両国編からスタートしたこの連載も、静岡に行ったり、大阪に行ったり、しまいにゃ鹿児島まで行ったりなんかして、どんどん東京から遠ざかっている。このままいくと次は台湾編とか、そういうことになっていくんじゃないだろうか。
と思わせておいて、今回は「新橋」である。酔っぱらいの街頭インタビューでも有名な駅前のSL広場では、定期的に古本市が開かれている。これに顔を出すついでに、周辺の珍ポータルを探してみようじゃないか、という趣向だ。
それから、以前、虎ノ門においしい珍麺を食べさせてくれる店があったのだけど、昨年6月に移転のため閉店してしまった。それが新橋で再開しているという噂をきいた。ならば、これも食べに行きたいね。珍本と珍ポータルと珍麺、この3つを求める旅に出ようじゃないか。
◆日比谷から新橋までうろついてみる
とはいえ、目指すは新橋だから「旅」というほど大袈裟なもんじゃない。おまけに、ぼくはグータラなので、できるだけ電車の乗り換えをしたくない。少しくらい時間が余計にかかっても、乗り換えの回数を減らせるなら、そちらのルートを選ぶ。そういう人間だ。
我が家の最寄り駅は馬橋である。新橋に行こうとするなら、常磐線各駅停車(千代田線相互乗り入れ)で西日暮里まで行き、そこから山手線外まわりに乗り換えて新橋へ向かう。このルートが50分弱でいちばん早く着ける。
でも、乗り換えがあるんだよねー。西日暮里の千代田線からJRへの乗り換えって、エスカレーターに大勢の客が一点集中して混むから、めんどくさいんだよねー。たったそれだけのことが嫌なんだよねー。行列きらーい。
そこで、路線図を見て気がついた。日比谷までなら乗り換えなしで行けるじゃん、と。日比谷から内幸町はすぐ近くだ。そして内幸町は新橋に近い。だったら日比谷から新橋まで歩けばいいよね。乗り換えはめんどくさいけど、歩くのは全然めんどくさいと思わないのがぼくなのだ。
▲ホッホー!「日比谷ダイビルのフクロウ」がこっちを見ている。
日比谷から新橋に向かう途中に日比谷ダイビルはある。
ここ、以前はネオロマネスク様式で、壁面には様々なテラコッタが施され、勇者や女神の像もあったりするすごくかっこいい建物だった。それが1986年に取り壊されて、いまのものに建て替えられたんだけど、建て替え前にこのビルのイラストを描く仕事をしたことがある。そんな思い出の場所で、いまは珍ポータルを採取して喜んでるぼくだ。
新橋はとても飲み屋の多い町だ。モロにビジネス街の日比谷から歩き出して、だんだん飲み屋が増えてくると新橋が近づいてきているのを実感する。こんな看板(ポータル)があるのも、いかにも新橋だ。
▲わかっているけど、つい「ウンコの力」って読んじゃうよね。
そして、新橋といえば1872年に日本で初めて鉄道が開業した土地としても知られる。駅前のSL広場もそれにちなんだものだろうし、こんな銘板も設置されていた。
▲こうした「発祥の地」シリーズは積極的に集めたい。
これはぼくの失策なんだけど、わざわざSL広場まで来ておきながら、肝心のそのSLのポータルを撮るのを忘れたんだ。Ingress Intel Mapで確認すると、ちゃんと「新橋駅SL広場 C11 292号」というポータルがあるのにね。なぜ気がつかなかったんだろう。べつに「珍」じゃないし……とか思ってスルーしちゃったのかな。
そのくせ、こんな変なのは押さえている。
▲「新橋のなまはげ」泣く子はいねがー!
なんで新橋でなまはげなんだろう。検索してみると、銀座寄りのところに「なまはげ」っていう秋田料理の店があったから、きっとそこのオブジェなのかもしれない。
◆レンゲで食べる珍麺との再開
さて、新橋に着いた。SL広場ではいつもおなじみの「新橋古本まつり」をやっている。都内の古本市としては、わりと規模の大きなイベントで、たくさんのワゴンに古本がどっさり並べられている。
▲前回来たときは雨だったが、今回は気持ちいいほどの晴れ!
気のせいか、古本市には相性のようなものがある。例えば、池袋なら「西口公園古本まつり」とは相性がよくて、行くたびにいつもいい本が買える。しかし、同じ池袋でもリブロ池袋本店の「古本まつり」とは相性が悪くて、いい本が買えた試しがない。また、新宿ならサブナードの「古本浪漫洲」とは相性が悪く、西口駅地下の「新宿西口古本まつり」とは相性が抜群だ。出店している古書店との相性ということなんだろうな。
そして、今回わざわざ来ているということは、SL広場の「新橋古本まつり」とはじつに相性がいいのだ。戸塚宏の『私が直す!』を発掘したのも、比企理恵の『神社でヒーリング』を発掘したのもここだ。
▲この日の収穫はご覧の通り。
うちのマニタ書房ではサブカル古書の品揃えに力を入れているので、伝説の奇書『空飛ぶ冷し中華』を補充できたのはたいへんうれしい。それと、刊行時にお金がなくて買えなかった横浜銀蝿の写真集『仏恥義理 Red Zone』が半額以下で買えたのも個人的にありがたい。
というわけで古本の仕入れもできて、いい感じにお腹もすいてきた。そんなタイミングでIngressのスキャナーを開いてみたら、こんなポータルが目に飛び込んできたので笑ってしまった。
▲いまのぼくの気持ちを代弁している「はらぺこ」看板!
思わず速足になって向かった先は、虎ノ門からこちらへ移転してきた「台湾麺線」だ。店名がそのままメニューでもあるこの台湾麺線というのは、ソーメンを魚出汁の効いたとろみのあるスープで煮込んだものだ。麺だけど細切れになっているので、箸ではなくレンゲで食べる。
▲熱くて、しょっぱくて、見事にぼくの好みの味。
少食なので、いつもは麺だけで十分なんだけど、この日はかなり歩き回ったせいもあってハラペコだったので、魯肉飯(小)とのセットにしてみた。魯肉飯とは台湾の煮込み豚肉かけご飯で、これまたうまい。
というわけで、台湾編ならぬ、台湾麺というオチがついたところで、今回はおしまい。次はどこに行こうかな~。