2月28日(土)、東京・新宿FACEで、ゲーム『リング☆ドリーム』と、プロレス団体DDTのコラボ興行「『愛』は『逢い』よりいでて」が開催された。この興行の観客は、『リング☆ドリーム』のゲーム内イベント「『逢い』は『愛』よりいでて」でランキング入賞して招待チケットをゲットした、『リング☆ドリーム』プレイヤーのみ。会場の規模を考えると、まさにプラチナチケットを手にした人だけということになる。
スマートフォンでは去年リリースされたばかりだが、原作の歴史は1993年からと古く、ブラウザゲームとしても各プラットフォームで展開されている『リング☆ドリーム』だけあり、今回はさまざまなプレイヤーが集う形となった。
DDTのプロレスラーたちが『リング☆ドリーム』のゲーム内に女体化して登場するコラボレーション「DDT美少女計画」から始まったこの企画。過去にも、全日本プロレスに『バーチャファイター』のウルフが登場したり、同じDDTに『鉄拳』のキングが登場したりといったキャラクターコラボはあったが、今回はついに興行まるごとがひとつのゲームとコラボ、しかも観客は全招待の無料興行という史上稀な大会となった。
▲会場は満員。『リンドリ』の上位プレイヤーたちが集った。
会場には『リング☆ドリーム』に登場したDDTコラボキャラクターのイラストが大きく貼り出され、コラボ感は充分。前説にはDDTの鶴見亜門GMと『リング☆ドリーム』原作者のでいしろう氏も並んで登場し、両者のファンに向けた興行であることを印象づけた。
余談ながら、でいしろう氏はnWo(90年代に一世を風靡したプロレスユニット)のジャンパーを着用(おそらく蝶野正洋選手らが活躍したnWoジャパンのもの)。根っからのプロレスファンであることを服装でもアピールしていた。
来場した観客の3割ほどは生のプロレス観戦は初めてという、この規模のプロレス興行としては珍しいフレッシュな観客の前で興行はスタート。ニコ生での同時放送もあり、DDTにとっても『リング☆ドリーム』にとっても注目を集める中での試合となった。
▲場内に貼り出された『リング☆ドリーム』DDTキャラクターたち。
第一試合から、『リング☆ドリーム』に美少女として登場している坂口征夫選手が登場するタッグマッチ。ゲーム内イラストからは想像もつかない強面の坂口選手だが、父は新日本プロレスリングで活躍した“世界の荒鷲”坂口征二さん、弟は俳優の坂口憲二さんという人物でもある。
試合では松永智充選手が一度は「リンドリボンバー」(普通のアックスボンバー)を決めるも、「リンドリバスター」「リンドリボンバー」のコラボアピール技連発は不発、石井慧介&高尾蒼馬組の勝利となった。
▲ゲーム内ではクールビューティー、本人は打撃系ハードヒッターの坂口選手。
東京女子プロレス提供の第二試合を経て、第三試合は女色ディーノ&ヨシヒコ×マサ高梨&DJニラ。ゲーム内の衣装で登場されたらポロリが危惧された女色ディーノ選手だったが、試合前に「女性客が少ないため、やる気をなくしてボイコット」とアナウンス。代替選手として男色ディーノ選手(こちらは男性客が多いため「やる気マンマン」)が登場し、入場時からでいしろう氏に必殺技リップロック(思いっきりのキス)、解説席の女性陣にはゲンコツをお見舞いする安定のキャラクター性を見せた。
試合はゲームにも登場するヨシヒコ選手(一見すると人形だが、プロレス的には強豪というファンタジックな存在)をはじめ、熱くもエンターテイメント性に満ちた展開に。まさにDDTらしい試合で観客を盛り上げた。
▲神秘的レスラー、ヨシヒコ選手のキックが高梨選手にヒット!
