今やすっかりMMORPGそしてスマホゲーム大国となった台湾だが、2000年以前には国産PCパッケージゲームの文化があり、コンソールゲームがビジネスになっているアジアで数少ない市場でもある(台北ゲームショウでもSCEJAからPS4などが販売されており、初日は午後早くに完売していたほど)。親日国というお国柄ゆえ、国産コンソールゲームに対するリスペクトも高く、会場でも開発者自らJRPGに影響を受けたというタイトルが出展されていた。それが『EMERALD TABLET』(UNI)だ。
主人公は見習い錬金術士の少女ミスティで、ゲームの目的は街の人からさまざまな依頼を受け、その達成に必要なアイテムを調合するためにダンジョンを探検し、モンスターと戦い、ストーリーを進めていくというもの。世界観はほのぼのファンタジー系で、ぱっと見ただけだとアトリエシリーズの新作かと見間違うほど。といってもパクリというわけではなく、ちゃんと元となる設定やゲームシステムをリスペクトしつつ、自分なりにアレンジされているのでご安心を。開発者のネオさんもJRPGや日本のストーリーゲームが好きで、大きな影響を受けていると語っていた。
もっとも出展作はプロトタイプで、登場人物はミスティと親友で修道士の少女ユニの二人だけ。行ける場所も錬金術が可能な工房と街の広場だけで、ダンジョンなどはなし。当然ながらバトルシーンもなし。もっとも、すでにアイテムの調合やキャラクターの会話システムは完成しており、タップで進めていく手軽さやキャラクターの可愛らしさ(残念ながらストーリーは中国語だったのでわからなかったが)、ビジュアルの完成度などは高く、リリースが気になる内容だった。残念ながら中国語版と英語版のみのリリースとなるが、将来的には日本語版もぜひ発売したいと語っていた。制作チームは12人がクレジットされているが、うちフルタイムは4人のみで、年内リリースに向けて開発中だという。
ちなみに同社の第一弾タイトルが『戦国末姫傳』(Ledend of Matsuhime 公式サイト: http://matsuhime.net/)で、こちらもタイトル通り和風テイストのゲームだ。主人公は真田幸村で、松姫もずばり武田信玄の娘。もっとも、出雲大社で野球大会が開催されていたり、踊り歌舞伎のお国がヒーラーとしてパーティに参加するなど、それほど史実にこだわっているわけでもない。ゲームシステムはアクションRPGで、パーティを編成するとバトルはオートで戦ってくれる。あとは戦況を見ながら、各自の必殺技などをタップして発動させていけばOKだ(画面左上のキャラクターアイコンをタップすると、操作するキャラクターを選択できる)。ビジュアルはドット絵で描かれており、ジャギーが少し目立つものの、可愛らしい感じに仕上がっている。
おもしろいのは体力回復を選択すると、体力が減っているキャラクターを自動的に選別して最適な形で回復してくれることで、いちいち相手を指定しなくてもすむ点だ。これには「コンソールライクなゲーム体験をスマホで提供したかったので、逆に面倒な操作は極力減らしました」と語っていた。つまりスマホとコンソールでは遊ばれ方が違うので、操作にも取捨選択が必要だということ。このようにゲームデザイン一つとってみても、丁寧な内容に好感が持てた。
残念ながら本作も繁体字(台湾向け)、繁体字(中国本土向け)、英語のみで、日本語版が実装されていない。しかし2章までは無料でプレーできるので、台湾の日本好きゲーム開発者の心意気を体感してみるのもいいだろう。