カドカワ、出版事業の多様な収益構成が業績に貢献 営業利益31億円 平成31年3月期第3四半期決算

カドカワ

出版事業は電子書籍の売上が拡大、紙媒体は実売率改善が利益に寄与。映像・ゲーム事業では『DARK SOULS REMASTERED』が利益に貢献。

カドカワ株式会社は、平成31年3月期第3四半期決算を2月13日(水)に発表した。当期連結経営成績については、売上高1521億200万円(前年同期比0.1%増)、営業利益31億8300万円(同8.2%増)、経常利益43億7100万円(同26.5%増)、親会社株主に帰属する四半期純損失21億6900万円(前年同期 親会社株主に帰属する四半期純利益17億500万円)となった。

カドカワ決算

経営成績に関する説明

第3四半期連結累計期間では、コンテンツの価値を高めるプラットフォーマーとしての飛躍を目指し、出版から総合メディア企業を目指す株式会社KADOKAWAのIP創出力と、ネットとリアルの融合を目指すIT企業、株式会社ドワンゴの創造性を結集しながら、魅力あるコンテンツをあらゆるメディアにマルチ展開させて収益を最大化させるメディアミックス戦略を積極展開した。

その結果、当第3四半期連結累計期間におけるグループの業績は、売上高1521億200万円(前年同期比0.1%増)、営業利益31億8300万円(同8.2%増)、経常利益43億7100万円(同26.5%増)、親会社株主に帰属する四半期純損失21億6900万円(前年同期 親会社株主に帰属する四半期純利益17億500万円)となった。

セグメント毎の業績は以下。

出版事業
出版事業の収益構成は、電子書籍・電子雑誌販売、書籍、雑誌の販売、版権販売、海外拠点売上などと多様化しており、主に電子書籍・電子雑誌販売が牽引し、業績は好調に推移した。

電子書籍・電子雑誌では、総合電子書籍ストア「BOOK☆WALKER」の8周年キャンペーンの実施などの施策で販売が引き続き好調に推移しており、外販事業では当連結会計年度から新しい外部電子書籍ストアに許諾を開始し、販売を加速した。

9月には「ニコニコ書籍」アプリと「BOOK☆WALKER」アプリを統合。それにより、MAU(月間アクティブユーザー)が底上げされ、作品の品揃えが拡大し、1ユーザーあたりの購入金額が上昇した。また、グローバル戦略を推し進めるために開設された「BOOK☆WALKER Global」や「台湾BOOK☆WALKER」も高成長を維持している。

書籍では、コミックスの『よつばと!(14)』『ダンジョン飯(6)』『乙嫁語り(11)』などの大型作品や、「オーバーロード」「殺戮の天使」シリーズが好調に推移。

ライトノベルでは、市場が停滞している中で新たなヒットシリーズの創出、育成に注力。「ソードアート・オンライン」「魔法科高校の劣等生」といった人気シリーズは引き続き堅調に推移している。

一般書は、「まんがで楽しく学ぶ」をコンセプトに小学生向けに立ち上げた学習マンガ「日本の歴史」や「どっちが強い!?」が多くの読者から支持を得ており、収益に貢献。また「世界一かんたん定番年賀状 2019」などの年賀状素材集も収益に貢献した。

メディアミックス関連では、アニメ「盾の勇者の成り上がり」の関連書籍、映画「ラプラスの魔女」「ビブリア古書堂の事件手帖」の原作本、映画「未来のミライ」関連本が好調に推移。版権販売では、主に遊技機向けの権利許諾が収益に貢献した。

雑誌では、地域情報誌「Walker」シリーズ、ライフスタイル誌「レタスクラブ」などにおいて、Webメディアとの連動によるビジネスモデルの転換を進めており、Webメディアのページビューや広告収入の増加などの成果につなげていく。

テレビ情報メディア「ザテレビジョン」については、お正月特大号や「ザテレビジョンWeb」が好調に推移した。刊行計画や発行部数の見直しなどで雑誌販売は減少しているが、実売率の改善により収支は好転の兆しをみせている。

上記の結果、売上高は848億6100万円(前年同期比2.2%増)、セグメント利益は55億8200万円(同46.8%増)となった。

映像・ゲーム事業
映像では、「STEINS;GATEゼロ」「やがて君になる」「殺戮の天使」などの海外ライセンス販売が収益に貢献。アニメの配信収入や「Re:ゼロから始める異世界生活」などの商品化許諾による収益貢献もあり、国内外問わず豊富なIPを活用したビジネス展開を拡大させている。