▲勝利者賞を渡しに来た協賛社mixiの男性スタッフの唇を攻める男色ディーノ選手。
▲こちらがゲーム内の「女色ディーノ」選手。
第四試合は、選手が次々と登場するロイヤルランブル戦。勝利選手には試合協賛のniconicoからニコニコ超会議への招待券が授与されるこの試合は、9選手が入り乱れる展開に。最終的には逆さ抑えこみを狙ってもつれる男子2選手をまとめて丸め込んだ清水愛選手(声優としてもおなじみ)が勝利した。
▲人気声優にしてリングにも上がる清水愛選手が勝利。
セミファイナルは、ゲームに登場する竹下幸之介選手と紫雷イオ選手(スターダム所属、美少女化ではなく普通の女子選手)が登場する男女ミックスドタッグマッチ。竹下&イオ組は対戦相手の大石真翔&木村響子組の試合巧者ぶりに翻弄される一面もあったが、女子プロレス界屈指の飛び技を誇る“天空の逸女”イオ選手の場外への飛び技や、プロレス界の次世代を担う竹下選手の美技もあり、竹下&イオ組の勝利。
▲“天空の逸女”イオ選手、場外へのラ・ケブラーダ。
▲美しいブリッジでジャーマンスープレックスホールドを決めた竹下選手。
メインイベントは、飯伏幸太&KUDO&高木三四郎×HARASHIMA&アントーニオ本多&入江茂弘の6人タッグマッチ。高木選手はゲーム内で美少女化された自身のコスプレをしたシンギナツキさんを伴って、入江選手は原作者でいしろう氏をお姫様抱っこしての入場。
6人の選手全員がDDTの最高峰ベルトKO-D無差別級チャンピオン経験者(本多選手のみ暫定)、さらに全員がゲーム内で美少女化しているという豪華すぎるカードをここに用意してきたところに、このコラボ興行へのDDTの本気がうかがえる試合となった。
試合は高木選手と本多選手のエンターテイメント性、KUDO選手と入江選手のバチバチのぶつかり、HARASHIMA選手と飯伏選手のDDT最高峰のプロレスが絡み合う、まさにDDTのトップ級の試合に。最後は、いまや日本プロレス界の至宝とも言われるホープ、飯伏選手が本多選手を沈めて、観客の大熱狂の中で勝利した。
▲コスプレイヤーとの入場で、高木選手が観客の心をガッチリとキャッチ。
▲お祭りムードの中でも激しくぶつかり合う入江・KUDO両選手。
▲飯伏選手がシットダウン式ラストライドを決めて勝利を飾った。
試合後は、DDTの“大社長”こと高木選手が「『リング☆ドリーム』のプロデューサーの松田さん! あなたがいなかったら、僕ら女体化せずに済んだ。よくも俺たちを女体化してくれて……ありがとう!」と、サクセスの松田プロデューサーに謝辞。松田氏もリングに上がり「プロレスっていいですね! リンドリもいいですけど、理屈じゃないです。DDTの会場で、『リング☆ドリーム』のゲームの中でお会いできたらと思います」と返した。
しかしこれでは終わらず、高木大社長が大熱狂した観客を指して「見てください、この盛り上がりを! これ一回で終わらせていいんですか?」とアピール。会場の「もう一回!」コールを受けて、松田氏も「一回で終わるわけないじゃないですか! ただ、会社の承認が必要です」とリング下を見ると、そこにはサクセスの吉成社長の姿が。大満悦の吉成社長もすぐに大きなマルサインを出し、次回開催を宣言してのエンディングとなった。
▲マイクアピールで激しく謝辞を述べる「DDTの大社長」高木選手。
▲サクセスの松田プロデューサーも高揚した様子でプレイヤーや関係者に謝辞を述べた。
ゲームでのコラボから始まり、生身のプロレスの大会へとつながった今回の興行。プロレスを観るのが初めてのお客さんもいる中で、これだけの大熱狂で迎えられる大会もなかなかないことを考えると、コラボは大成功だったと言えそうだ。ニコニコ生放送での同時中継には、2万人を超える視聴者が来場し、放送後アンケートでの満足度はなんと97%を超えたというから、会場外へもその熱気は伝わったと見ていいだろう。実際に会場でも「プロレスがこれほど面白いとは思わなかった」という満足げな声を何度も聞くことができた。
『リング☆ドリーム』のプレイヤーはDDTに、DDTのファンは『リング☆ドリーム』に興味を持ったことは間違いない。さらにニコニコ生放送での注目度を考えると、ゲームとライブエンターテイメントの関係として、ひとつの幸福な形を示せたイベントだった。
▲左から、松田プロデューサー、サクセス吉成隆杜社長、でいしろう氏
【試合後コメント】
高木三四郎選手(DDTプロレスリング)
「『プロレスラーを女体化したいんです』と言われた時は僕もひっくり返りそうになって、ウチも大概おかしなことを考えるけど、ゲーム業界はもっともっとおかしなことを考える人がいるんだなと。それがご縁で、今日こういう形で興行として結びつくことができて、これが本当のコラボレーションなのかなと思いました。もし機会があるなら、また何かやれればなと思います。」
松田秀夫プロデューサー(サクセス)
「やると言ったらすぐやれという会社なので、すぐかもしれないですけど、今回のを超えるものを提供できるよう、もうちょっと時間をかけてやりたいと思います。今回のコラボで感じたのは、プロレス業界もゲーム業界も変わらない、信念の中でものを作っているんだなと。それはお客様をどうやったら感動させられるのか、どうやったら興奮させられるのか、楽しいと思ってくれるのか。どちらの業界も命がけで考えているんだなと気づけたのが、一番感動させていただいた部分です。これ一回で終わらせずに、何回も色々な形で考えたいと思います。」
でいしろう氏(『リング☆ドリーム』原作者)
「この歳になってお姫様抱っこされるとは思ってなかったですね(笑)。最初の挨拶でDDTに初めていらっしゃった人に『大丈夫です。信頼できます』と言いましたが、これはもう成功ですよね。今日は最高でした。今年で22年目ですが、ここまでくるといろいろ欲が出てきますので、僕は社長と松田さんにちょっとおねだりしようかなと思います。ゲームの方は血を吐くまでずっと続けていきます。」
吉成隆杜氏(サクセス社長)
「(次回開催は)OKするしかないでしょう(笑)。楽しかった。初体験なんですけれど、これほどとは思わなかったですね。ゲームを楽しんでもらって、本当のプロレスも楽しんでもらえれば言うことはないです。ゲームでこんなイベントができたのは初めてじゃないかと思うんですけれど、またゲームと絡めて、こういうイベントをもっともっと企画したいですね。これからもチャレンジします。」
※初出時、一部関係者のお名前表記が誤っておりました。お詫びして訂正いたします。