【Ingress珍ポータル】とみさわ昭仁の 珍ポータル紀行・第5回 八王子古本まつりのついでに8人の王子を探せ!

「東京古本市予定表」というサイトがある。これは年間を通じて都内のどこでどんな古本市がひらかれるかをカレンダーに記載した、古本マニアにはとてもありがたいものだ。個人が作ってくださっているもので、わたしも便利に使わせてもらっている。

 これを見ると、都内ではだいたいいつもどこかで古本市がひらかれている。今日は神田、明日は五反田、そのまた明日は新橋、立川、八王子……というわけで、5月の頭にJR八王子の北口ユーロードで開催されている「八王子古本まつり」に突撃してきた。

 ぼくにとっては古本も大事なのだが、珍ポータルを探すのもまた重要な使命。新松戸から乗った武蔵野線の車中で、今回はどんな珍ポータルをテーマにしようか考えていた。八王子、八王子、八王子、むむむむ……。

◆見つけ出せ! 八王子の珍ポ

 八王子市はなぜ「八王子」という名前になったのか。それはインドから中国経由で伝わってきた牛頭天王(ごずてんのう)信仰に由来するもので、その8人の息子を疫病や農作業の安全を護る神として祀ったのが、全国に広がっていったのだとか。だから、東京の八王子市以外にも八王子という地名はあるんだけど、まあそっちのことはとりあえず気にしないでおこう。

 で、この8人の王子がポータルになっていて、市内のあちこちに散らばっているのを探してまわるのはどうか!? と思いついたのだが、世の中そうおもしろいようには出来ていない。なぜならそんな都合のいいポータルはないからだ。

 でも、ないなら勝手に王子にしたらいいじゃーん、と発想を切り替えた。駅前に降り立ち、さっそく『Ingress』を立ち上げ、スキャナーを起動させる。マップを見渡し、ポータルをひとつひとつタップして確認していく。

 最初に見つけたのは「Standing Woman」という裸婦像だ。どこの駅前にもあるやつね。一瞬「おっ!」となったが、これじゃダメだ。王子感がないじゃないか。実際の八王子(八神将)は5人の王子と3人の王女らしいけど、自分ルールでやってる遊びなので、ここは「男ポータル」を「8体」見つけることにしたい。

 さて、次に見つけたのがこれ。

ライオン像
▲南口にひっそりたたずむ「ライオン像」

 王子というか、むしろ王者だけど、これは自分ルールでは合格。まずは1王子ゲットとしよう。

 さらに周囲をぐるぐるチェックしてみるが、簡単には見つからない。と、ここで危うく本来の目的を見失いそうになっている自分に気づく。今日は古本まつりに来たのだった。うかうかしてるといい本がなくなる! とりあえず王子探しはあとにして、古本も見に行くとしよう。

◆八王子古本まつり、大盛況です!

 北口のユーロードに、古本を満載したワゴンが200メートル以上も連なっている。これを端からチェックしていくだけでもけっこうな時間がかかる。珍本がないか、必死に目を凝らす。

八王子,古本市
▲好天に恵まれた「八王子古本まつり」。毎年来てまーす。

 しかし、今年は不作だった! およそ1時間はかけてワゴンを見ていったのだけど、めぼしい収穫が見つからない。でも、焦りはない。長いこと古本ハンターをやってると、こんなことはザラにあるのだ。

 電車賃を無駄にしたくないからって、無理して欲しくもない本を買うのは馬鹿げている。そういう本は絶対に読まないし、自分の店に置いておいても気持ちがこもってないからお客様も買ってくれない。だから、強い意志を持って空振りすればいいのだ。

 とかなんとか古本屋の哲学っぽいことをい言いながらも、「3冊で100円!」と謳っている激安ワゴンの中から、33.333…円なら買ってもいいか~と思える本を3冊ピックアップした。意思、弱えぇぇ!

