高橋名人はスマホゲームをどう見る?【高橋名人1万字インタビュー 後編】

 高橋名人1万字インタビュー、後編をお届け。
 前編では、名人が設立した新会社ドキドキグルーヴワークスについて話を伺った。

<前編はこちら>

 後編は、高橋名人が見るスマートフォンゲームの世界について。名人はいま、どんなスマートフォンゲームを遊んでいるのか? ゲーム業界の目利きが遊んだゲームをチェック!

 (最後にビッグサプライズもアリ!)


高橋利幸
 株式会社 DOKIDOKI GROOVE WORKS
 代表取締役 名人
◆ユーザーもゲームも変わりつつある
――スマートフォンゲームについて伺いたいのですが、これまで関わってこられたコンシューマゲームと、どんな点が異なっていると感じられますか。

高橋 これまでのソーシャル系やスマートフォンゲームは、コンシューマに比べると、よりシンプルなものでしたよね。ただ連続して押していくだけで、レアカードを持っていればいいんでしょ、という感じで、遊びかたに深みがなかった。でも、これからは、遊びかたの部分において、コンシューマにどんどん近づいていくんじゃないかと思いますね。
 いまもコンシューマゲームからの焼き直しがあったりしますけれど、このパターンがそこまで広がっていないのは、やはりコントローラの問題です。レトロ系のゲームをやっている35~45歳くらいの人たちは、タッチパネルでゲームをしていても、やっぱりボタンを押す感覚が欲しくなるんです。だから、どうしてもゲームの手触りに軽さを感じてしまって、うまく受け入れられないことが多い。ところが20代になると、昔のゲーム自体をやっていない人が多いですから、最初からタッチパネルに慣れ親しむことができる。この両世代のギャップは、すごく大きいと思います。

――最初からタッチパネルに慣れ親しんだ世代は、スマートフォンゲームにもすんなり入っていけるでしょうからね。

高橋 今後は、10年経てばいまの20~30歳が30~40歳になるわけですから、当然そちらが主流になっていくでしょう。先日の東京ゲームショウの白書によると、50代を超えてゲームで遊ぶ人は数パーセントしかいないというデータがありますから、20代の頃にファミコンが登場した人たちは、もうゲームを遊んでいないことになります。次の10年後は、子どもの頃にファミコンを遊んでいた世代がいなくなる。いまの20~30代は、据え置き機よりも携帯型のゲーム機の世代です。そうして、少しずつ世代が変わっていくんですね。

――タイミングごとに、慣れ親しむゲームが入れ替わるわけですね。

高橋 そうなりますね。それと、いまは女性のユーザーが多いのも、かなり変わったところです。昔、ファミコンで女性向けのゲームを出しても、たいてい失敗していました。それが『ポケットモンスター』あたりで、ゲームの遊びではなく、キャラクターの魅力として、一気に女の子にも広がるようになりました。そう考えると、いまのスマートフォンゲームの、ちょっと遊べる、手軽に遊べるという感覚は、10代後半から20代あたりの女性ユーザーにピッタリ合っているんじゃないかと思いますね。
 その軽さをさらに広げるのか、逆に深くするのか、という問題がありますが、たぶんこれからは深くなって、もっと遊びごたえのあるゲームが多くなると思いますね。

――ちょうどいまは、スマートフォンゲームにおいても、ゲーム自体のレベルが上がっているタイミングなのかもしれませんね。

高橋 上がってきていますね。ここ最近は「タッチパネルだからこそ遊べるゲーム」が増えてきています。10年くらい前にタワーディフェンス系のゲームが多く出てきましたが、確かにコンシューマでも遊べるものの、コントローラで動かすより、タッチパネルで動かすほうが早いゲームなんですよね。あるいは『上海』のようなゲームも、タッチパネルのほうが向いています。そういう風に、タッチパネルのほうが遊びやすく、向いているゲームはこれからも増えていくと思います。
 ただ、タッチパネルに向いているだけでは深みにならないので、そのゲームに、他のゲーム、例えばパズルなどの要素が組み合わされたようなゲームが、これからどんどん出てくるんじゃないかと思いますね。いまはスリーマッチ系のパズルが多いですけれど、例えばそれに『上海』のような絵合わせをミックスした『星の宝石』のようなゲームもあります。それと同じように、いろいろなゲームの要素をふたつ、みっつと合わせたゲームが、これからも増えていくと思いますね。

