日本ではいまだコアラとカンガルーの国というイメージが強いオーストラリア。しかし近年、「クロッシーロード」をはじめ優秀なインディゲームが次々に登場しており、急速に注目を集めている。中でもシドニーに次ぐ第二の都市、メルボルンは地方自治体(ビクトリア州)がゲーム産業の育成に積極的なことや、後述するPAX(Penny Arcade Expo)の存在などで、オーストラリア中からゲーム開発者が集まりつつある。
中でも注目したいのが10月23日から11月1日まで続く「メルボルン国際ゲームウィーク」だ。Unite Melbourne 2015(10/25)、Game Connect Asia Pacific (10/27 -28)、PAX Australia (10/30-11/1)など、ゲーム開発者やゲームファンを対象とした、さまざまなイベントが集中開催される。特にゲームファンの祭典であるPAXがシアトル、ボストン、サンアントニオに続き、3年前にメルボルンでも始まったことで、この流れは決定的になった。
もともとオーストラリアには1980年代からPCゲームのディベロッパーが存在したが、EA・THQ・2K・Ingogramといった海外大手パブリッシャーに買収された後に、2008年のリーマンショックを契機に閉鎖が続いた。ところが、多くの開発者が地元に残ることを選択し、タイミング良く行政の支援が始まったことで、今日に至った経緯がある。そのためプラットフォームもPC向けのSteamと、モバイル向けのApp Store、GooglePlayが中心だ。スタジオの規模も数人~十数人と小さく、社歴も4ー5年の会社が中心となっている。
10月29日にはメルボルン国際ゲームウィークのハイライトの一つとして、Australian Game Developer Awards(AGDA)が開催された。オーストラリアのゲーム業界団体であるGame Developers’ Association of Australia (GDAA) と、ゲーム開発者向けカンファレンスのGame Connect Asia Pacific conference が共同主催するもので、大賞にあたるGame of the year には地面を滑らせてアイテムをゲットしていく『Land Slider』が輝いた。これ以外にも数々のゲームが受賞しているので、ゲーム選びの参考にしてほしい。
アート部門:『Breath of Light』(Many Monkeys)
App Store:https://itunes.apple.com/AU/app/id959800639?mt=8
Android:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.manymonkeysdev.breathoflight&hl=ja
紹介:東洋の禅の思想をモチーフにしたフローティングパズルゲーム。プレイヤーは神秘的な石を画面上で並べながら、花々に生命を宿らせていく。時間制限やスコアなどは存在せず、純粋にパズルを解くことに集中できる。
ゲームデザイン部門:『Mallow Drops』(Gritfish)
公式サイト:http://mallowdrops.com/ (開発中)
紹介:画面を上下にくるくる回転させながらステージ上の障害物を動かし、ゴールに進んでいくパズルアクション。
オーディオ部門:「Breath of Light」(Many Monkeys)
App Store:https://itunes.apple.com/AU/app/id959800639?mt=8
Android:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.manymonkeysdev.breathoflight&hl=ja
技術部門:『Screencheat』(Samurai Punk)
公式サイト:http://surpriseattackgames.com/screencheat/ (PCゲーム)
紹介:画面4分割でプレイするFPSで、最大の特徴はプレイヤーの姿が見えないこと。そのかわりに全プレイヤーの視点が共有されており、それを頼りに相手の位置を推測してゲームを進めていく。
イノベーション部門:『Land Slider』(Pretty Great)
App Store:https://itunes.apple.com/au/app/land-sliders/id1022667752?mt=8
紹介:自機を移動させるかわりにステージをスクロールさせ、アイテムをゲットしていく新感覚アクション。
アクセシビリティ部門:『Ryan North’s to be or Not To Be』(Tin Man Games)
App Store:https://itunes.apple.com/app/ryan-norths-to-be-or-not-to-be/id962986396?ign-mpt=uo%3D5
Google Play: https://play.google.com/store/apps/details?id=au.com.tinmangames.tobeornottobe
紹介:シェークスピアの『ハムレット』をモチーフとしたアドベンチャー。80年代に一世を風靡したゲームブック風の内容で、選択肢を選んでストーリーを分岐させていく。
(政治的・社会的意味を含む)表現部門:「Little Witch Story」(Snow McNally)
公式サイト:http://littlewitchstory.com/play.html (ブラウザゲーム)
紹介:魔女を題材にすることで現実世界の風刺やダイバーシティ、ジェンダーなどを盛り込んだ意欲作。ブラウザゲームで無料でプレイできる。
ゲームオブザイヤー:『Land Slider』(Pretty Great)
App Store:https://itunes.apple.com/au/app/land-sliders/id1022667752?mt=8
Google Play:不明
スタジオオブザイヤー:Hipster whale
解説:同社は2014年に『クロッシーロード』で大成功を収めたインディ。新人とベテラン開発者の2人組で、収益の一部で他のインディデベロッパーを資金援助したり、メンターとしてさまざまな知見を共有するなど、メルボルンそしてオーストラリア中のゲーム開発者に影響を与えている。
Adam Lancman Award:Bernadette Neumann (PeedPOP) *個人への顕彰
解説:ReedPOPはアメリカに本社を持つイベント会社で、ペニーアーケードと並ぶPAX Australiaの主催会社。Bernadette Neumannはシドニー在住でPAX Australiaの立ち上げに主導的な役割をはたした。