映画『冷たい熱帯魚』『ヤッターマン』『片腕マシンガール』『凶悪』『極道大戦争』など、プロデューサーとして数々の話題作を手がけた鬼才・千葉善紀は、実は日本映画界有数のゲームファンだった!
家庭用ゲームを中心にプレイする千葉Pと、ゲーム雑談をしてみよう、というこのコーナー。あくまでもひとりのゲームファンとして、千葉Pが言いたい放題!
今回は発売からひと月以上経ってもハマりが冷めない『ディビジョン』。千葉Pはなぜここまで『ディビジョン』にハマるのか?
千葉善紀
日活株式会社 プロデューサー
(敬称略)
◆プリンスとXbox 360で感じる時代の終わり
――今日は、まず千葉さんがどうしても話したいことがあるとかで。
千葉 そう、昨日の夜(編注:収録日は4月22日)、アーティストのプリンスが亡くなったという衝撃的なニュースが出たんです。かなりヘコんでいるんですよ。
ゆうべはちょうどアイアンメイデンのライブを観て、このオヤジたちスゲェな、元気だなと興奮したばかりだったんです。で、家に帰ってきたら、このニュースで。
――プリンスの件は、いきなりでしたからね。
千葉 今年はデビッド・ボウイが亡くなって、プリンスまで亡くなって。いろいろな時代が終わっていくんだな、という感じがするんです。このふたりとも、僕は横浜球場での大きなコンサートを実際に観てますから、青春の思い出なんですよ。
――『パープル・レイン』(1984年の映画)や、ティム・バートン監督版『バットマン』(1989年の映画)の主題歌「Batdance」もありましたし、映画にも縁が深かったですね。
千葉 で、ゲームではもうひとつ、Xbox 360の生産が終了したというニュースも出ました。360も僕には大事なもので、しばらくゲームから離れていた僕がもう一度ゲームの世界に戻ってきたのは、360のお導きですから(笑)。一時は360のゲームしかやってませんでしたからね。
それが生産終了とは、これも時代の流れだなと。ちょっとショックですよね。
――奇しくも、プリンスもXbox 360も、アメリカン・スターなんですよね。千葉さんの洋楽指向が伺えるというか。
千葉 そう、僕らはもろアメリカかぶれ世代ですから(笑)。おもちゃもゲームも音楽も、サブカル的なものは、すべてアメリカの影響を受けているんです。アメコミも好きですしね。特にXbox 360は洋ゲーの象徴のようなもので、僕はそこからいまのゲームに入っているから。それがなくなるのは、時代の終わりを感じます。
――いまでこそPS4を中心にプレイしていますけど、千葉さんはむしろXbox Liveの「実績」を積み上げまくってきたそうですからね。
千葉 実績100(編注:PS Networkのトロフィーで言う“プラチナ”)を達成したゲームがいくつあるか(笑)。あの発想も、Xboxが最初ですよね。
――やり込みの可視化ですね。
千葉 オンラインの遊びを提案した、元祖ですよね。
――ハードは移っても、千葉さんはアメリカンなゲームを愛し続けているわけですね。
千葉 愛し続けますよ、僕は(笑)。やっぱり、洋ゲー命なところは変わっていないので。
◆『ディビジョン』のオンラインRPG的魅力
――そんな千葉さん、日本製の『DARK SOULS III』(PS4用ほか、フロム・ソフトウェア)をやると名言していたのに、いまだに始めていないそうですね。あれほど熱っぽく語っていたのに、なぜか始めていない理由が……。
千葉 『ディビジョン』(PS4用ほか、ユービーアイソフト)をやり続けているからなんですよ(笑)。あまりにも『ディビジョン』にハマりすぎちゃって、他のゲームどころじゃない。
――この収録の時点で、千葉さんは買ってからもう一ヶ月以上経っているじゃないですか。
千葉 経ってる(笑)。でも『ディビジョン』をやり始めたら、他のゲームはやる気が起きないんですよ。寝ても覚めても『ディビジョン』。僕の周りの連中も、この『ディビジョン』だけには夢中で、「いつやるんですか」の大合唱ですよ。
――千葉さんの周りのプレイヤーは、わりと移り気だと聞いていたんですけど。
千葉 冷めやすいですよ、いつもは。なのに、冷めないんです。
――『ディビジョン』は、どこがそんなに人を惹きつけるんでしょうね。
千葉 完全オンラインのゲームなのが大きいと思います。一番驚いたのは、この間のアップデートで、ルールまで変わっちゃったところ(笑)。「はい、レベル制度のルールを変更します」で、アップデートでもうそれができちゃってるのはすごいですよ。
昔のコンシューマゲームは、一度買ったら基本的にはそのまま。最近は修正パッチくらいはありますけど、これだけ大きな要素を変えてくるとは思わなかったですね。
――不具合修正は、たいがいのゲームであるとはいえ。
千葉 まあ、『ディビジョン』も不具合だらけのゲームでもあります(笑)。ゴミ箱に挟まって、何度動けなくなったか(笑)。隙間から落ちて、変な空間に行っちゃったり。
そういうこともありつつも、この間の大型アップデートでの、ルール変更には驚きましたよ。もし最初から考えていたなら、本当にとんでもない。