星の宝石Delux
▲『星の宝石 -Delux』(Li Xueke)
◆高橋名人が遊んでいるゲームはコレだ
――いま『星の宝石』の名前が挙がりましたが、他にも名人ご自身が実際にプレイして気になったタイトルがあれば、いくつか教えていただけますか。

高橋 東京ゲームショウのステージで見た、DeNAさんの『Godus』というゲームは印象的でした。これは『ポピュラス』を作ったピーター・モリニューさんが作ったゲームで、やはり『ポピュラス』の流れを汲んだゲームになっています。神様になって土地を上げ下げしたりしつつ、人間を繁栄させていくという感じで、いま気になっているゲームですね。アメリカのApp Storeなどではもうリリースされていて、今後日本でもリリースされるそうです。

――ピーター・モリニューさんと言えば、神様になるゴッドゲームの第一人者ですものね。

高橋 ヒット作でよく遊んでいるのは『にゃんこ大戦争』ですね。これは、猫好きだからです(笑)。猫関係では、MapFanの『はい!こちらネコ屋台です。』もやっていますね。白・黒・三毛の三種の猫が出てくるんですけれど、白猫がオシリをフリフリするのがかわいいんです(笑)。

はい!こちらネコ屋台です。by MapFan
▲『はい!こちらネコ屋台です。by MapFan』(INCREMENT P CORPORATION)
――あくまで猫好き視点で(笑)。

高橋 昔懐かしい感じのものでは、『早弁少女』なんてのも遊びました。「無料暇つぶしゲーム」とうたっているもので、早弁をしていて、先生がこっちを向いた瞬間に教科書で隠す、というだけのゲームなんですけれど。昔、ハドソンのパソコン用ゲームで『エスケープ大作戦』(1982年)というのがあって、先生が見ていないうちにクラスを抜けだしてデートをするもので、それを思い出しましたね(笑)。

早弁少女~無料暇つぶしゲーム~
▲『早弁少女~無料暇つぶしゲーム~』(Cybergate Technology Ltd.)
――人気のあるパズル系などではいかがですか。

高橋 パズル系だと『アナと雪の女王:Free Fall』もやりましたけれど、何となく、プレイするのはどれかひとつになりがちなんですよね。なので、いまは『星の宝石』が中心です。480ステージくらいある中で、まだ300ちょっとくらいまでしかやり込めていないんですよ。
 これ、最初のほうはいいんですけれど、2-13とか3-13とか、これ絶対無理じゃないの、という面があって(笑)。お金を払うと、アイテムでちょっとズルができたりするんです。でも、こっちも意地なので、アイテムを使わず正面から突破したい。なので、一面クリアするのに、丸一日かけたことがありますよ(笑)。

――職人ゲーマーですねぇ(笑)。

高橋 その他では、タワーディフェンスが好きなんですよね。ただ、このジャンルでは、なかなか定番の『Fieldrunners』を超えるものがないんですけれど。もう一歩だなと思うのは、『Brave Guardians TD』。それから、これも海外のゲームで『The Creeps!』も良かったです。

Fieldrunners 2
▲『Fieldrunners 2』(Subatomic Studios, LLC) ※写真はフリー版
◆名人が考える、ゲームの未来
――名人は、スマートフォンやタブレットでゲームをプレイする時間は、結構長いほうですか?

高橋 そうですね。仕事もありますから、ゲームは毎日1時間から、多くて2時間くらいです。

――「ゲームは一日1時間」じゃなくても大丈夫ですか?(笑)

高橋 大人なので、いいんじゃないですかね(笑)。移動時間は電子書籍を読むことが多いですけれど、ゲームももちろんやっていますよ。

――スマートフォンゲーム以外でも、家庭用などもプレイしていますか?

