【台北ゲームショウ2015】ミミズのモチーフはアレだった!? 我が道を行く開発グループTeam Signal Gamesインタビュー

 ミミズが主人公のカジュアルゲーム「Earthworm Alchemy」がiTunesのベストニューゲームにフィーチャーされるなど、さまざまな意味で尖ったゲームを製作中のTeam Signal Games。キワモノゲーム集団かと思いきや、ゲーム制作の基本がしっかりできている、良質なインディデベロッパーもある。アイディアの源泉やチームの成り立ちについて知るべく、CEOのブライアン・リーさんとエグゼクティブ・プロデューサーのスコット・チェンさんにインタビューを行った。

シグナルゲームズ

――よろしくお願いします。まずは簡単に自己紹介を。

ブライアン 大学を卒業して兵役についた後、台湾のゲーム会社でMMORPGの開発を行っていました。その後、米カーネギーメロン大学のエンターテインメント・テクノロジー・センター(ETC)に留学し、卒業後に台湾に戻って起業しました。家族が台湾にいましたし、モバイルゲームではアジアが一番発展していますからね。それにインターネット時代ですから、台湾でもアメリカでも関係ないですし。

スコット 自分は大学生の頃からアメリカに留学していて、同じくカーネギーメロン大学のETCでブライアント知り合いになりました。専門はデザイン学科でしたが、いろいろ手を出した結果、ゲームを作りたくなったんです。大学生の頃から二人でゲームを作り始めましたね。卒業後ブライアンといろいろ話をして、やっぱり台湾の雰囲気がいいよなということになったんです。

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▲写真左がTeam Signal Games CEOのブライアン。右がエグゼクティブ・プロデューサーのスコットだ。

――なるほど、お二人は年齢はお幾つですか?

ブライアン 30歳です。

スコット 28歳です。

――先ほど学生時代からゲームを作られていたと聞きましたが……?

ブライアン 最初に作ったのは2012年のグローバルゲームジャムの時で、「Hebi Hanabi」というPCのアクションゲームでした。

――なんと! 自分も参加していましたよ。たしかテーマが「ウロボロス(のイラスト)」でしたよね。

ブライアン はい、ピッツバーグ会場で参加しました。ピッツバーグにはカーネギーメロンとMITという理系の2大巨塔があり、会場も2つで、あわせて数百人にもなる巨大な会場でしたね。爆弾を食べると相手に投げつけられるという内容でした。

――それはおもしろいかも!?

ブライアン おかげさまでUnite 2012のBest student projectでファイナリストをいただきまして。これはいけると思ってIGFに応募したんですが、落選しました。これでチームがへこんでしまって、それっきりになっちゃいましたね。

スコット 次に作ったのが「The last signal」というゲームで、これも2012年のことです。Kinectを使ったリズムゲームで、コンセプトは潜水艦のソナーでした。ナラティブをとりいれて、主人公をゴールまで導きながら、ストーリーを感じてもらうというものです。

――キネクトでリズムゲームでソナーでナラティブですか?

ブライアン ちょっと想像つかないですよね 左手を上下に動かしながら波長、右手を左右に動かしながら旋律をコントロールするというものです。これはマイクロフトからBest use of microsoft kinect winnerと、アクティビジョン・ブリザードのindie game competitionでファイナリストに輝きました。特にマイクロソフトのアワードには、IPを3年間委託するという契約がついていました。これで資金を得たこともあり、起業する決意を固めたんです。

スコット 現在は4人で、大学のインキュベーションセンターに入居しています。家賃は1万台湾ドル(約4万円)なんですが、来月中に立ち退かなくてはいけなくて、移転先を探し中なんですよね・・・。ええっと、このまま社歴の説明をしてもいいでしょうか?

――どうぞどうぞ。興味深いです。

ブライアン 3作目が2013年に作った「Castle Rider」です。キャラクターを上に向かって進めていくカジュアルゲームで、中国のApp Storeで無料ゲームのTop10位に入り、55万ダウンロードを記録しました。ちなみに、ゲームエンジンはcocos-2dxで開発しています。ただ、これで限界がみえまして、以後はUnityに切り替えました。自社IPの第一弾ですね。

Castle Rider1Castle Rider2
『Castle Rider』ダウンロードリンク:Appstore

スコット ただ比率を見るとアジアの方が成績が良かったんです。アートスタイルもアジア的でしたからね。それで次にアメリカ市場を強く意識して、インディっぽいゲームを作りました。それがサウンドパズルの「Hyper Square」です。ビジネスモデルも課金アプリで、アーケードゲームっぽい作りにしました。

Hyper Square1Hyper Square2
『Hyper Square』ダウンロードリンク:Appstore

――これ、すごくシンプルでおもしろかったです。

ブライアン ありがとうございます。最初から「シンプルを極める」がコンセプトでした。おかげでアップルのベストニューゲームにもフィーチャーされました。全世界で14万ダウンロードと、数的にはぼちぼちでしたが、スターバックスの「今週のアプリ」にもフィーチャーされるなどの成績を収めました。

――スターバックスですか?

