと思えば。そんなに美味しい思いばっかりできないよ、というのが、スタッフからのメッセージじゃないですかね(笑)。
 でも、そのくらい、最後は結構グッとくるゲームでしたよ。

――ということは、『マッドマックス』好きにもオススメできそうですか?

千葉 オススメですよ。終盤は本当に面白い。敵もガンガン来ますし、オオッ、という展開の連続ですから。それに、そこまでの流れがないと、すごく短いゲームになっちゃいますしね。
 最近はキャンペーン(ひとり用ストーリーモード)はすぐ終わっちゃって、あとはマルチプレイでよろしく、っていうゲームも多いですけど、それに比べるとドラマもちゃんと作られてますよ。

――『マッドマックス』はマルチプレイなしで、シングルプレイのみですからね。

千葉 マルチがないのは残念ですね。自分でカスタマイズした車で、友だちとガンガンレースしたいところなんですけど。

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◆砂嵐に飲まれる『マックス』体験

――おお、プレイ中のゲームのほうでは砂嵐が来ましたね。

千葉 そうそう、この砂嵐が重要でした!『フューリー・ロード』で印象的だった、あの砂嵐が体験できるんですよ。雷はバコバコ落ちてくるし、巻き込まれたらどこに行っていいか分からなくなりますから、本当に怖いんです。

――『フューリー・ロード』の山場シーンのひとつですからね。

千葉 あの砂嵐が体感できるのは、このゲームのいいところのひとつです。風でハンドルは取られちゃうし、車に雷が落ちたらブッ壊れますからね。

――気分は『フューリー・ロード』のメインキャラクターのひとり、「What a lovely day!」のニュークスですね。

千葉 『フューリー・ロード』に出てきたキャラクターだと、炎のギターを弾くドゥーフに近い人も出てくるんですけど、ちょっと作りこみがアマい(笑)。美味しいキャラなんですけどね。

――ドゥーフ・ウォリアーは『フューリー・ロード』ファンには最高の素材なのに(笑)。

千葉 もちろん、ゲームを作っているタイミングでは、あまり映画の細かいキャラクターまで知らされていなかったんでしょうね。ゲームを作った人も『フューリー・ロード』を観て「こんなキャラならちゃんと出したのに!」って思ったかも(笑)。

――映画のゲーム化では、初期設定やスケッチの段階でゲームを作らなければならないことも、結構ありますからね。ゲームはゲームで、製作時間がかかりますし。

千葉 そういう意味では、何しろこのゲームを最後まで作ってくれた人には感謝したいですよ。僕が高校生の頃、こんなゲームができるようになるなんて、考えられもしなかったですから。このクオリティで、自分がマックスになって荒野をさまよえるなんて、あり得ない幸せですよ。

――その辺は、いまのほうがゲームと映画の相性は良くなりましたね。

千葉 まったくです。いい時代だ!

――みんな今年はあんなに『マッドマックス』で沸いたんだから、ぜひプレイしてみて欲しいところですね。

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◆2015年は映画ゲームの年!

千葉 年末の『スター・ウォーズ』も含めて、今年は映画ゲームの年なんですよ。『マッドマックス』もそうだし、僕の周りでも『スター・ウォーズ バトルフロント』(2015年版 PS4/Xbox One/PC用、エレクトロニック・アーツ)が気になっている人がたくさんいるので、みんなこれを機にPlayStation4を買うべき。値段も安くなったし、PS4を買うオトナが増えてくれるといいな、と。

――『スター・ウォーズ バトルフロント』はパブリックベータ版も話題になりましたしね。

千葉 『スター・ウォーズ バトルフロント』については、僕はアメリカでリリースされる、ハン・ソロの冷蔵庫つきエディションを予約してます。

――カーボナイトに閉じ込められたハン・ソロが冷蔵庫になってるやつですか!

千葉 あれがそのままミニ冷蔵庫のドアになってるやつですね(笑)。
 ちょっと前まで、映画のゲームと言えばクソゲー扱いで、日本では発売もされない不遇の時代が続いてましたから、いまの状況はありがたいですよ。『エイリアンvsプレデター』(2010年、PS3/Xbox 360/PC用、Ingram Games)も発売されないし、『キャプテン・アメリカ』(『Captain America Super Soldier』 2012年、Xbox 360用ほか、Sega Of America)に至っては日本でクリアまでやったのは僕だけじゃないかというくらい(笑)。
 それに比べたら、今年は映画ゲームだらけで、しかもゲーム内容がちゃんとしているのが多い。まあ、確かに昔の映画ゲームはクソゲーも多いですけど(笑)、いまは内容が伴ったものが出る、これが今年の特徴です。

――ぜひみんなにプレイして欲しい時代が来ましたね。

千葉 『スター・ウォーズ バトルフロント』はみんなでやりたいですよ。40人対戦もできますからね。

――『バトルフロント』シリーズなので、乗り物にも乗れますからね。ということは、次回は……?

千葉 いや、もうひとつ、楽しみにしてたやつが来たんですよ。『Guitar Hero Live』(PS4用ほか、Activision)です! これはすごいですからね。前までは単なるCGでしたけど、今回は実写で、自分がステージに立って、観客の反応をリアルに体験できます。

――ステージ目線ですか!

千葉 下手こいた演奏したら、客からモノを投げられますからね! ブーイングですよ。

――おお、アメリカン!

千葉 これも最初は難しいんだけど、ゲームの良いところは、何度もプレイしていると、いつかはクリアできる日が来ることなんですよ。
 僕は普段の生活や仕事でも、本当に厳しいトラブルが起きた時でも、「これはゲームだ、クリアできないゲームはない」と自分に言い聞かせてるんです。死にたくなるようなトラブルでも努力していればいつかは解決するんです、人生ってそういうものなんですよ。だから、子供にゲームをやっちゃいけないという親もいますけれど、僕はやらせるべきだと思ってるんですよ。努力すれば何とかなる、というのを教えてくれるのもゲームの良さですからね。

――今回は『マッドマックス』愛で始まって、ゲーム愛で終わりましたね。次回はどのゲームの話をしてくれるのか、楽しみにしてます!

千葉P madmax

(2015年11月収録)

Mad Max © 2013 Warner Bros. Entertainment Inc. Developed by Avalanche Studios. All other trademarks and copyrights are the property of their respective owners. All rights reserved.Mad Max and all related elements are trademarks of and © Warner Bros. Entertainment Inc.