◆そして王子探しに本腰を入れる

 古本まつり会場を離れ、ふたたびエージェント活動に戻る。スキャナーで周囲を見ていくと、なんか可愛いのがいるのを発見した。

マロン薬局
▲「マロン薬局子安店モニュメント」とある。

 現場ではよくわからなかったが、例によって帰宅後にネットで調べてみた。すると、これは八王子、町田、杉並地区で展開している調剤薬局チェーン「マロン薬局」のイメージキャラクター「まろんちゃん」なのだった。これ、男の子だよねえ? ならば王子だろうってことで、2王子目を確保!

 続いて見つけたのは、まぎれもなく男の子の像。

将軍の孫
▲「将軍の孫 北村西望作」

 北村西望といったら、長崎の平和祈念像を作った人ですな。彼がアトリエで制作していると当時5歳の息子がやってきて、資料として置いてあった軍靴を履いて敬礼した。この様子が可愛らしいので像にしたということだ。

 さあ、これで3王子まで来た。あと5王子見つければミッション・コンプリートだ!(盛り上がってまいりました)。引き続きスキャナーをグリグリ回して、めぼしいポータルをチェックしてゆく。すると、見覚えのある姿をしたヤツがいた。これってビリケンだよね。

えべっさん
▲ポータル名には「浪花のえべっさん」と書いてある。

 どういうことかよくわからなかったけど、これも帰宅後に調べたら「浪花のえべっさん」という店名の串かつ屋さんだったことが判明した。その店頭に設置してあるビリケン像がポータルになっているというわけ。

 ビリケンさんは、突き出した足の裏を撫でるとご利益があると言われている幸運の神様。性別は……わからないけど、ちんちん付いてなかったっけ? あれはキューピッドか? でもまあ男の子ってことにしておきましょうよ。これで4王子達成。って、まだ半分かー。

 と、ここまで意図して書かずにいたのだけど、実はこの日は八王子出身の友達と共に行動していた。彼は『Ingress』やってないので、ときどきiPhone取り出してはクルクル回ってるぼくの行動が意味不明だったことだろう。バカだと思われたかもしれない。

 とにかく、そろそろ腹が減ったので軽く昼酒でもやろうということになった。昼からやってる居酒屋に突入してホッピーなどをグイグイいっちゃう。そしてシメはもちろんラーメン。友達が学生時代から食べ続けてきたという九州ラーメン「桜島」で味噌ラーメンをいただく。

九州ラーメン「桜島」
▲味噌ラーメンだけど塩スープ。その上に特製味噌がのっている。

 店内の説明書きによると「最高の麹みそに、にら、とうふ、ひき肉などを具だくさんに練り込んで作った手作りの味噌です。風味を生かすため食べる直前にスープにまぜてご賞味ください」とある。こういうスタイルの味噌ラーメンは初めてだけど、実際そうやってみたら実にうまかった。これはソウルフードにもなるわな。

◆奇跡の逆転

 さて、満腹したところで友達とは別れ、ふたたびエージェント活動に戻る。しかし、この時点でもう午後5時。いまからあと4体も王子ポータル探せるのかしら。かなりの無理ゲーな気がしてきた……。

 と、こ、ろ、がっ! 南口へ出てスキャンしていたら、すごいのを見つけた!

地蔵チーム
▲わはは!「地蔵チーム」ってなんだ!

 一気に6王子もゲットしてしまった。ということは、これで8王子どころか、10王子になってしまったじゃないか。

 ポータルは雪の季節に撮られた写真だけど、実際の現場はどうなっているのだろう。珍ポータル探しでは、あくまでもスキャナーの画像をスクリーンショットして集めるだけでいい、というマイルールにしているのだけど、地蔵チームは妙に気になるので、現場を見に行くことにした。

 ポータルに向かって歩を進めてみると、そこは興林寺という寺だった。中に入れていただき参拝してみると、問題の場所に立っていたのは……。

興林寺
▲ひい、ふう、みい、よう、いつ、むう、なな……七地蔵だった。

 ってことは? 全部で11王子? いやいや、それは現場に立っているのが7体なのであって、ポータルには6体しか写っていない。ならば、珍ポ探し的には6でカウントするべきだ。

 そんな、普通の人にはまったくどうでもいいこだわりの結果、ぼくの8王子探しは10人の王子ポータルを見つけたということで、今日からこの土地は「十王子」となるのだった。なんなんだこの結論!