高橋 やります。ニンテンドー3DSも持っていますしね。ただ、この頃は据え置き機を稼働させる時間が、ちょっと少ないですね。帰る頃には日付が変わっていたりするので、なかなかそこから電源を入れて遊ぶ時間帯でもなかったりしますし。それでも朝は7時に目が覚めて、そこからブログのネタを考えて書いて……となると、なかなか難しくて。そうなると、ゲームをする時間は移動中が多くなってしまいます。

――最後に、高橋名人にお聞きしたいのは、今後、ゲームは面白くなっていくと思いますか?

高橋 当然です。面白くなっていきますし、ゲームというコンテンツには、これからも多種多様なものが出てくると思います。いま20歳くらいになった人たちからは、新しいアイデアも出てくるでしょう。そういう意味では、昔からあったゲームの世界で生きてきた世代から、新しい世代へと、ちょうど切り替わる時期だと思います。それが、この5年、もしかしたら2~3年かもしれません。

――それは、最初からスマートフォンでゲームを作る人たちへと世代が変わっていく、ということにもなりそうですね。

高橋 いま流行っているゲームは、やっぱり昔のコンシューマゲームをやってきた人たちが作ったものだと思うんですよ。これからは、多分コンシューマを通らず、ソーシャル系やスマートフォンでしかやっていない人が出てくるはずですから、そこからまた別の形のゲームが出てくるかもしれないですね。

――ひょっとしたら、いまは想像もつかない、まったく新しいものかもしれないですね。

高橋 昔、「将来ゲームはどうなりますか」と聞かれたときに、「真っ白い部屋の真ん中にプロジェクターを置いて、部屋全部がバーチャル空間になるようなゲームが出るかもしれない」と言ったことがあるんです。さすがにそれはなかなかないけれど、Oculus Riftのようなヘッドセットなどの技術で、そういう世界になる予感も着々と進んでいますよね。下にマット型のコントローラを敷けば、あれでバーチャルにいろいろな世界でのウォーキングだってできます。昔『てくてくエンジェル』(編注:ハドソンが1997年に発売した歩数計つき携帯型ゲーム機)が流行ったこともありましたけれど、新しい技術と組み合わさることで、いろいろな世界がどんどん広がっていくんじゃないかと思いますよ。

――新しい技術から、新しいゲーム体験が生まれるわけですね。

高橋 でも、いまの新しい技術も、もともとはコンシューマゲームをやってきた世代が作ったものです。だから、いまの高校生あたりが大人になって自分でプログラムを組むようになった頃に、どんなアイデアを出すか。それには、すごく興味があるんです。もしかしたら、僕たちにはなかった、新たな発見が生まれるかもしれません。

――スマートフォンゲームに限っても、まだまだ新しい何かが生まれそうですね。

高橋 例えば、いまはタッチパネルをどう使えば気持ちいいかという「操作」についてみんなが考えていますよね。「なめこ」も「ぐんま」も「ネコ屋台」も、操作が何となく気持ちいい、だいたいはそんな方向性です。スリーマッチパズルもそうで、直接タッチパネルで動かして続けて消せたときの爽快感を作っています。こういったものの次、新しい「動かす爽快感」が発見できたら、この先のヒット作に繋がるんじゃないかと思いますね。そういうものが、若い人たちの中から、根本的に違うアイデアとして出てきたら面白い。これから楽しみですね。

――そういうものが、ドキドキグルーヴワークスから出てくれば面白いですね。

高橋 だから、ウチはできるだけ若い人を入れたいな、とも思っています。それは、例えば女の子のアイデアかもしれないので、女性が活躍できる場も作っていきたい。そういう門戸は開いておきたいですね。開発部員はこれからも募集していきますので、よろしくお願いします(笑)。

高橋名人

(2014年9月収録)
 そして最後に、ビッグサプライズ!

 このインタビューの後、「懐かしい人が来るよ。会っていく?」というので、しばらく残っていたら……
 やってきたのは、ファミコン世代なら知る人ぞ知る“川田名人”!
 たまたま高橋名人の会社に挨拶に来たということで、高橋名人&川田名人の激レアなツーショット写真を大公開!

高橋名人と川田名人

 この後は、ファミコン時代の昔話に花を咲かせる両名人なのでした。