ゲームロフトといえば、早くからのスマートフォンゲームファンにはお馴染みの存在。映画やコミックなどをテーマにした海外産のゲームをローカライズし、矢継ぎ早にリリースして市場を賑わせてきたゲームメーカーだ。
そんなゲームロフトが、いよいよ完全国内制作のゲームに乗り出した。
その国内第一作となる『マグナメモリア』について、プロダクトマネージャーの松下健太郎氏と、ゲームデザイナーの小山玲央氏にインタビュー。さらにゲームキャラクター“ティケ”のコスプレイヤーさんまで登場し、『マグナメモリア』の突っ込んだ話を聞いた。
海外ゲームの雄が研究を重ねて指す、国内市場への新たな一手とは?
松下健太郎(写真左)
株式会社ゲームロフト
プロダクトマネージャー
小山玲央(写真右)
株式会社ゲームロフト
シニアゲームデザイナー
(敬称略)
◆世界トップ級のスマホゲームメーカー
――ゲームロフトといえば、早い時期からのスマートフォンゲーム好きには響いている名前だと思いますが、最近のゲームファンには、詳しく知らない人もいるかもしれません。改めて、ゲームロフトという会社についてご紹介いただけますか。
松下 はい。ゲームロフトは、本社がフランスのパリにある、スマートフォンとタブレット向けのアプリゲームを世界中で展開している会社です。現在世界中に27の拠点があり、各スタジオでそれぞれ開発、運営、パブリッシングをして、世界各国でゲームを配信しています。
iPhoneのApp Storeでは、初期の頃から、売り切り型のビジネスモデルでゲームを配信しています。2~3年前からは、基本無料で、ゲーム内でのアイテム課金販売をするアプリを提供するビジネスモデルにシフトするようになりました。
――スマートフォンゲームの世界においては、ゲームロフトはかなり長い歴史をお持ちなわけですが、これまでで一番のヒットタイトルは何でしょうか。
松下 少数の大ヒットタイトルを抱えるスタイルではなく、数百という数のゲームを提供して、広く展開し、売り上げを立てていくスタイルを取っています。その中では、ダウンロード数では、『怪盗グルーのミニオンラッシュ』が一番多いですね。数カ月前に、世界で5億ダウンロードを達成しました。『アスファルト』シリーズ最新作の『アスファルト8』は、2014年のiPhoneベストアプリなどに選出されました。他にもシリーズ物がたくさんあります。
すべてのタイトルのダウンロード数を合算すると、2014年は世界全体のiOS市場で世界一位、Google Playで世界二位になりました。
――世界一位とは、途方もないスケール感ですね……。日本市場向けのローカライズは、日本の社内でやっていらっしゃるんでしょうか。
松下 すべて日本オフィスでローカライズしているわけではなくて、世界各国の拠点で分業しています。例えば、テキストのローカライズチームはカナダのモントリオールにあったり、グラフィックはフィリピンのマニラにあったり、ムービーはまた別で、と、世界中の拠点が連携しながらローカライズをする体制を組んでいます。なので通常は、日本だからここでワンストップ、という感じではないですね。
――なんともグローバルな開発ですね。
松下 世界各国との時差も常に考えながらの開発になりますね(笑)。
◆『マグナメモリア』は完全日本向け
――今回『マグナメモリア』で初めて国内開発のタイトルをリリースされたことについて伺いたいと思います。まず、なぜこのタイミングで日本オリジナルのタイトルを作られることになったんでしょうか。
松下 日本のスマートフォンアプリ市場が伸びていて、2年ほど前にアメリカを抜いて一位になった、というニュースがありました。ゲームロフトも日本市場に強く注目していて、日本の拠点は10年前からあって、パブリッシングを行なっては来ましたが、開発スタジオはなかったんです。
が、いよいよ「日本市場を何とか攻略しなければならない」というミッションがフランス本社から出ました。そのためには、現地である日本で、きちんとアプリ開発に経験のあるメンバーを集めて、日本市場向けのゲームを日本のワンストップで作ろう、ということになりました。今回は日本スタジオにかなり自由な裁量権を与えられていますね。
――想像するに、ゲームロフトでは、一拠点のみにそれだけの裁量権を与えられて開発するのは珍しいことではないかと思いますが。
松下 かなり珍しいですね。これまで、中国で一部あったのみです。日本と、韓国、中国はとても独特なアプリ市場で、これはもう現地に任せるべきだということで、今回のプロジェクトの形になっています。
――松下さんと小山さんは、このプロジェクト以前からゲームロフトにはいらっしゃったんですか?
