【映画プロデューサー千葉善紀の“コレやってます!”】期待値MAXのゲーム版『マッドマックス』、クリアしたので語り倒します!

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映画『冷たい熱帯魚』『ヤッターマン』『片腕マシンガール』『凶悪』『極道大戦争』など、プロデューサーとして数々の話題作を手がけた鬼才・千葉善紀は、実は日本映画界有数のゲームファンだった!
家庭用ゲームを中心にプレイする千葉Pと、ゲーム雑談をしてみよう、というこのコーナー。あくまでもひとりのゲームファンとして、千葉Pが言いたい放題!

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千葉善紀
 日活株式会社 プロデューサー

(敬称略)

◆千葉P、35年越しの『マッドマックス』愛

――今回のゲームは『マッドマックス』(PS4/Xbox On/PC用、ワーナー・エンターテインメント・ジャパン)ですね。前回もお持ちいただいていたんですが、やり込んでからしゃべりたい、ということで、今回改めて、になりました。

千葉 この間のプレイ状況はまだ序盤で、僕と『マッドマックス』の仲も、お互い手探りだったので(笑)。そこで意見を言うのも『マッドマックス』に失礼だな、ということで、ちゃんとやり込んできましたよ。
 今日はちゃんと、Tシャツも『マッドマックス』です! MAXな状態で来ましたよ。

――おお、これは何のときの『マッドマックス』Tシャツなんですか?

千葉 これは、ウチの後輩が10月にシッチェス(編注:シッチェス・カタロニア国際映画祭。SF、ホラー、スリラーなどジャンル映画中心の祭典)に三池崇史監督と『極道大戦争』が招待されて行ったときに買ってきてくれたんです。シッチェスは、こういうパチモノTシャツが山のように売ってるんですよ。『極道大戦争』(2015年の映画)のKAERUくんTシャツも売ってたそうです。勿論、だれも許可してないのに(笑)。

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――きちんとした国際映画祭なのに、シッチェスは無法地帯ですね(笑)。

千葉 後輩には「絶対にあるはずだから、『マッドマックス』のTシャツを買ってこい」と言って買ってこさせました。日本語ロゴも入ってるし、こんなの誰も許可してないと思いますけど、僕は知りません、買っただけだから(笑)。何ならこっちもやられちゃってる被害者です!(笑)

――何しろ今年は『マッドマックス 怒りのデス・ロード(原題:フューリー・ロード)』(2015年の映画)の公開で、映画界はドカンと沸きましたからね。千葉さんは、もともと『マッドマックス』はお好きだったんですか?

千葉 僕らは『マッドマックス』のような映画を観て育ったから、こういうオトナになっちゃったんですよ(笑)。映画館で最初の『マッドマックス』(1979年の映画)を観て、串田アキラの主題歌に痺れた世代。僕が初めて買ったレコードが『マッドマックス』のテーマ曲(編注:「ROLLIN’ INTO THE NIGHT」。日本公開版のみの主題歌)ですから。ちゃんとエンドロールに流れましたけど、後に発売されたビデオには当然入っていないので、映画館で最初の公開を観た人しか知らないテーマ曲です。

――ということは、『マッドマックス2』(1981年の映画)も『マッドマックス/サンダードーム』(1985年の映画)も観ているわけですね。

千葉 当然。でも『サンダードーム』の記憶はないです(笑)。
 まあ何しろ、『マッドマックス』が復活して、なおかつゲームになるなんて、考えられなかったことですよ。

――千葉さんは、発売前からずっと『マッドマックス』のゲームを期待していましたし、発売日まで暗記してましたからね(笑)。

千葉 俺は一体何年このゲームを待ったのか、って話ですよ。出るなんて嘘なんじゃないか、って思ったこともありましたから。『マッドマックス』は不思議な映画で、キャラクターグッズがまったくないんです。このTシャツも当然パチモノですし(笑)、今や映画グッズの定番になったホットトイズの人形(編注:香港発信の玩具メーカー、ホットトイズの“ムービー・マスターピース”シリーズ)もないし。

――いまどき、このクラスの映画で、ホットトイズのフィギュアがないのは珍しいですよね。7インチアクションフィギュアの大手、ネカのフィギュアもないですし。

千葉 ないですね。昔、ショボいフィギュアが一回だけ出て、あとは一切ない。車も、インターセプターのモデルが特別に一回出ただけ。許諾が全然下りなくて、グッズらしいグッズが何ひとつ作れないらしいですね。
 そういった中で、唯一のキャラクターグッズと言えるのが、このゲームなんですよ!