――具体的には、レベル上限以降の強さの差別化として、突然「武器スコア」というルールがいきなり導入されたわけですね。
千葉 そう、突然(笑)。上限のレベル30になったらみんな大して差がないだろうと思っていたら、この武器スコアでもっと強い武器があることが発覚して、こりゃ何だ、ということになっているんです。
――「俺たちの知らない強い武器がまだあるの!?」という話になっているわけですね(笑)。
千葉 僕も、ダークゾーンで敵が落とした「ミダス」という武器を持っているんですけど、これがまあ強い(笑)。ダークゾーン内には、名前付きの強い敵がいるんですけど、それを倒すと上位の武器を落とすんです。これ、武器スコアもえらく高かった。
――レアアイテムを拾えたりするのは、オンラインRPGっぽいですよね。
千葉 本当にそう。外見も変えられるしね。
――千葉さん、いまはなぜか野球のヘルメットを被ってるんですね(笑)。
千葉 いまは野球のヘルメットにジャケットという、すごく斬新な格好をしてるんですけど(笑)、これは有料で買ったんですよ。まあ、ヘルメットなのに頭を撃たれたら一発でやられるんですけど(笑)。
――防御力は変わらないですからね(笑)。
千葉 防具の役には立ってないので、見た目で面白いヤツだなと思ったもらいたいだけなんですけど(笑)。このあたりも、オンラインRPG的で面白いですよね。
なので、ハマる要素が満載なんですよ。普通のCO-OPができるアクションだと、ひと通りストーリーモードをやって、あとはオンラインで戦ってすぐに飽きちゃうことが多いんですけど、『ディビジョン』だけは全然飽きないんです。寝ても覚めてもやってる(笑)。
◆高レベルでもダークゾーンは怖い!
――さて、では実際にいまの千葉さんの装備で、ダークゾーンに突入してみましょう。
千葉 言っておくけど、本当にイヤな思いをしますよ(笑)。僕は、三人四人に待ち伏せさせて何度もなぶり殺しにされてますからね(笑)。
ただ、中にはすごくいいヤツもいて、感激したりもしますよ。僕は中国人と一緒になることが多くて、この間はボイスチャット用のマイクでずーっとギャーギャーと子供が泣いてましたね(笑)。
――千葉さんが入ったダークゾーン、敵レベルも相当高いですね。
千葉 でも、名前がついてない敵とわざわざ交戦したくないなぁ。こんなところにひとりで放り込まれて、絶対死にますよ。
おおっと、敵が来た! 怖い!
――ダークゾーンの緊張感はハンパないですね。動くものは敵かプレイヤーしかいない。
千葉 犬もネズミも居なくなりました(笑)。
何しろその辺のザコ敵のレベルが32とかですからね。プレイヤーのレベルは30までしかないのに(笑)。
ちょっとさっき言った「ミダス」を使ってみますかね。特別なサブマシンガンです。
――うぉぉ、ミダス、めっちゃくちゃ強いじゃないですか! マークスマンライフルで何発もかかる敵がアッという間に沈んでいく!
千葉 ミダス、最高なんですよ。この強さは、やってる人にしか分からない(笑)。
いやぁ、さすがに3対1とかになるとキツいなぁ。この辺のレベルになると、敵が硬すぎるんですよ。
――おっと、ローグ(編注:プレイヤーを攻撃したプレイヤー。お尋ね者)がいますね! 倒しましょうよ!
千葉 アイツらに見つかるとやられますからね……。ひとりだと思って撃ちに行くと、何人も出てきたりするんですよ! おとり作戦を仕掛けてきますからね。だからこっちも徒党を組んでいかないと。
――千葉さんはローグ撃退計画を立ててたりもするんですか(笑)。
千葉 人数で行くしかないんで、10人くらいを組織して、僕がおとりになってヤツらをシメてやろうと思ってるんですよ(笑)。そのくらい腹立ちますからね!
――オトナの力で何とかしようと考えているわけですね(笑)。
千葉 見つけたときにローグになってるヤツはまだいいほうで、回収ポイントで「どうも、こんにちは」みたいな態度から、いきなり撃ってくるヤツとかいますからね! 急に裏切られたりする。
いまは適当なものしか拾ってないからいいけど、本当に欲しい武器とかを持っている状態でやられたら、もう泣きますよ!
◆千葉Pの『ディビジョン』≒『FF XIV』論!?
――しかしまた、このレベルのダークゾーンはめちゃくちゃ敵が強いですね。
千葉 なんだかアップデートで調整されたのか、前より強いような気がするんですよね。気のせいかもしれないけど。実際に調整されているとしたら、これもオンライン化の面白いところで、常にゲームバランスが変えられるわけですよね。刻々と世界が変わっていくのは、面白いと思いますよ。
前回の連載でも言いましたけど、この『ディビジョン』の仕組みは、本当に今後のゲームのスタンダードになっていくんじゃないかと思いますよ。
――RPGをプレイしている人にも、入りやすい仕組みかもしれませんね。
千葉 そうですよ、だってこれも『FINAL FANTASY XIV』(PS4用ほか、スクウェア・エニックス)と変わらないでしょ?(笑)
敵を倒す武器が銃か剣の違いくらいですよ!