松下 僕らは、このプロジェクトのためにゲームロフトに入りました。今回のプロジェクトをスタートするにあたって、マーケティングから開発まで、全職種の採用をかけて、チームを編成したんです。
――松下さんと小山さんは、それぞれのお仕事としては、どういう割り振りでしょうか。
松下 僕は、マーケティングやプロモーションの戦略を中心にしています。
小山 私は、開発の現場監督をしています。
――『マグナメモリア』をどういうゲームにするかは、早い段階から決まっていたんでしょうか。
小山 私が参加したのは今年からですが、まずこのゲームは「いろいろなかたにプレイしていただけるようにしたい」ということで、絵柄も普遍的で万人に受けるものにし、ゲーム性も誰でも分かる、プレイしやすいものにする、というところから始まっています。
――間口の広さがポイントだったわけですね。
小山 そうです。広い層に向けてアピールできるゲームにしています。
――ルックスも含めて広くアピールするゲームということで、今日はゲームのナビゲーター役の「ティケ」のコスプレイヤーさん(弥生さん:コスジョブ所属)もご同席いただいてます。こういうインタビューも珍しいんですが、せっかくなのでティケさんの自己紹介をしていただけますか。
ティケ はい(笑)。『マグナメモリア』は、ティケがプレイヤーさんのストーリーをアシストして、ゲーム全体をナビゲーションしていく形になっているんです。
▲ティケの公式コスプレイヤー、弥生さん。
▲こちらがゲーム内のティケ(ムービーより)。ストーリーテラーやナビゲーターとして活躍。
――ゲームをプレイすると、ずっと出てくるキャラクターですね。
ティケ そうですね。最初のチュートリアルからストーリーまで、ご一緒することになります。
――ゲームのキャラクターにご一緒いただくのも、プロモーションとしては斬新ですね(笑)。ティケさんは実際に衣装を着てみて、いかがですか?
ティケ キャラクターとしてはかわいらしいので、日本人に好まれるタイプじゃないかな、と思います!
――ゲームのストーリーとしても、女の子としてのモードと、OSとしてのモードの両方でしゃべるので、ちょっとしたギャップがあるところが面白いですね。日本的なキャラクターだな、と感じました。
松下 そうですね。アニメ的なタッチの絵が好まれることや、やや低年齢なタッチが好まれること、萌えとは何かということなどをまとめた資料を作って、フランスの本社に共有したりしました(笑)。 間口が広いと言っても、各国で何が受けるかは違って、日本で飛び抜けて人気のRPGを選び、その上で近未来やファンタジーのテイストだったり、アニメ調のキャラクターであったりと、すべてステップを踏んで生まれたものなんです。
――研究の成果、という感じですね。
松下 “日本の当たり前”も、ちゃんと説明しないとフランスには伝わらなかったりしますからね。
――“日本の当たり前”というのは、なかなか面白い言葉ですね。
松下 本社はやっぱり、その辺を突っ込んでくるんです。なぜこういうキャラクターなのか、なぜこういうタッチなのか、なぜRPGなのか、ひとつひとつに理由が必要だったんです。そのための議論は惜しまない環境なので、そこには時間をかけています。
◆アニメ好きにもリーチしたい布陣
――開発期間は、スタートからリリースまで、どのくらいかかっていますか。
松下 一年半から二年近くをかけています。ゲームロフトでは、基本的には最長で二年が基準になっていて、3Dでコンシューマに移植しても遜色無いようなものも含まれますので、そう考えると長いほうになりますね。
――実際にリリースされてみて、現段階(※インタビュー時点)でおおよそ一週間ですが、いまのところの手応えはいかがですか。
小山 いまのところは、キャラクターの可愛さであるとか、ルックスに対して好意的な意見はいただいていますね。
――ゲーム内では、ティケには魅力的なボイスもあてられていますね。
小山 ティケの声は、声優の花澤香菜さんにご担当いただいてます。花澤さん以外にも、アクションでキャラクターが連携技をするときなどにも、派手にボイスがついていますので、そのあたりには凝っていますね。
松下 今回は完全オリジナルタイトルで、普通に出していくだけではプロモーション力がちょっと足りないので、ティケというキャラクターの性格や雰囲気とマッチする花澤香菜さんとご一緒したり、イントロムービーでは『マクロスフロンティア』などを手がけたスタジオであるサテライトとご一緒しています。日本のアニメ業界で名のあるかたがたと一緒に作るのは、今回のテーマのひとつでもあります。
――肝心のゲーム部分は、ベースはトランプの神経衰弱ですね。