ブライアン ええ。これにフィーチャーされると客は無料でダウンロード可能になるんですよ。アメリカ・カナダ・シンガポールだけなんですけどね。台湾でも早くやってほしいです。

――日本でもやってほしいですね。

スコット ははは。この二作で学んだんですが、「Castle Rider」は王道のカジュアルゲームスタイルだったので、たくさんのアプリに埋もれてしまい、アップルからのフィーチャーも受けられませんでした。逆に「Hyper Square」は有料アプリだったのでマネタイズが今ひとつでした。そこでユニークなビジュアルとF2Pを組み合わせればいいと思ったのです。

――それが「Earthworm Alchemy」というわけですね。でも、ちょっと尖り過ぎでは・・・

Earthworm Alchemy1Earthworm Alchemy2
『Earthworm Alchemy』ダウンロードリンク:Google Play | Appstore

ブライアン まあ、でもすでに118の国でベストニューゲームにフィーチャーされて、ダウンロード数も2日間で10万ダウンロードを記録しました。まあまあではないでしょうか。

――確かに。ちなみに、どこでアイディアを思いついたのですか?

スコット それは風呂に入っていて股間をみて・・・というのは冗談ですが、もともと「何かを集めて」「生き物を伸ばす」というコンセプトがありました。それで最終的にミミズに決まったんです。そこから錬金術でミミズを育てる、というふうに発展していきました。

――いや、でもミミズに根は生えませんよね(注:本作ではミミズが地中深く成長していき、胴体の下部が根のようになって球根やキノコなどが生える)

スコット ハッハッハ、そこはゲームですから。あとは、ちょっと悪趣味なゲームを作ってみたかったという思いもありました。

ブライアン 他に「おさわり探偵なめこ栽培キット」なども参考にしました。

――ちなみに、「Castle Rider」「Hyper Square」「Earthworm Alchemy」とグラフィックスタイルが全部違うんですが、アートは誰が担当しているんですか? 

ブライアン 自分です。いろいろ描き分けるのが結構大変でした。

――えーっ!? それはビックリですね。ちなみに影響を受けたアーティストやゲームなどはありますか?

ブライアン 「スキタイのムスメ:音響的冒剣劇」です。あとは「Two dots」を、ミミズを描くときに参考にしました。

社内風景

――もはや、どんなふうに影響が出ているのか、さっぱりわかりませんが、これからどんなゲームを作られていくんでしょうか?

ブライアン 我々のビジョンはアジアのインディゲームのイノベーションカンパニーになることです。開拓的・前衛的・非主流・創造的といったキーワードをあげています。「風ノ旅人」や「monument valley」のように他とは違う道に挑戦したいんです。

スコット ちなみに「Earthworm Alchemy」は別のゲームの開発が煮詰まって、気分転換というわけではありませんが、おもいっきり違うテイストのゲームを作ったという経緯もありました。

――どんなゲームですか?

ブライアン 三途の川をわたりながら、地獄を旅するゲームです。船の上には他に人がいて、なんで死んだのかとか、いろいろ話を聞くこともできます。川から死霊が出てきて引きずり込もうともします。全体的に切ない系のゲームなんです。でも、なかなかいい感じにできなくて、ミミズのゲームを作りました。5ヶ月位かかりましたかね。

――いや、それ振り切れすぎですから。一方でゲームデザインや演出、ゲームのテンポなどは非常によく出来ていて驚いたのですが、ゲーム作りはどこで勉強したのでしょうか?

スコット 高校生の頃からアメリカのインディーズゲームで遊んでいましたが、本格的に学習したのはETCですね。ゲームを作りたくて留学しましたから。

ブライアン 自分はさっきもいったように、ゲーム会社でMMORPGを作っていました。他に余暇でボードゲームをデザインしたりもしましたね。ただ、やっぱりETCで学んだことは大きかったです。

――うーん、大学院を出て3作でここまでのクオリティのものが作れるとは、正直おどろきました。大変だったことはありますか?

スコット もともとターゲットはライトユーザーを想定していましたが、開発中にいろんな要素が入りました。ミミズ王国だとか、ミミズが分裂するとか、他にもアイディアがありましたが、最終的に「食べる」と「伸びる」だけにまとめました。でも、当初予定していたよりは難しくなっています。そのためアップデートで難易度を見直しました。

――日本語版はまだなんですよね……?

ブライアン そうなんですよ。これから日本語版を作りますので、楽しみにしてください。

――日本のゲーム産業について、どのような印象を持っていますか?

スコット すごく短期間に発展しましたよね。コンソールからモバイルまでヒットしたタイトルが何本も出ていて、企業の動きも速いです。台湾の大手企業は反応が遅いので、危機感も持っています。TGS2014でいろんな日本のインディーズゲームをみて、かなり出来がいいなと感じました。

ブライアン 最近だとRPGツクールがベースのアドベンチャーゲーム「ゆめにっき」が好きですね。まあ、子供の頃からスクウェア・エニックスとか、日本のゲームを遊んで大きくなりましたから。

――ありがとうございました。最後に日本のユーザーに一言お願いします。

ブライアン 日本が好きなので、よろしくお願い申し上げます。

スコット ゲームバランスも見直しましたので、日本の方も楽しんでもらえれば良いなあと思います。

――ありがとうございました。

『Earthworm Alchemy』オフィシャルトレーラームービー