▲どこかで見たことのあるタイトル画面。Love Songを探したくなります。
◆このゲーム、スライムだけじゃ勝てません。では、どうするのかというと…?
『勇者のくせになまいきだ。』シリーズなど、モンスター視点で勇者をやっつけるというゲームが存在する。私を含むオッサンゲーマーなら『ラストハルマゲドン』(1988年のPCゲーム)の名も挙がるだろう。この手のゲームは独特の空気を放ち、善悪逆の立場だからこそ実現できるさまざまなギミックが満載されている。
今回紹介する『スライムの野望』もまた、カジュアルゲームのなかで異彩を放つ“記憶に残りそうな”秀作だ。アプリのアイコンからして、上を向いた人間がなにか食べようとしているという「???」な絵。実はそれが“飲み込まされている”絵で、あんぐり空いた口元の青い物体こそが主人公のスライムであることは、ゲームを始めればすぐに飲み込めるだろう。そう、本作のマイキャラは人間をのっとるのだ。
▲主人公のスライムLv.1で爆誕! って、めっちゃ弱そう。デコピンでも倒せるんじゃ……? とか思ってると口から入っていってアッという間に侵略!
▲ のっとった人間の目は赤く光って怖いです。このように次々とのっとって敵を倒していくのだ。
◆中身はどっこい、本格派のタクティクスシミュレーション
実はこのゲームは戦略性の高いシミュレーションゲーム。高低差のあるマップをうまく移動し、射程内に入った人間をのっとって他の人間と戦うというのがゲームの流れだ。マイキャラのスライムには、ノーマルなものだけでなく、マップ上の好きな場所へ一気に行ける「ワープスライム」や、地形を無視することができる「ウイングスライム」などさまざまなスライムがおり、“どのスライムで、どの人間を、どのタイミングでのっとるか”がもっとも知恵を絞るところであり、もっともおもしろいポイントだ。
一方の人間も農民、兵士、僧侶、そしていかにも強そうなフルアーマーの騎士と多彩な顔ぶれ。「ワープスライムでフルアーマーのっとればよくね?」と当然思うが、例えばワープスライムでフルアーマーまでひとっ飛びしても、のっとり成功率は1%(のっとり前に表示)という絶望的な確立。
「フルアーマー覚悟! → 口が塞がれている → 口から入れない……あきゃー! ズルい!!」となるわけだ。こうした相手には「相手にまとわりつく」等のスキルを使ってのっとり成功率を上げるか、別の人間をのっとってフルアーマーで勝負を挑み、ケリをつけるかの二択になるだろう。
のっとって目が真っ赤になった人間は、他の人間からは「敵」とみなされてガンガンアタックされる。ここからは、「キャラには属性の相性が、武器には3すくみの関係がある」「高い場所にいるほど有利」「マップ中の回復ポイントで回復を図る」といったバトルの基本ルールに沿って、慎重かつ戦略的にすべての人間を倒していこう。
見事戦闘に勝利すればご褒美タイム! レベルを上げるための経験値と、運がよければ仲間になるスライムをドロップすることがある。仲間になるスライムにはレアものが存在するぞ。
▲俯瞰視点のマップ画面で「自軍をこう散らして、相手のこのキャラをのっとってアレを倒して……」と、ボードゲーム気分で先の手を考えていくのが楽しい。トライ&エラーの連続後にクリアすると快感!
◆昔ながらのゲームのおもしろさを雰囲気とともにうまくとりいれた良作シミュレーション!
復活の呪文を入れたくなりそうなタイトル画面、かわいいドット絵キャラはオールドゲーマーには涙モノ。ファミコンチックなBGMは、普段あまり音を出してゲームをしない筆者も“ああ、このループの仕方は『オホーツクに消ゆ』っぽくていいなあ……”と浸ってしまう素晴らしさ。そして、かつての『ファイアーエムブレム』を思わせる本格的なタクティクスシミュレーションには、何度もリトライしてしまう面白さが詰まっている。