――そういう意味では、ものすごく重要な存在ですね。千葉さんお得意の「ゲーム内容はさておき、キャラクターグッズとして買い」理論で言えば、買わない理由がない。

千葉 もちろん。グッズですから、とにかくコレクションに並べないと。まあ、ちゃんとプレイしてもらいたいですけど(笑)。

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◆待ちに待ったゲーム版『マッドマックス』

――ということで、改めて今回のゲーム版『マッドマックス』ですが、前回オフレコでお聞きした序盤の時点では、正直言ってそんなに熱は高くなかったですね。

千葉 3年くらい待った気持ちの高まりがピークに達して、自分の中ですごい『マッドマックス』ゲーム像が出来上がっていたし、来日したジョージ・ミラー(映画『マッドマックス』シリーズ監督)さんにも会ってますから、僕の盛り上がり方が半端じゃなかったんですよ。その気持ちの昂ぶりに比べると、実際にプレイしたゲーム序盤は「ん?」という感じだった。前回くらいだと、正直、そういう感じがありました。

――千葉さんの印象として、今回のゲーム版『マッドマックス』、序盤はどうだったんですか。

千葉 あまりにも映画の『フューリー・ロード』が素晴らしすぎたせいもあって、序盤はちょっと「あれ?」という感じがありました。敵もなんだかショボめだし、やることはひたすらスクラップ集めだし。しかも、一番驚いたのは、このマックス、お腹がすくとウジ虫を食べるんですよ……。えっ!と思いました。

――やりたい放題の映画が多いオーストラリアから始まった『マッドマックス』だけに、グッとオーストラリア映画っぽい感じというか(笑)。

千葉 確かにオーストラリアはハエが多い。じゃなくて、もし世界がこんなになったら、ウジでも食わなきゃ生きていけないとは思います。でもね、僕はウジ食うくらいなら死にたい(笑)。しかも、ミッションを進めていくとホームタウンにライフの回復機能がつくんですけど、それが「ウジ虫養殖器」(笑)。荒野ならともかく、家に帰ってきてもまだウジ食うのって!?。

――なんちゅうゲームですか(笑)

千葉 ここに面白ネタを入れてきてるのは、ワザとだと思いますけどね(笑)。アメリカのゲームはどこかおかしなところがあるものですけど、今回は主人公がウジ虫を食うとは。さすがに気持ち悪いぞって(笑)。もちろんマックスなので、ドッグフードも食いますけど(編注:映画中でマックスがドッグフードを食べるシーンがある)。

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◆最後の街でようやく物語が始まる!?

――なかなか独特なプレイ感ですね(笑)。

千葉 このゲーム、かなりマップが広いので、車で思い切り走ってもけっこう大変なんです。最初は僕も「『マッドマックス』の世界でファストトラベル(マップ内を即時移動するシステム)とは何事だ! 荒野を走るのが『マッドマックス』だろ!」って思いましたけど、撤回します! すぐ使いました!(笑) だってマップが広いんだもん。チョロチョロ敵も出てくるし、序盤は自分の車も弱いし、真面目に走ってたら終わんないよ!

――マックスとはいえ、ファストトラベル使わないと火ダルマですか(笑)。

千葉 そうです、ものすごく轢かれます! 車を降りたら、もう涙が出るくらい轢かれる! ボロ雑巾のようにされます。

――俺たちの知ってるマックスじゃない(笑)。

千葉 こんなにやられるのか、というくらいやられるので、禁断のファストトラベルも使いまくり。気球で飛ばしてくれる仕組みで、『マッドマックス』の世界観に気球って……と思いますけど。どうせならジャイロキャプテンに乗せて欲しかった。

――『2』の名キャラクター、ジャイロキャプテンですね。そっちのほうが嬉しかったですね。

千葉 序盤はそこまで広くはないんですけど、マップ中心にあるゲートを開くと一気に世界が広がります。そして、グイグイ敵が襲ってくるようになる(笑)。なので、序盤で体力をいっぱいまで上げて臨まないと、どえらい返り討ちに合います。
 この辺りが、今回のゲームの難しいところで、正直、メゲる人もいると思います。スクラップを拾って車をちまちまバージョンアップして、お使いして。下積み期間ですけど、我慢してください。そこを超えて、最終的にガスタウンまで行くと、ついに物語が始まります!