――だいぶ違うと思いますよ(笑)。
千葉 『ディビジョン』にだって武器を作れる要素があったりしますからね。
――なるほど、毎日報酬が出るデイリーミッションも追加されたし。
千葉 あと、ダークゾーン内に宝箱的な物資が出る「サプライドロップ」という仕組みもありますからね。ただ、このサプライドロップの周りにいる敵、めちゃくちゃ強いの(笑)。もちろんローグも狙ってるから、とんでもないことになってて。それを何人も集まって攻略するのが、また面白いんですよ。
――近いレベルの人を集められたら、楽しそうですね。
千葉 他の追加要素として、高レベルプレイヤー向けに「ファルコン・ロスト」という新ミッションが追加されたんですけど、正直、これは無理です(笑)。難しすぎる。
――確かに、高レベルプレイヤーたちからも「まともにクリアできる気がしない」という声が聞こえてきますね(笑)。
千葉 僕も知り合いと一緒にやってみたんですけど、彼は入ったらいきなり不機嫌になりました(笑)。「こんなん無理だろ!」って。そのくらいとんでもない。ドローンは出てくるし敵の数はとんでもないし。僕はいま武器スコア160超えですけど、200くらい無いとと戦えないのを知ってるから、みんな僕程度の人間が入った瞬間にミッション降りちゃいますから。
◆ほとんど偶然、最強武器を入手!?
千葉 あっ、そういえばこの間の不具合のお詫びで、フェニックスクレジットが配られてたんだ。回収しましょう。
――フェニックスクレジットは、何に使うんですか?
千葉 フェニックスクレジットでしか買えない装備ショップがあるんですよ。ちょっと見てみましょう……強い武器とか、設計図が売ってますね。
――なんだか特別そうですね。
千葉 確かに、設計図が売ってる「テネブラエ」、スコアも高いですね……買っちゃう? マークスマンライフルだし。
――どうやら千葉さんが持っているミダスと同じく、特別な名前つきの武器ですね。
千葉 買っちゃってみましょう。武器パーツはゴールドのいらないのをバラせばいいので……うん、できました。これ、ひょっとしたら強いんじゃないの?
――武器スコアはえらく高くて、能力がついてるんですね。単発の攻撃力より、おまけの能力が強いっぽいです。
千葉 んー、なんだかこれ、すごくない? ちょっとMODを揃えて装備してみましょう。
――おお、武器スコアも上がりましたね!
千葉 おお、設計図はお得ですね! めっちゃカッコ良いなこの銃! いやあ、この連載で教わることは多いですね(笑)。
――ちょっと試し撃ちしてみましょうよ。
千葉 よーし、その辺の敵を……おいおい、これはちょっと来ましたよ! 連打も効くから、ヘッドショット当たらなくてもバコバコ殺れちゃう。これはいい!
――めちゃくちゃ適当に撃ってるのに敵が死にますね(笑)。というか千葉さん、マークスマンライフルなんだからちゃんとヘッドショット狙ってください(笑)。
千葉 ヘッドショットも気持ちいいですね。めっちゃ連射できるし、安定性高いし。この武器、最高ですね!
いやぁ、今日はこのテネブラエを手に入れましたから、本当に良かったです。設計図、お得です! 飽きないなぁ、今週末もやっちゃうな。
――千葉さん、まだまだプレイを続けそうですね(笑)。
千葉 次に『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』(PS4用、SCE)と『DOOM』(PS4用ほか、ベセスダ・ソフトワークス)が出るまでは続けられますね。この『ディビジョン』には、唯一、血みどろ感が足りないので、そこは『DOOM』で補給しようかなと(笑)。『DOOM』も最後までやりますよ!
――という感じで、アメリカの悪いヤツをたっぷり撃ってる千葉さんですけど、日本の悪いヤツの映画のほうは、もうじき公開じゃないですか。
千葉 6月25日公開の『日本で一番悪い奴ら』ですね。日本の悪い奴は警官だった、って映画ですけど。監督は『凶悪』の白石監督です。
いまはマスコミ試写をやってるんですけど、おかげさまで本当に評判がいいです。
――主演は綾野剛さんですけど、今年は出演作も抱負で、綾野剛イヤーですね。
千葉 綾野くんの演技は本当に素晴らしいですよ。ちなみに僕は綾野君から「日本で一番悪いプロデューサー」と呼ばれています(笑)
今回はいままでやってきた実録物と違って、コメディ要素が満載です。巨悪を暴くというより、上司と一緒に真面目に仕事してただけなのに? という、サラリーマンなら誰にも身に覚えのあるウェルメイドな映画になっています(笑)。
――ウェルメイド! 千葉さんの映画なのに!(笑)
千葉 全サラリーマン(公務員)必見ですよ!ぜひ観てください!
映画『日本で一番悪い奴ら』 公式サイト http://www.nichiwaru.com/
(2016年4月収録)
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※本連載は、しばらくの間、休載させていただきます。再開をお楽しみに!