また、株式会社ムービーウォーカーによる映画前売券サービス「ムビチケ」も好調に推移し、収益に貢献した。

ゲームでは、子会社フロムソフトウェアの『DARK SOULS REMASTERED』が国内外で引き続き好調に推移し、パッケージ販売だけでなく、海外ロイヤリティ収入も貢献した。

「METAL MAX Xeno」「コナン アウトキャスト」などのパッケージゲーム、歴代アーマード・コアシリーズのBGMを収録したCD集「ARMORED CORE ORIGINAL SOUNDTRACK 20th ANNIVERSARY BOX」、「Bloodborne」や「DARK SOULS Ⅲ」の海外ロイヤリティ収入も引き続き好調であった。

一方で、株式会社ドワンゴ(以下、ドワンゴ)が11月にリリースした位置情報ゲームアプリ『テクテクテクテク』の収益貢献が、期待値を大幅に下回ったことで、アプリ開発費を一括費用化した。

上記の結果、売上高は339億5100万円(前年同期比0.5%減)、セグメント利益は25億1800万円(同26.9%増)となった。

Webサービス事業
動画プラットフォーム「niconico」における「ニコニコプレミアム会員」のサービス収入を柱に、ウェブサイト上のバナー等の広告、有料動画等の関連収益を計上。

「niconico」においては、回線の増強や画質の向上を中心とした動画・生放送サービスの視聴環境改善を行なっており、6月から新バージョン(く)を提供中。「ニコニコプレミアム会員」は減少傾向が続いており、当第3四半期末には会員数が188万人になったが、新しい生放送アプリ『nicocas』のリリース、生放送番組にアイテムを贈ることで配信者を支援することができる「ギフト」の導入、VRコミュニケーションサービス『バーチャルキャスト』のリリースなど、サービス拡充に努めている。

10月には、ドワンゴと株式会社S-courtの共同開発スマートフォンアプリ『カスタムキャスト』をリリースし、配信後11日間で100万ダウンロード(iOS/Android版の総ダウンロード数)を記録した。また、同アプリ内で12月よりコスチュームパーツや配信用ポーズを購入できるショップ機能も開始した。

11月には『テクテクテクテク』、12月には“人工生命”の観察・育成アプリ『ARTILIFE』をリリース。『テクテクテクテク』に関しては、アプリ提供開始直後から積極的なプロモーションなどを行ない、ユーザー数の拡大に努めたが、当四半期においては想定を大きく下回る推移となっており、減益の要因となった。

ライブでは、競合する他の動画サービスとの差別化をはかるため、「ネットとリアルの融合」をテーマに各種ライブイベントの企画や運営、ライブハウス「ニコファーレ」の運営などを行なっている。「ニコニコ超会議2018」の2日間の会場来場者数は過去最高の16万1277人を記録し、インターネット視聴者数は612万1170人となった。世界最大級のアニソンライブ「Animelo Summer Live 2018 “OK!”」では、3日間の開催で8万1000人を集め、収益に貢献した。

モバイルでは、シングル楽曲/着うたなどを配信する総合エンタテインメントサイト「dwango.jp」や、アニメ総合ポータルサイト「animelo」からの収益を計上。有料会員数は減少しているが、引き続き、外注費や広告宣伝費などの固定費削減に努めており、収益性を維持している。

上記の結果、売上高は199億5900万円(前年同期比10.6%減)、セグメント損失は7億円(前年同期 営業利益1億3900万円)となった。

その他事業
ネットとリアルを融合させた双方向性を特長とする教育プログラムの提供や、クリエイティブ分野で活躍する人材を国内外で育成するスクール運営を行う教育事業、キャラクター商品の企画・制作・販売やアイドルCDのeコマース等のMD(物販)事業を行なっている。

今期の売上には、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年を収益化の目途としているインバウンド事業の準備費用を計上した。

上記の結果、売上高は160億6800万円(前年同期比8%増)、セグメント損失は18億200万円(前年同期 営業損失4億6100万円)となった。

関連サイト

カドカワ株式会社公式サイト
平成31年3月期第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)

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