松下 単純にマッチさせていく上にギミックを加えて、新しいゲーム性を作ろうという企画意図があります。なので、「記憶を頼りに戦う新感覚コンボバトル」という言いかたをしています。
――ゲームロフトはこれまで売り切り型のゲームをたくさんリリースされていますが、基本無料の運営型ゲームは、売り切り型とはまた違った難しさがありそうですね。
松下 確かに、これまで売り切りでやってきましたので、運営の発想はあまりなかったんです。イベント運営については、日本や中国、韓国は高いノウハウがあるので、そこから学んでいこうという姿勢が本社にもありました。そういう経緯もあって、『マグナメモリア』では、最初からイベントを運営していく体制はできていると思います。
――今後の展開について、いまの段階でお聞きできることはありますか。
小山 イベントについては毎週打っていきますし、大型のアップデートも毎月考えています。内容については、楽しみにしていただければと思いますね。
◆開発者が語る『マグナメモリア』攻略法
――実際にプレイしてみると、なかなか集中力を要するゲームだな、という印象がありますが、開発サイドからプレイヤーに向けて、コツやテクニックを伝授していただけるとすれば、どんなポイントが挙げられるでしょうか。
小山 基本はタイルをマッチさせていくわけですが、マッチのさせかたのコツは、全部を覚えるのはなかなか難しいので、まず一色を覚えることから始めるといいと思います。一色を最初にパパっと開けると、残りは限られてきますので、合わせやすくなるかと思いますね。
――それに合わせて、キャラクターの属性も揃えるとベストということでしょうか。
小山 その通りです。スキルについては、それぞれに長所がありますが、使い勝手が良いのは攻撃系かもしれません。特に全体攻撃はかなり強力です。他には、全体のタイルの色を揃えてくれるスキルも使いやすいと思います。スキルで揃えて、そこから自分でコンボをつなげていくと攻撃力がかなりアップするので、使いやすいでしょうね。
――そのあたりは、初心者にもオススメできるスキルということですね。
小山 少し慣れた人向けのコツとしては、最初に間違えやすそうなところから始める、という手があります。難しそうなところから初めて時間に見切りをつけてから、簡単なところでまとめる、という順番がいいと思います。
――確かに、ノーミスでつなげた数でボーナスになる「チェイン」は、最後にミスをしたところからの起算になりますからね。
小山 そうなんです。だから、最初にミスをしやすいところからやれば、後半にチェインを稼ぎやすくなります。なかなか全部覚えるのは難しかったりしますので。
▲奇数でギャップができていたり、飛び地になっているところは要チェック。
――開発チームではずっとプレイしていると思いますが、『マグナメモリア』は、やっているうちに上手になっていくゲームでしょうか。
松下 実際、なりますね。
小山 僕はもう、上手くなりすぎて、自分があまり参考にならないです(笑)。
――パッと見では、才能や記憶力で上手下手が決まってしまいそうにも見えますが、やっているうちに上達する要素もあるんですね。
小山 ありますね。上手くなればもちろん楽しいですから、続けてプレイしてみていただけると嬉しいですね。
――では、最後に、こんなプレイスタイルで遊ぶのがオススメ、というのがあれば。
松下 このゲームは集中力を要するので、例えば電車の中などでのプレイは結構難しかったりしますけれど、補完する形で、リアルタイムヘルパーモードがあります。他のユーザーがクエストなどに挑戦しているのをリアルタイムに助太刀できる機能で、エナジーを消費するだけで派遣できるんですよ。これを活用して、自分でプレイできないときはとにかくヘルパーを派遣することでフレンドポイントを稼いで、「絆の祭壇」のガチャを回すのがオススメですね。(編注:ヘルパーは「ログ」のタブから派遣が可能)
小山 『マグナメモリア』は、基本的にはひとりでプレイできるゲームなんですけれど、ぜひ友達とやって欲しいんです。チャット機能があって、スタンプが送れたり、レイドボスと一緒に戦えたりします。ひとりで遊ぶだけではない楽しさを感じられると思うので、ぜひ試してみて欲しいです。
――ちなみに、ティケさんは、これからもいろいろなところで活躍する予定ですか?
松下 します。イベントやメディアなど、常にいろいろなところに出ていきますので、そちらも楽しみにしてください(笑)。
ティケ よろしくお願いします!
(2015年6月収録)
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