――始まり!? そこ、マップでは端っこですよ!

千葉 普通のゲームで言えば、ラスボスとの戦いだと思うでしょ。確かに、ゲームの最初のムービーシーンに出てきた敵、スクロタスはここにいます。

――『マッドマックス』的に言うと、『フューリー・ロード』に出てきたイモータン・ジョーとリクタスを足したような、いい味の敵キャラクターですよね。

千葉 そう、ラスボスです。実際、ラストには立ち回りが待ってるわけですけど、このゲーム的には、ガスタウンに行ってようやく話が始まります!

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◆序盤の我慢、終盤の熱い復讐劇

――ということは、ゲームの8割は下積みなんですか?

千葉 そうです!(笑) 荒野はつらいんです。ひたすらスクラップを拾い、犬と一緒に地雷を探すんです。

――犬が出てくるのは、『マッドマックス』としてはポイント高いですね。映画でも、マックスの相棒と言えば犬、という印象が強いですし。

千葉 犬は、もうちょっと活用して欲しかったな、とも思いますけどね。結局、地雷を探すくらいで、敵にけしかけるようなシーンはなかったので、ちょっと残念。
 ただ、『フューリー・ロード』でも印象的だった車のバトルはちゃんとあって、車列を全部潰す、なんてシーンもあります。序盤は車列も少ないんですけど、先まで進むと結構な量が出てきます。車のガチンコバトルは、かなり手応えがあって楽しめますよ。ワイヤーで引っ掛けるハープーンも使えるので、車をひっくり返したり、やりがいあります。

――8割下積み、というわりには楽しんでるじゃないですか(笑)。

千葉 確かに(笑)。まあ、後半の盛り上がりのドラマを前半にも入れてくれたら、誰でも楽しみながら先まで行けそうなんですけどね。なので、みんな前半でギブアップせず、我慢して欲しいんです。

――そこまで言うということは、終盤がそこまで良かった、ということなんですか?

千葉 燃えますよ! 終盤のドラマは、かなり『フューリー・ロード』の復讐劇に近いです。急にドラマが動き始めて、マックスが立ち上がるんですよ。
相変わらず前フリはないんだけど(笑)、最後はまさに『マッドマックス』のドラマがあるんです。序盤では夢にも思わないドラマが(笑)。

――おお、それは気になる!

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◆もうひとつのマックス『バカMAX!』

千葉 というところで、ちょっとマックスつながりなんですけど、マックスの映画がありまして。『帰ってきたMr.ダマー バカMAX!』という映画です。

――おお、確かにマックスですね(笑)。しかも『ジム・キャリーはMr.ダマー』(1994年の映画)の続編じゃないですか。

千葉 前作は僕がギャガにいたときに配給したんです。その続編が、ほぼ20年ぶりに帰ってきたので買い付けて、11月20日から公開しています。

――千葉さん、この話をするのと公開のタイミングが近すぎです(笑)。

千葉 絶賛公開中のタイミングですね(笑)。今年はマックスの年だから『バカMAX!』という邦題にしましたけど、『マッドマックス』と違ってずーっと下ネタのオンパレードです(笑)。いまの若い層はジム・キャリーをあまり知らないみたいですけど、すごい人なんですけどね。

――ファレリー兄弟は『メリーに首ったけ』(1998年の映画)で一気に有名になって、その後『愛しのローズマリー』(2001年の映画)などのロマンティックコメディで名を馳せた監督ですね。

千葉 今回のは、初期作の『Mr.ダマー』に戻って、ドがつくほどのバカに返り咲きです(笑)。アメリカンコメディはなかなか日本では大きく公開になりませんけど、面白いものも多いので、ぜひ映画館でジム・キャリーのいまを観て欲しいですね。

――こっちの『バカMAX!』も注目しつつ、『マッドマックス』の話は次回も続けましょう!

(2015年11月収録)

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『帰ってきたMr.ダマー バカMAX!』
絶賛上映中!
http://bakamax.com/

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